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中古の家
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高1の頃に父がちょっと出世して、一軒家を買おうかということに。 それで日曜を利用して不動産巡りみたいなことをしていた。 その中で見た中古の家があった。両親と俺と弟(当時5歳)で行った。 所有者はたしか40歳くらいのご夫婦で、夕方に現場で待ち合わせ。 そのときに住んでいたのは、ざわついた繁華街の賃貸マンションだったので、 郊外のその一軒家は、外から一見するととても魅力的だった。 家の中に入れてもらったら、やけに光が弱くて雰囲気が悪い気がした。 それでもご夫婦は「日中はけっこう光入りますよ」みたいなことを。 1部屋ずつ見てたら、いきなり弟がビヤアアアア!!!!!って泣き出した。 「あそこに怖い顔した男の人がいて、こっち見てる」 って。 廊下の隅っこを指さし、母にびったりくっついて、 ヒックヒックと嗚咽が止まらなくなってしまった。 父がとっさに、 「すいません、この子ちょっと変わった子で。 外で一度こうなると家に帰るまで収拾つかないんですよ。 申し訳ないんですけど、また後日お願いしてもいいですか?」 みたいなことを言い、すぐ帰ることになった。 父は深々と頭を下げて、家族で車に乗り込んだ。 弟は泣きやんだ。 堅い表情をした父は、 「ちょっとコンビニ見つけたら入るからな」 と。 そしてすぐ見つけたコンビニへ入り、塩(食卓塩)を買ってきた。 そして 「みんな外出ろ」 と俺らを車の外へ出し、いきなりふりかけ始めた。 「お清めだからちょっとだけ我慢しろ」 と言い、車にもぱらぱらと。 鈍感な俺はそれでようやく 「あ、あの家に変なのがいたのか!」 と悟り、父に聞いてみた。 母はまだ弟をぎゅっと抱きしめていた。 父は後部座席の母に、 「母さんわかった?」 と聞いた。 母は 「いや、私は特になかったけど、雰囲気重いなあとは思った」 と。 それで父が言うには、弟が泣き出したときに指さした方向を見たら、 見えはしなかったが、「出て行け」という声が確かに聞こえたと。 その声は、すごくじめっとした老人っぽい感じの声だったそうで。 父は「いやあ、あそこ絶対いるだろ。やばかったな」と。 それで父と母が終始、事故物件がどうのとかいう話をしていた。 俺はとりあえず事故らないでくれ、とだけ願っていた。 結局、翌年に一軒家はわりと近所の物件に無事決まった。 それから10数年後。 地元を離れて就職している俺は、毎年今頃に夏休みがある。 去年も今頃に1週間休みを取り、帰省した。すぐい高校時代の友達と会うことに。 会ったのはいいがまだ時間的に15時とかだったので、飲むのも早いし、 かといって他にやることなんかもないので、友達の運転でドライブを。 それでブラブラ遠くまで回っていたら、なんとなく見覚えのある景色が。 「俺このへん来たことあると思う。なんだっけ」と俺。 考えてみると、高1の頃に見に来てすぐに帰ったあの家へ近づいているはずだった。 それでいろいろと思い出した俺は、友達にその話しをしてみた。 ちょうどそれくらいのときに、ばったりその家を発見。 まあ遠目からだったもんで、友達に「たしかあそこだ」と教えた。 ビビリな俺はちょっと怖くなっていたので、「帰ろう」と。 すると友達は住所だけ確認して、「おもしろい話聞いたら教えるわ」と。 友達はずっと地元にいて、金融系の営業をしているので顔が広く、 仕事でもわりと広範囲で動くため、「なんか聞けたらいいねえ」と。 それからちょっとして去年の冬。 その友達から『冬は帰省すんの?』とメールが。『たぶんする』と返すと、 『日にち決まったら教えて。飲もうぜ』ということになった。 まあいつも帰省時に電話一本で会ってるし家も近いのに、今更?と。 結婚でもするんで、婚約者でも紹介するのかな?と考えていた。 帰省した日に友達と待ち合わせをしたら、他に1人やってきた。男。 友達の会社の後輩だそうで、ご丁寧に名刺までいただいた。 友達が、 「彼、おまえが夏に言ってたあの家の話を知ってるんだよ。 あの地域の出身で、今もそっちの地域の支店にいるんだけど、 最近、俺がそこの支店に立ち寄ることあってさ。 その時、飯ついでに聞いたら話に食いついてきてくれて、 おまけに独自に調べてくれたんだって。けっこうすげえよ」 わざわざその日も電車で出てきたそうで、ちょっと唖然とした。 それで、3人で飲みながら聞いたことなんだけど。 その家は、所有者はたしかにあのご夫婦。 その旦那さんは、小学生のころに両親を亡くしてしまい、 独り者の叔父に引き取られて育った。就職するまで叔父と二人暮らし。 旦那さんが結婚してから家が欲しいということになったそうで。 しかし旦那さん、かなり低収入なのでローンも断られてばかりで、 見かねた『育ての親』である叔父が購入資金を出してあげることに。 ただそれには条件があり、 「俺はおまえが出て行ってからまた独り者なわけだ。 もう高齢だから、一緒に暮らせるなら全部出してやってもいい。 俺になにかあったときにちゃんと面倒見てくれ」 みたいなことで。 結果、奥さんも同意してそうすることになり、無事家を建てたと。 しかし奥さんがあまりその叔父のことを好きではなく、 暮らし初めて数ヶ月後に、「老人ホームに入れよう」ということに。 それで、これまた叔父のお金から捻出して、無理矢理老人ホームに入れた。 老人ホームに入れられた、つまり裏切られたショックで叔父は精神に異変が生じ、 毎日毎日、「あの家は俺の家だ」とブツブツ呟いていたとか。 それで老人ホーム側にも多々迷惑がかかるんで、3つほど転々とさせられ、そのあげくに病気で入院。 次は、末期患者の方が入るようなところに入れられてしまい、しばらく放置されてしまったそうで。 その間、奥さんは家の中で階段から転げ落ちて流産してしまったり、 他にも良くないことが続くので、お祓いしたが効果がなかった。 それでご夫婦で別の場所で賃貸アパートか何かへ住み、家は売ることに。 しかしなかなか決まらなくて、とりあえず貸家も考えた。 貸家にすると2組ほど家族が住んだが、すぐに出て行ってしまったとか。 そして最期までその叔父は「あの家は俺の家だ」みたいなことを言い続けながら、 結局病院で亡くなったということです。 いまだにその家は空き家で手つかずな状態。 その付近の住民がよく、「家の中に誰かいるのが外から見える」とか、 「家の前に老人が立っている」など、いろいろ話があり それで幽霊屋敷ということになっていると。 あのときに弟が見たのと、父が聞いたのは本物だったらしい。 弟は一切覚えていないけど、GJだったんだなあ、と思いました。 調べた友達の後輩もほんとよくやったと思った。長くてすまん。
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