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町からそう遠くない低い山
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不思議な話を聞いたので書いてみる。(以下、話者)春先、相棒とふたりで沢の水質を調査するため山道を進んでいた。町からそう遠くない低い山ではあるが、辺りには雪が残り空気も冷たい。ふと、相棒が足を止めた。どうしたんだ、と尋ねる間もなく、相棒は『向こう』といったふうに顎をしゃくる。 見ると、十数メートル程先の低い木の枝に手が乗っている。肘から先だけだ。しかもその手は、おいで、おいで、をしている。さて、どうしようか。戻りたい。でも仕事はまだまだ終わらない。結局、(何も見たい、知らない!)と強引に突っ切ることにした。ふたりで駆け抜ける。その下まで来たとき、木からパサリと何かが落ちた。反射的に振り向く。それは、ただのゴム手袋であった。淡いピンク色が丁度人間の肌の色に見えたようだ。おそらく、山菜取りに来た人が忘れていったのであろう。しかし、手袋は木に引っかかっていたのではなく、枝の上に乗っていた。手先を上にして。しかも、そよ風ひとつ吹いていなかった。狐にでもからかわれたようだと思ったという。
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