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旅路
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夕暮れの山の中に、一台のバスがあった。 後ろには、遊園地なんかによくある回転式のゲートそのゲートの向こうに、中学時代からの友人Tと、彼の好きだった車が隣に並んでいたTはしばらく渋い顔でこちらを見つめていたが、やがて踵を返し、車と一緒にゲートの前から去っていったこの時Tが車に乗り込むことはなく、車は勝手にTに付き従うようにゆっくりとついていったバスのドアが開くのを待っているのは、自分を含め4人。 同じく中学時代からの友人で女の子のA。それから見たことのない知的障害者が3人。 俺はAと面識があるにも関わらず言葉一つ交わすことなく、静かにバスを待っていたが逆に知的障害者3人は一緒になってわけのわからないことを喋りあっていた。 バスのドアが開いた。中に乗り込むと、顔の無い運転手がハンドルを握っている。 あるいはこれが本当の「記憶に残らない顔」なのかもしれない最前列の席には、やはり中学の同級生だった女の子のMと見知らぬ女の人。恐らく女の人はMの母親か何かだろう先に乗り込んだAは、窓際の席に憂鬱そうに座っていた。 彼女の脇を通り過ぎる時、俺は初めて彼女に声をかけた「大丈夫だよ」Aの反応を見ることなく、俺は後ろの方の席へと歩いていく。見ると、最後尾にはやはり中学時代の友人Kがニコニコしながら座っていた。 俺はKの隣に腰を下ろした。何のアナウンスもなく、バスはドアを閉め、出発した。 中は静まり返り、エンジンの音だけが響く見れば、さっきまで騒いでいた知的障害者3人も静かに席に納まっていた。やがてバスは町に出た。 小さめの木造住宅が立ち並ぶ、どこか時代を感じさせる風景なんとなく高校の部活の合宿で行った山梨の光景に似ていた気がするふと、隣に座っていたKの姿が陽炎のようにぼやけているのに気がついたバスが進んでいくたびに、Kの姿は揺らいでいく。 俺はその様子を視界の端に捉えるだけで、決して直視することはないやがてKは、ふっと、静かに穏やかに消えてしまったアナウンスの無いバスはどんどん進んでいく。 夕日に照らされる街並みは美しく、清らかですらあったしかし俺はふとここで違和感を感じた。夕日の光が俺の顔にもろに当たっている。 なのに肝心の夕日自体がどこにも見えない俺は窓の外をよく見るため、立ち上がって、ついでにバスの中を見回した見ると、最前列に座っていたMも立ち上がっており、こちらをじっと見つめていた。 二人の視線がバスの対角線を作るもうバスの中には俺とMの二人しか乗っていなかった。 Aも知的障害者3人も、Mの母親の姿もないそしてさっき乗り込んだ時あれほど広く感じたバスの車内が嘘のように縮み、今やワンボックスカー程度の広さしかないそして次の瞬間、夕日が強烈に強くなったかと思うと、バスの中は光に包まれ、俺とMは互いを見ることすらできなくなった。 そしてまだ中学生だった俺は、長い長い旅路を終えて、ようやくベッドの中で目を覚ましたそう、旅路。今なら素直にそう考えることができる。正夢を見ることはそれ以前にもたまにあることではあった。 最初に見たのは5歳の時でその2年後の冬、小学校に上がってできた友達と家の屋上で雪合戦をするという他愛もないものであった。 だが中学生の時に見たあの夢はあまりに抽象的な内容だったため、奇妙ではあったが特に気にもしていなかった甘かったと今では思う。 それから11年後、俺とM、そして口うるさいMの母親、いやお義母さんを伴って行った新婚旅行先で事故に遭ったお義母さんは死亡。俺とMは生死の境を彷徨ったが、奇跡的に生還した。 同じ頃、中学生時代の同級生Tが、自分の人生の失敗の原因が中学時代にした告白の失敗にあると思いこみ彼の愛車でAをはね、自らも車内で自殺を試みたAは即死したが、Tは後遺症を残したまま死に切れなかった。 現在は精神病院で隔離されているKについてはもう知りたくもない。 元々そんなに仲が良かったわけではないし、何よりどうなったか分かりきっている生死を彷徨っている間、妻には話していないが、俺は確かに見た。夕暮れの山の中に静かに佇むバスの姿。 そこでドアが開くのを待っている人達。穏やかだが何一つ生きてなどいない空間3人の知的障害者が誰なのかは知らない。 だが俺はこう考えているあれはTの一部なのではないか?発狂し、錯乱し、不完全な自殺によって「死んでしまったTの一部」が、不完全な人として現れ、バスに乗り込んでいったのではないか、と。 俺がAにかけた言葉、「大丈夫だよ」が何を意味しているのかはわからない。ただAは優しくて性格の良い子だったからひょっとすると自らを殺したTのことまで心配していたのかもしれない。 そして少なくともあのバスの中で誰がAを殺したのか知っていた人間は、俺しかいなかったということ、なのだろうか。 もし正夢を見る人がいるならば、気をつけた方がいい何の他愛もない夢が、実は怖ろしい真実を内包していることが、時としてあるかもしれないのだから
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