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止めてはいけない数
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ちょっと長いが、実際に大学生の頃に経験した話。 当時、塾のセンセーをしていた。 とは言っても、あまり大きな塾でもないので和気藹々としたもので、 先生同士のつながりもしっかりしていた。 まだ覚えてるのが、水曜日、数学のオッサン先生と 同じ数学のニーチャン先生と俺しかいない曜日だ。 酒好きだからコンビニで酒買って来たりして、 生徒がいない職員室でささやかな酒盛りをよくやった。 そんな酒盛りをやっていたある春の日に、なぜか怖い話をすることになった。 お互いその手の話が嫌いではないので、 「よし、じゃあとっておきを話してやろう」 とばかりに、ノリノリで話を始めることに。 少し話をして盛り上がってきたときだった。 オッサン先生がふと、 「そう言えば、怖い話をするときって、そこで止めちゃいけない『数』があるそうですよ」 いくつだっけなぁ、なんて言いながら、ともあれ今までにした話をカウントして、 俺が『正』の字をつけて記録することにした。 怖い話って、ひとつするのに結構時間がかかる。 結局『正 T』でカウントは止まった。 「ラッキー7は大丈夫でしょー」 とニーチャン先生が言い、 オッサン先生も「そうだそうだ」と言った。 俺も7なら平気だろうと思った。 それから、酒盛りの締めくくりにニーチャン先生が、 「そう言えばうちの塾の校舎、建築を始めるときに作業員が死んだとか言われてますよね」 と言った。 ありがちな話だ。 1Fから5Fまであり、1Fには違うテナント、2Fに職員室で3~5は教室だった。 「ジャンケンで負けたら、罰ゲームで5階まで行ってきません?」 ちなみに細い階段と廊下は、緑の非常灯しかついていなくて普通に怖い。 「電気もつけちゃだめ」 なんて笑いながら、『罰』はどんどん増えていく。 さすがに俺が最初にびびってしまって、 「俺無理、勘弁してください」 と音を上げた。 「それじゃ、みんなで一緒にいきますか」 と、折衷案を出すオッサン先生。 それならと俺も賛同して、3人で5Fへ。 確かに薄気味悪いが (夜の学校並に、普段人がいるはずのところに人がいないと怖いものだ)、 3人もいれば大丈夫だった。 「なんも出ませんでしたねー」 なんてのんきなことを言いながら、2Fの職員室に戻った。 机にちらばったツマミやビール缶を片づけようとしていたときに気がついた。 「あれ、8になってる」 酔ってはいたが、確かに「ラッキー7」と口に出してまで確認したのに、 『正 T』ではなく『正 下』になっていた。 「・・・○○先生、書き加えたでしょー!」 と、そこからはお互い疑問の投げつけ合い。 でも、普段からおちゃらけてる先生たちだったのに、真剣に首を振っていた。 記録をしていたのは俺だったので、逆に俺がみんなを脅かそうとして疑われたほどだった。 結局、怖くなって紙は破いて捨てた……と思う。 その辺は覚えてないけど、持っていてもしょうがないから。 それで、実はもうちょっと続きがある。 オッサン先生は、翌朝起きたらこの10数年ひいたことのない風邪をひいたらしい。 本人が一番びっくりしていた。 ニーチャン先生は、家のパソコンのハードディスクがぶっとんだらしい。 次に会ったときは、「今修理してる……」としょんぼりしていた。 そして俺はと言えば、その日うちに帰り着いたのが夜中の2時から3時ぐらいだった。 バッグをおろしたところで、いきなり家の電話が鳴った。 イタズラ?まさかこんな時間に売り込み電話のわけないし。 半信半疑で電話をとった。 田舎のじいちゃんが脳卒中でぶっ倒れたって電話だった。 結局、意識が回復しなくて、それから半年ぐらい病院暮らしをしたのちに死んじまった。 話が影響したのかどうかはわからないけど、 皆さんも、くれぐれも怖い話は8回で止めないようにしてください……。
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