怖い話登録数18393話
恐怖感アップダークモード
(0件)
▼コンテンツには広告が含まれています
✕
祖父の死因
お気に入り
1746
48
1
0
中編4分
コピー
「祖父の死因」の朗読動画を探しています。YouTubeでこの話の朗読動画を見つけたらぜひ投稿していってください。
※YouTubeのURL必須
開始時間
00時間00分00秒
投稿する
親父に聞いた話。 30年くらい前、 親父はまだ自分で炭を焼いていた。 山の中に作った炭窯で、 クヌギやスギの炭を焼く。 焼きにかかると、 足かけ4日くらいの作業の間、 釜の側の小屋で寝泊まりする。 その日は夕方から火を入れたのだが、 前回焼いた時からあまり日が経っていないのに、 どうしたわけか、なかなか釜の中まで火が回らない。 ここで焦っては元も子もないので、 親父は辛抱強く柴や薪をくべ、 フイゴを踏んで火の番をしていた。 夜もとっぷり暮れ、 辺りを静寂が支配し、 薪の爆ぜる音ばかりが聞こえる。 パチ…パチ…パチ… ザ…ザザザ… 背後の藪で物音がした。 獣か?と思い、振り返るが姿はない。 パチ…パチン…パチ…パチ… ザザッ…ザザザザザザァァァァ――――――――――― 音が藪の中を凄いスピードで移動しはじめた。 この時親父は、 これはこの世のモノではないな、と直感し、 振り向かなかった。 ザザザザザザザザザザザザザ 音が炭釜の周囲を回りだした。 いよいよ尋常ではない。 親父はジッと耐えて火を見つめていた。 ザ… 「よお…何してるんだ」 音が止んだと思うと、 親父の肩越しに誰かが話しかけてきた。 親しげな口調だが、 その声に聞き覚えはない。 親父が黙っていると、 声は勝手に言葉を継いだ。 「お前、独りか?」 「なぜ火の側にいる?」 「炭を焼いているのだな?」 声は真後ろから聞こえてくる。 息が掛かりそうな程の距離だ。 親父は、必死の思いで振り向こうとする衝動と戦った。 声が続けて聞いてきた。 「ここには、電話があるか?」 なに?電話? 奇妙な問いかけに、親父はとまどった。 携帯電話など無い時代のこと、 こんな山中に電話などあるはずがない。 間の抜けたその言葉に、 親父は少し気を緩めた。 「そんなもの、あるはずないだろう」 「そうか」 不意に背後から気配が消えた。 時間をおいて怖々振り向いてみると、 やはり誰も居ない。 鬱蒼とした林が静まりかえっているばかりだった。 親父は、さっきの出来事を振り返ると同時に、 改めて恐怖がぶり返して来るのを感じた。 恐ろしくて仕方が無かったが、 火の側を離れる訳にはいかない。 念仏を唱えながら火の番を続けるうちに、 ようやく東の空が白んできた。 あたりの様子が判るくらいに明るくなった頃、 祖父(親父の父親)が、 二人分の弁当を持って山に上がってきた。 「どうだ?」 「いや、昨日の夕方から焼いてるんだが、 釜の中へ火が入らないんだ」 親父は昨夜の怪異については口にしなかった。 「どれ、俺が見てやる」 祖父は釜の裏に回って、 煙突の煙に手をかざして言った。 「そろそろ温くなっとる」 そのまま温度を見ようと、 釜の上に手をついた。 「ここはまだ冷たいな…」 そう言いながら、 炭釜の天井部分に乗り上がった… ボゴッ 鈍い音がして釜の天井が崩れ、 祖父が炭釜の中に転落した。 親父は慌てて祖父を助けようとしたが、 足場の悪さと、立ちこめる煙と灰が邪魔をする。 親父は火傷を負いながらも、 祖父を救うべく釜の上に足をかけた。 釜の中は地獄の業火のように真っ赤だった。 火はとっくに釜の中まで回っていたのだ。 悪戦苦闘の末、 ようやく祖父の体を引きずり出した頃には、 顔や胸のあたりまでがグチャグチャに焼けただれて、 すでに息は無かった。 目の前で起きた惨劇が信じられず、 親父はしばし惚けていた。 が、すぐに気を取り直し、下山することにした。 しかし、祖父の死体を背負って、 急な山道を下るのは不可能に思えた。 親父は一人、小一時間ほどかけて、 祖父の軽トラックが止めてある道端まで山を下った。 村の知り合いを連れて、 炭小屋の所まで戻ってみると、 祖父の死体に異変が起きていた。 焼けただれた上半身だけが白骨化していたのだ。 まるでしゃぶり尽くしたかのように、 白い骨だけが残されている。 対照的に下半身は手つかずで、 臓器もそっくり残っていた。 通常、熊や野犬などの獣は、 獲物の臓物から食らう。 それにこのあたりには、 そんな大型の肉食獣などいないはずだった。 その場に居合わせた全員が、 死体の様子が異常だということに気付いていた。 にも拘わらす、誰もそのことには触れない。 黙々と祖父の死体を運び始めた。 親父が何か言おうとすると、 皆が静かに首を横に振る。 親父はそこで気付いた。 これはタブーに類することなのだ、と。 昨夜、親父のところへやってきた訪問者が何者なのか? 祖父の死体を荒らしたのは何なのか? その問いには、誰も答えられない。 誰も口に出来ない。 「そういうことになっているんだ」 村の年寄りは、 親父にそう言ったそうだ。 今でも祖父の死因は、 野犬に襲われたことになっている。
怖い話を読んでいると霊が寄ってくる?不安な方はこちらがおすすめ
1人が登録しています
感想や考察があればぜひコメントで教えてください ↓コメントする
この話は怖かったですか?
怖かった48
次はこちらの話なんていかがですか
続きを読む
※既読の話はオレンジ色の下線が灰色に変わります
Amazon無料でスグに読める本
美味しいご飯が食べたくなる漫画⑩: 変化編 美味しいご飯が食べたくなる漫画【にしみつ】
無能は不要と言われ『時計使い』の僕は職人ギルドから追い出されるも、ダンジョンの深部で真の力に覚醒する THE COMIC 1 (ライドコミックス)
私たちに愛されたい妹 読者さんの恋愛・浮気体験談
悪いのは、私ですか?【6】: 職場編 ぼめそのエッセイ漫画集
引きこもり令嬢は皇妃になんてなりたくない!~強面皇帝の溺愛が駄々漏れで困ります~1巻 (Berry's COMICS)
復讐完遂者の人生二周目異世界譚 THE COMIC 3 (ライドコミックス)
前の話:【ほん怖】山で迷子
次の話:【ほん怖】袖を引っ張られた
怖い話 No.3520
【ほん怖】おばあちゃんを探しています
1921
51
中編3分
怖い話 No.10601
【ほん怖】アキちゃん
1509
40
短編2分
怖い話 No.3160
【ほん怖】高校野球のウグイス嬢をやってた
1881
23
短編1分
怖い話 No.3610
【ほん怖】弊害
826
24
怖い話 No.11080
【ほん怖】ひょっとこのお面
朗読 トキの怪談巡り / Toki's Ghost Story Tour
4090
2
怖い話 No.3159
【ほん怖】私の姉はよくモテていた
1931
36
怖い話 No.11515
【ほん怖】心霊スポットのある山で迷った
1603
34
怖い話 No.3824
【ほん怖】次の日死体で発見されました
1798
38
怖い話 No.3158
【ほん怖】校内で所在不明の開かずの扉が開いた
1032
39
怖い話 No.3434
【ほん怖】山にいるもの
812
21
心霊サイト運営者
全国心霊マップ
ghostmap
プロフィール
Twitter
新着ほん怖
でっかいカエル
古びたフランス人形
信号待ち
家への電話
ヘアピンが落ちてる
友達の家に電話
笑い声
缶けり
義理の姉
サンタとトナカイ
極限状態の意識
白黒おじいさん
新着コメント
翌日に寝込む
凍りつく
簡単なQ&A
警察呼びますから!
あの山ば通る糞ガキどもば呪い殺してやる
赤目
山小屋の風呂
母が精神の方で入院するかもしれない