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似顔絵画家
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いつも仕事に行く時に使う地下鉄の駅があって、改札を出て地上に行くまでの通路にいろいろな人がいる。果物や野菜を売る人、音楽を演奏する人、なにもせずただ物乞いをする人…そんな中でも、最近噂になっているのがとある似顔絵画家である。なーんだ、似顔絵画家なんて珍しいもんじゃないでしょ、地下鉄の駅にはたくさんいるよ!とお思いの方もいらっしゃるかもしれませんが、この似顔絵画家はとあることで有名らしい。なんと、この画家が描く似顔絵は「似」顔絵なんてとんでもない、実際の自分の外見とはかなり違った絵を描くとのこと。えっ、それって詐欺じゃないんですかって?ところがどっこい、お客さんの大半は喜んでその「自分の外見と違う」似顔絵を持って帰るのだそうな。好奇心をおさえきれなくなった私は、自分も似顔絵を描いてもらうことにした。私「こんにちは、似顔絵お願いします」画家「はい、わかりました。そちらにおかけになってください」画家は集中して黙々と絵を描いている。通行人に見られながら似顔絵ができるのを待っているのは、なかなか恥ずかしい。さて、三十分くらいたったころ、画家が顔を上げた。画家「できましたよ」私は画用紙を受け取り、絵を確認した。するとそこに描かれていたのは、なんと物語に出てくる魔女のような老女の顔だった。本当だ…全然私の外見と違うじゃん…これにお金払うの?なんかバカらしいなあ。しぶしぶ鞄を開けて、財布を取り出す。支払いを済ませ、自分に似ても似つかない皮肉な似顔絵を鞄に突っ込み、とぼとぼと地上に向かった。翌日、仕事帰りにまたあの画家の前を通ると、今度はあの画家が、まるでモデルか女優なのかと思うくらいの美人の似顔絵に取りかかっているところだった。どうやらあと少しで描き終わるらしい。人のものを盗み見るのもどうかと思うが、気になったので立ち止まって遠くから女性が似顔絵を受け取るのを見ていた。なんと、美人の女性が受け取った画用紙には、その女性の外見にそっくりな似顔絵が描いてあるではないか。私は怒りに任せてその画家に大股で近づいた。私「ちょっと!昨日私にはしわくちゃの魔女みたいな老人の絵を描いておきながら、なんなのよ!ちゃんと外見通りの絵も描けるんじゃないの!!」すると、美人の女性が、青ざめた顔をこちらに向け、震える声でこう言った。美人「ご、ご存じないんですか…?この画家が描いているものは…」
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