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呪いは存在する
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数年前、アパートで一人暮らしをしていました。同じ時期、私が働いていた会社の上層部で問題が起き、仕事が出来なくなり、休職となってしまい、私はその会社を辞めて、とりあえず生活するために、日払い制度のある水商売をしていました。その日暮らしというのは大変な生活です。なんとか日々の生活には困らなくなり、日払いから月払いへ移行して貰い、生活も人並みになることが出来ました。水商売といっても、同伴もノルマもなく、カウンターでカクテルを作りながらお客さんと世間話をしていればいい、という健全なバーでの仕事です。収入も時給1000円。 至って質素な生活でした。その頃付き合っていた彼が、仕事を辞めて私の部屋に転がり込み、同棲生活になってしまいました。私は「仕事を探しに行く」と言ってパチンコに行き、光熱費すら払わずに私にお金を借りる彼に嫌気がさしました。時給1000円で、家賃と二人分の光熱費と食費を払うのがどれだけ大変か。仕事を終えて朝方部屋に帰ると、電気を点けてゲームばかりやっている彼に殺意が芽生え、「ピカチュウじゃないんだから電気代を浪費すんじゃねーよ」と言ったのを覚えています。もう同棲生活は破綻していました。私はピカチュウに、「仕事をしないなら出ていけ」と言い、半ば追い出す形で別れました。私は生活を立て直そうと必死でしたが、仕事がある事だけが救いです。なんとか気持ちを前向きに保ちましたが、今考えると、いつでも折れる寸前だったように思います。そのせいか、好きでもない人と付き合ってしまいました。本当に私がバカでした。最初は全く知りませんでしたが、その男には彼女がいました。私はそれを知った時に、すぐに別れようとしましたが、男が拒否します。話しが前に進まないし結論もでないので、面倒になり、そのまま放置していました。しかし、私の知らない所で話が進み、その男が彼女に別れ話をしたそうです。そして、別れ話がこじれて、彼女が気色ばんで私の部屋に怒鳴り込んできました。朝の6時でした。玄関をあけると、男はその彼女の後ろに情けない顔でついてきています。ムキー!と怒っていたちんちくりんな女にも心底ウンザリしましたが、2人とも部屋にあがって貰い、話を聞きました。チンチクリンは怒っていたのは玄関先でだけ、部屋に入るとすっかり落ち着いて、「キレイな部屋ですねー、あたしとは大違い」と部屋を見渡してから、男を睨みつけました。私はその顔を見て、またウンザリしました。最初はそうウンザリしていましたが、チンチクリンと私の会話は進み、なんか仲良くなってきました。私「最初は彼女さんがいるとは聞いてなかったんです。こないだ聞いて別れようと言ったんですけど…」チンチクリン「そうだったんですか。そうとは知らず、朝早くから、すみません」チンチクリンは、安堵の表情を浮かべました。良かった。やっと別れられる。チンチクリン「実はあたし達、結婚の約束をしていたんですよ」私「そうなんですか。私は別れたつもりだったので関わる気は全くないです。お幸せにね」チンチクリンはやっと笑顔を見せました。私も安心しました。ところが、男が空気を読みません。男「お前と別れて(私)と付き合う」チンチクリン「!?」私「はあ!?」この男、もはや日本語が通じないとしか思えません。チンチクリンの顔がみるみる曇り、見ている私まで心が痛んできました。男「お前と結婚する気はないんだ。俺は(私)と付き合う。お前はもう帰れ」ちょ、なんだそれ。私「いや、私はもう…」言いかけてチラっとチンチクリンの顔を見たら、何も言えなくなりました。それほど悲痛な表情をしていました。このKY男にこれ以上喋らせてはいけない、と思い、私はキッパリと、「もう2人には関わらないし二度と会わない。こんな酷い(男)は大っキライ。わかったら2人で寄りをもどし…」男「嫌だ!大体(チンチクリン)が余計な事をしなければよかったんだ!」もうだめだ。チンチクリンは泣きそうでした。そして、無言で勢いよく部屋を飛び出していきました。男「…」私「…早く彼女を追いかけなよ」男「嫌だ」私はとうとうブチ切れました私「てめぇそれでも男かよ。彼女が自殺したらてめぇのせいだからな。出ていけよ」と言って男を追い出しました。やはりというかなんというか、その後すぐに『チンチクリンが自殺未遂をした』と、男から連絡がありました。だろうな。浮気相手の前であんな事言われたら…まあ、これで2人が寄りを戻せばいいかなと、私は楽観的に考えていました。ところが、そう簡単には終われませんでした。その後、KY男とは連絡をとらず、着信拒否にしてひたすら雲隠れしていましたが、やはりというかなんというか、ストーカー行為をしてきました。玄関の前でぼーっと佇んでいたり、カーテンを開けると窓の下にいたり。私は毎日電気を消して、居留守を決め込みました。外にも出ず、なかばヒッキーです。同時に、職場にも別のストーカーが現れました。この話には関係ないので詳細は省きますが、前職の仕事関係で少し話しただけの、名前もしらないオサーンですが、私とヤッタという噂を元彼や友達に流した変態です。あの手この手で私に近づいてくるし、とうとう職場までバレたため身の危険を感じて、すぐに仕事を辞めました。それ以外にも、夜道で知らない男に追われて捕まりそうになったりと、散々でした。外が怖くなり、完全に引きこもり生活です。そんな時、異変が起こり始めました。異変とは、音です。台所で「カラン」と、缶が転がるような音がしました。最初は普通に、台所に置いたゴミ箱の中の缶が転がったんだろう、としか思わなかったので、気になりませんでした。ある日、ゴミの日に缶類を出して、部屋の中には一つも缶がないのに、「カラン」となる事に気がつきました。それから私は、音に注意を払うようになりました。わかったのは、その音がなるのは夜中の2時丁度から朝4時まで。それ以外の時間には一度もなりません。当時ヒッキーだったため、一日中部屋にいたので、時間は確かです。精神的に追い詰められていたので、幻聴や耳なりも有り得ますが、そんなあやふやな音ではなく、実際に缶が転がったとしか思えないリアルな音で、遊びに来た友達も音を聞いているので、幻聴ではないと思います。毎日同じ時間にカランとなるだけで、実害はなく、不思議ではありますが、怖くはなかったです。音とストーカーと、半分は私のせいで自殺未遂をしたチンチクリン。私は悪くないと思っても、嫌な気持ちで毎日を過ごしていました。そのうちに私はふと気づきました。この音はチンチクリンの呪いか?と。もしそうなら、音の主という物があるはずです。主があるなら、話せばわかるかも?と考えて、夜中の2時にまたカラン、となりだした時、「あんたウルサいよ。勝手に人ん家に入り込んで騒音ださないでくれる?」と声に出して言ってみました。面白い事に、そうするとその日はもう音がならないのです。しかし、毎日2時になると再び始まります。もう音がなると、2時になったと無意識にわかるようになってきました。毎日、ストーカーに悩まされ、引きこもっても怪音に悩まされ、とうとう実家に逃げました。不思議な事に、実家までは怪音は追ってはきませんでした。半分家出みたいに一人暮らしを始めた私は親に謝り、すごく反省してまた実家で暮らすようになり、今に至ります。あの怪音や不運の連続は、家出をした罪とチンチクリンの呪いだと思っています。呪いの正体とは、生き霊に他なりません。無念など負の感情が誰かに向かった時に、簡単に生き霊として飛ぶものだと思います。この経験のせいか、私は生き霊に敏感になり、その後も生き霊の存在を感じる事があります。呪いはあると思います。幽霊よりも、生きた人間のほうが確実にたちが悪いです。幽霊なら一度追い払えば済みますが、生き霊や呪いは本人が忘れない限り付きまとってきます。場合によっては、本人の自覚がなくても襲ってきます。
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