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現実のように感じられた夢
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夢っていうものは大概、 見ている最中はまるでそれが現実のように感じられて、 目が覚めた瞬間は内容を鮮明に覚えているのに、 起きて顔でも洗っているうちに 頭に霧でも掛かったみたいに それがどんな夢だったかを忘れてしまう、 そんなものだと思う。 俺が普段見る夢も大抵そういう感じなんだが、 昔見た夢で、その内容の隅々まで克明に覚えているものがある。 それは俺が小学1~2年生くらいの頃に見た夢だった。 はじめ、当時小学生の俺は、 壁一面に変な象形文字みたいなものが書かれた 古代エジプトの遺跡の中で、 無機的な表情のマネキンみたいなお化けに追いかけられていた。 (同年代の人には分かると思うけど、 寝る前に読んでた某カードゲーム漫画の影響を多大に受けてるw) そこまではしょっちゅう見るような ありふれた怖い夢だったんだけど、 マネキンお化けから逃げるうちに、 ふと俺はそれが夢であることに気づいた。 何かきっかけがあったわけでもないんだけど、 何故か 「あ、これ夢だ」 って分かったんだ。 自分が夢を見ていると気づいた瞬間、 いつのまにか俺は古代エジプトの遺跡ではなく、 背丈と同じくらいの高さの草(芦?)が生えた 土手みたいなところにいた。 そして不思議なことに、 まだ何かに追いかけられているという実感があった。 さっきみたいにマネキンお化けの姿は見えないが、 逃げなくてはいけないという気持ちに駆られた俺は、 それが夢だと分かっていながらも何となく怖くて、 草をかき分けながら走り続けた。 走って逃げいている途中で、 何人かの大人が立っていた。 もちろん俺は助けを求めるために話しかけたんだが、 そこに立っていたモブキャラみたいな大人は皆、 顔がムンクの叫び?とは少し違うけど、 そんな感じの人間とは思えない形相をしていた。 俺は走りながら、 懲りずに何度も出会う大人の顔を覗き込むけど、 揃いも揃ってムンク状態。 そうして逃げているうちに俺はなんとなく、 この夢はこのままずっと覚めることがないんじゃないか? という予感がしてきた。 それに気づいた時はマジで怖くなって、 誰でもいいから助けて、 と泣きながら立ち止まってしまった。 と、そこで後ろから、 俺の肩にポンと手が置かれた。 ヤバイ、捕まった。 そう思った俺は怯えながらも、 反射的に後ろを振り向いた。 だけど、その手は俺のことを追いかけていた 『何か』ではなかった。 後ろに立っていたのはお婆ちゃん。 しかもその顔は、 他の大人みたいなムンクの叫びじゃなくて、 凄く穏やかな表情だった。 え?誰? そう思った次の瞬間には、 俺は自分のベッドの上で寝ていた。 で、なんでこんな昔の夢の話を今しているかというと、理由がある。 今は大学生で一人暮らしをしているんだけど、 つい先月の末頃、ひい祖父ちゃんが死んで、 その葬式で地元に帰った。 ひい祖父ちゃんは天寿を全うして 静かに往生したんだそうで、 お通夜も物悲しい雰囲気は全然なく、 親戚が集まった食事会みたいな感じだった。 そこで田舎の婆ちゃん(ひい祖父ちゃんの娘、祖母の姉)が、 ひい祖父ちゃんの写ってるアルバムを持ってきて、 一同で思い出話が始まったんだが、 そこにあった一枚の集合写真を見て俺はギョッとした。 写真に写っている一人に、 まさに俺の夢に登場したあの婆ちゃんがいたんだ。 聞いてみるとその人は、 ひい祖父ちゃんの妹で、 20年くらい前に病気で死んでいるらしい。 写真が撮られたのは今から26年前で、 俺は生まれていない。 俺はその日、 写真ではじめてその婆ちゃんの存在を知ったはずなのに、 俺が小学生の頃に見た夢の婆ちゃんと間違いなく同一人物だった。 よく聞いてみると、 その婆ちゃんは俺が生まれたばかりで 首も据わらない頃に一度だけこっちに来て、 俺を抱っこしてくれたことがあるらしい。 (もちろん俺は覚えていないけど) 今思えば、きっと親戚のよしみで 婆ちゃんが俺のことを助けてくれたんだなって思う。 見てから10年以上経っても、 登場した婆ちゃんの顔の詳細まで鮮明に覚えているあの夢。 そもそもなんだか『忘れてはいけない』ような気がしていたんだけど、 不思議なことってあるんだなって本気で思ってる。 そしてあの夢で、 婆ちゃんが俺のことを助けてくれなかったら一体どうなっていたんだろう、 と思うと、今でもどうしようもなくゾッとする。
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