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キスマーク付きの千円札
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深夜のコンビニでの仕事の一つに、売上金の計算と送金作業がある。レジおよび回収箱の中に入った金が幾らか計上して、銀行や郵便局に送る作業である。そんな中で紙幣や硬貨を数えている時に、「よくこんなモノをレジに出す気になるよなあ」と思ってしまうブツを良く見るのである。錆び付いて数字が読めない十円玉であるとか、所々破けてテープ塗れの千円札。もちろんどんなお金も基本的に受け取りを拒否する事は出来ない訳で、一日に必ず一つ二つは、見るも無残な日本銀行券の成れの果てを手にする事になる訳で。そんな中で一番印象に残っているのが、キスマーク付きの千円札だった。 言葉だけではどうと言う事も無いと思うのだが、想像して欲しい。薄く緑がかった夏目漱石の肖像画。古札である。裏返すと、向き合った鶴(…だったっけ?)が二羽。その鶴達の真ん中に、べっとりと赤い口紅で付けられたキスマークだ。そんなブツがある日、売上金の中に一枚紛れ込んでいた訳で。見た瞬間に思わず「うあ」と呻いて、何とも気持ち悪い事をするなぁ、と思ったものだ。日本銀行が発行して以来、恐らくは何百人もの手を渡り歩いてきた紙幣だ。後ろ向きに考えれば、どれだけの手垢、細かいゴミが付着しているか知れたモノでは無い。そんな紙幣に、口付けをしてしまう事情がまず想像付かないし、それを人前に出す神経もちょっと解らない。そんな事をあれこれ思いながら改めてその紙幣を見てみる。地味な色の紙幣の山の中、不気味に鮮やかな色合いの紙幣は、どこか毒性の動物を想像させる。「嫌だなあ、さっさと郵便局に引き取ってもらおうか」そう思って、その紙幣は送金袋の中に突っ込んだ。これだけなら、まあ「世の中には気持ちの悪い事をする人がいるなあ」で済んだ話だ。しばらく経った、やはり深夜の同じ作業中。「うあ」再び、同じ紙幣が出てきた。え?なんで?軽い混乱に襲われた。この紙幣は確かにこの前、郵便局に送金したはずだ。こんな紙幣をお客さんに出す訳には行かないのは、コンビニも郵便局も変わらない訳で。その同じ紙幣が、数日経たとは言え、なんで同じ店から出てくるんだ?鮮やかな色の口紅は、何だか笑っているように見える。とてつもなく嫌ぁな気持ちになりながら、とにかくその紙幣は前回同様に送金袋に突っ込んだ。三度目は十ヶ月ほどブランクを空けてから来た。そういえば去年、あんな事があったなあ。でもまあ、タチの悪い偶然だったんだろうなあ。そう思い始めた矢先の出来事だったから、見つけた瞬間は思わず凹んだ。正直、虚空に向かって「何でやねん!」と小さく叫んだ僕も、ハタから見るとちょっと恐かったかもしれない。キスマーク付きの千円札。見れば見るほど不気味なブツであり。持っているだけで不幸になりそうな、そんな予感がある。どう始末を付けたかは、過去二回と同様である。「お金に呪いとか何か込められるのかねぇ?」ある日、久しぶりに友人に会った時世間話的に尋ねてみた。キスマークの千円札が出てきた前後に、自分や店に不幸があった訳ではないが、明らかにあの紙幣は意思を持っているように感じたのだ。そして、アレに意思があるとしたら、それは決して『よいもの』では無いと思うのである。この友人は、高校時代から勉強そっちのけで様々な雑学を憶える事に励み、ちょいオタな仲間達から「雑学王」「ある意味クレアバイブル(※異界黙示録。ライトノベル『スレイヤーズ』を参照のこと)」と呼ばれ恐れられたり恐れられなかったりした男である。「聞いた事無いけど、出来たとしてもしょうがねぇよなぁ」「しょうがない?」「人間に食べられる為に殺される動物達の霊はどうなってんだ、って疑問と一緒でな。在ったとしても、何の手立ても無い訳だしさ」家畜の霊が恐いから肉食を止める事は出来ないし、呪われたお札があるからお金を使うのを止める訳にもいかない、と言う事か。「考えてみると金ってやつは、確かに呪いとかには便利だよな?赤の他人同士がやり取りするのに何の疑問も抱かないのは、これぐらいのモンだし」「いや、そうでも無いだろ」友人はちょっと考えてから返答してくる。「赤の他人同士簡単にやり取りするんだから、呪いたい相手がいつまでその紙幣を持ってるのか判らないんだぞ?仮に誰かがお前のコンビニを呪いたいからって、そんな事をしたとして、実際、一日経たずに紙幣は郵便局に送られちゃってるんだしさ」古戦場から出てきた鎧兜や、廃屋から掘り出した鏡みたいにはいかないか。確かにそうだよなあ。「まあ、誰でもいいから呪いたい、って話なら別だけど」「………」……今のご時世、そんな奴普通に居そうでヤだなあ。「あー、まあ、その紙幣に呪いがかけられてるって話自体、飛ばしすぎじゃ無ぇの?どっかのアホなホステスか何かが、酔っ払ったあげくにアホな事をしただけ、って可能性が一番高いって言うか、多分そうだろ」でも、では何故あの紙幣はウチの店に何度も何度もやって来るのか。「紙幣ナンバー、憶えてるのか?」「は?」「同じ紙幣なのかな、それは」思いもよらなかった事を言う。確かにナンバーは控えていない。て言うか誰も控えないだろいちいち。「郵便局だって、一回位はそんな汚れた紙幣をお客さんに間違って出しちゃうかもしれない。でも、それが二度三度続いて、しかもそれが回りまわって同じ店にやってくるってのは、確率的にちょっとおかしいだろ」「うーむ」「それよりは、お前の町のどこかで誰かが、そういうキスマーク紙幣を『量産』して流通にばら撒いている、と。その内の何枚かが、お前の店に何枚か流れてきたと。そう考える方が、確率的にはおかしくないんじゃね?」「うーむ」確かに、確率的にはそちらの方がおかしくないだろうさ。でも、お話としてはどうだろう?女が一人、自分の部屋で口紅を塗っては千円札に鮮やかなキスマークを付ける。財布の中に入っている限りの千円札に口付けをしていく。そんな光景。どんな理由があろうとも、それは想像するだにおっかない情景では無かろうか。「そのキスマークにどんな意味があるのか知れないけど、仮に呪いを込めてるとして」友人が最後にこう締めくくった。「そいつはお前や店を呪ってるんじゃ無い。しばらくは『それ』が流通するであろう、お前の町全体を呪ってるんだと思うよ」ともあれ、僕が体験した一番不気味な出来事は、僕自身には一切害のないまま幕を閉じた訳で。キスマーク付きの千円札は、それ以来見かけない。
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