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ほほえむ彼女
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あの夜、僕の身に起きた出来事は、 3年たった今でも忘れることができません。 あれは、まだ僕が大学に通っていたときの出来事です。 夏休みになり、毎日バイトに明け暮れていました。 その日も夜の10時くらいまで働いていました。 その日は風が気持ちよくて、 たまには少し散歩がてらに歩こうと思い、 いつもとは違う遠回りの道を歩いて帰りました。 そこには大学の女子寮があり、 何気なく中を覗いていました。 夏休み中で誰もいないらしく、 玄関の明かりだけで、部屋はどれも真っ暗でした。 そのとき、何かが動く気配がした。 一階の左から3つ目の部屋のカーテンが ゆらゆらと揺れている。 暗闇に目を凝らしてみると、 誰かがこっちを伺っているようだった。 背が高い女の子らしく、 垣根越しに姿が見えた。 カーテンの影から体の半分だけ こちらに見せていた。 夜遅くに女子寮の中をうかがう怪しい男を見て うろたえているのか、 なんだかふらふらと揺れているようでした。 僕は柄にもなくドキドキしました。 なんか気まずいような気がして 思わず愛想笑いをした僕に、 彼女はほほえみを返してくれました。 僕は彼女に一目惚れしました。 次の日も、僕はバイトの帰りに 女子寮の前を通りました。 ひょっとしたら彼女にまた会えるんじゃないかって思ったんです。 いました。 彼女が昨日と同じように、 体を半分カーテンに隠して立っていました。 そして、今度は勘違いでなく、 確かに僕に向かってほほえんでくれました。 僕はもう有頂天でした。 次の日も、次の日も、 垣根越しに挨拶をするだけの関係が続きました。 僕は焦らずに、時間をかけて 彼女と仲良くなりたいと思っていました。 ただ一つ気がかりだったのは、 彼女の顔色が良くなくて、 日に日に痩せている。 僕はもう彼女のことが心配でならなくて、 ある日、とうとう女子寮の中に入ってしまった。 男の僕が名前も知らない彼女に会いに来たといっても、 当然入れてくれるはずもないから、 表からではなく裏口から入りました。 彼女がいつものように体を半分だけ出して立っています。 僕は彼女に声をかけました。 「僕のことわかる?」 彼女は恥ずかしそうに頷いてくれました。 近くで見た彼女は本当にげっそりしていて、 顔色もひどく悪かった。 僕は彼女のことを本気で心配しました。 決して邪な気持ちではなく、 彼女のことを本当にいとおしく思い、 僕は彼女の手を取りました。 たとえではなく、氷のように冷たい手でした。 そのとき、後ろの方から声がしました。 「誰だ!!誰かいるのか!?」 僕は驚いて彼女の手を離しました。 懐中電灯で顔を照らされると、 いきなり腕を捕まれました。 寮の管理人でした。 僕は決してやましい気持ちで入ったのでは無いことを 説明しようとしました。 「この部屋の人が心配で、 なんか具合が悪そうだったから・・・」 するとその管理人は、 「何をいっている。誰もいないじゃないか。 この部屋には、今はもう誰もいないんだ。 この部屋の学生は亡くなったんだよ」 そのときから僕の時間は止まってしまいました。 彼女は窓際のクーラーの配管にロープをかけ、 首をつって自殺したそうです。 そして、彼女が亡くなったのは、 僕が初めて通りかかった夜だそうです。 僕は首をつって風に揺られている彼女に 一目惚れをしました。 僕は今でも、 あのとき管理人の声に驚いて 彼女の手を離したことを後悔しています。 今でも忘れることができません。 彼女の手は氷のように冷たかった。 でも、とても柔らかい手をしていた。 どうか、安らかに眠ってください。 僕は今でも、あなたのことが好きです。
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