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ホタルで有名な場所
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もう3年も前の話しで恐縮なんだが、ホタルで有名な場所へと、 母と二人で見に行った時の事なんだ。 凄く長いし、文章も下手だし、たいして怖くも無いだろうから、 面倒だったら読み飛ばしてくれ。 只、もしこんな現象に心当たりのある人が居たら、教えて欲しい。 其の場所は、有名な漁港へと向かう海岸道路から山へと入ってゆく道の中腹にあって、 温泉施設と寺がある。 因みに、寺がある事は後日知ったんだけどな。 ここまで書くと場所特定されそうだが、それはそれで良いかもな。 取り合えず、少し広めの駐車場に車を止めて、 小さな橋を渡り、ホタルの出る場所にいくんだが、 小川が流れる小さな橋を越えると直にトイレがあって、 中に灯りが灯っているだけとなる。 道を照らしている訳ではないから、本当にもう真っ暗。 ホタルを見る為の場所なんだから当然だろうな。 着いた時は月も雲に隠れて出てなかったから、 細い砂利道は足元も見えない程暗くて、 俺や他の人は、携帯のライトで足元を照らしながら歩いてたんだ。 そんで、足元に落としていた視線を前に向けると、 母は一人でスタスタと真っ暗の足場の悪い道を歩いていく。 なんでこんな早く歩けるんだ?と疑問に思いながらも、 一生懸命ついていったんだ。 目が慣れてくればまぁ少しは見えるが、 やっぱり月の無い真っ暗な山道は暗い。 視界なんて有って無いようなものだ。 其の時、何度も 「何でこんな真っ暗なのに、足元も見ないで歩けるの?」 と聞いたんだ。其の度に返ってくる答えは、 「明るいじゃない」 というもの。 まぁ、夜目が利くんだろう程度に思いながら、 一生懸命付いて行った訳だ。 駐車場と小さな橋を超えて、トイレの脇を抜けると少し直線が続き、 其処から道が曲がっている場所に出る。 丁度その道を曲がって右手に広場、 其処から少しいくと左右から木が生い茂っている場所があるんだ。 母は其の木が生い茂っている手前で止まっている。 俺が見ても、その木が生い茂っている場所はすっごい暗い。 いや、其の手前も暗いんだが、もっと暗いといえばいいか… だけど、親子連れが普通に出てきたから、 俺は向こうに蛍が沢山居るんじゃないかと思って、行こうとした訳よ。 母の隣を通った時、突然 「これ以上はもう行けない。戻ろう」 と言って、 俺の答えを待つ前に踵を返して戻り始めた。 え?ちょ?みたいな訳の判らない状態の俺は、 母の危機迫った声色と異様な雰囲気に気圧されて、 背筋が寒くなりながら後ろから付いていった。 曲がり角の手前に広場があるっていっただろ? 母はそこに入ったんだよ。 そうしたら、丁度今まで暗かった足元が明るくなったんだ。 おお?と思って空を見上げると月が出ている。 今まで真っ暗だったから、余計明るく感じたんだな。 携帯はいらない位に明るくて、足元も良く見える。 あんな事を言ってた母は、別段変わった事も無く、 只、今度はとても歩きにくそうに、足元を携帯で照らしながら歩いているんだ。 さっきは月が出てなかったが、今は月が出ていて明るいのにだぜ? 変だとは思ったが、まぁ敢えて触れないようにしていた。 円形の広場の周りを水が流れているんだが、其処の淵まで歩いていって、 再び蛍見学と決め込もうとしたら、 危ないくらい母が水辺にいって、真っ暗な水の中を体を乗り出して覗き込んでいる。 慌てて止めたんだが、水面をじっと眺めて指差しながら、 「其処に変なものが浮いているよ」 と言うんだ。 探したけどそんなもの無いから、 「見えないよ?」 って俺。 「其処に黄色い棒見たいのがあるじゃない。人間みたいの」 「え、無いって。そんなデカイの有ったら目立つから」 なんて会話をしているうちに、 さきから続く会話の噛み合わなさに異様さを覚えたんだ。 母も同じだったんだろう。 「何だか変だよ。もう戻ろう」 と言うから、切り上げて戻った訳。 勿論、事情が判らないで支離滅裂な事だらけの俺は、 怖くて怖くて仕方なかったよ。 で、車に乗って、ずっと気になっていたから、 「さっき、『これ以上は行けない』といってたけど、何で? 真っ暗なのに、何であんなに足元みないで歩けたの?」 と聞いたの。 そうしたら凄く不思議そうに、 「ずっと明るかったじゃない。満月の夜みたいに明るかったよ」 って答える訳。 「月が無いのに?」 って答えると、流石に本人も戸惑って、 「でも、川にそって山の上のほうから、ずっと光の筋みたいのが道を明るくしていて…」 とか言うのね。 おかしいじゃん? 『これ以上は行けない』 と言ったのは、 その光の筋みたいのが、母の止まった場所の手前の空中に集められて、 丸いもやもやとした玉みたいになっていて、 これ以上行ったら戻ってこれなくなると、恐怖が湧き上がって戻ったらしい。 途中で広場に寄ったのは、俺が蛍をまだ見たいだろうなと思って、 あの球体の手前なら大丈夫だからと言う事で、行ってくれたらしい。 だが、其処は道よりも暗くて、足元が見えなかった。 川の中に黄色の浮いている物体が人みたいに見えたから、何だ? と思って近づいたんだと。 それは別段怖くなかったらしいよ。 そして、其の説明の後、一言聞かれたんだ。 「川の反対側に沢山の人たちが、 看板みたいのに寄りかかりながら此方をじっと見ていたけど、 あれはなんだろうね?」 って。 もう、其の一言で本当に怖くなってさ。 だって、そんなもの無かったんだぜ? 蛍を探そうと、川の向こうの葦の原みたいな場所を見ていたから判るが、 そんなもの一つも無かったんだぜ? そういったら、 「沢山の人が疲れたように、看板に寄りかかりながらずっとこっちを見ていたよ」 というの。 こんな感じらしい。 「 l\ 」 縦の線が看板で、斜めの線が人ね? 自慢じゃないが、母は嘘付くような人じゃないんだ。 寧ろ、律儀過ぎるくらい正直な人。 俺が明るいと感じていた場所は、母にとって暗く、 暗いと感じていた場所は明るい。 一緒の場所にいたのに、真逆の事を言うってだけでも変なのに、 其の上、俺には見えないのを見ている。 そんな事ってあるのかね…。 次の日、 『山に山菜を取りに行っていた母の知り合いが、沢で亡くなって見つかった』 という電話が来て、 母は 「もしかして、あの川に浮いていた黄色の丸太みたいのは、その人だったのかな」 と言ってた。 母がそれを見た時間と、その人が見つかった時間が、 大体一致していたのが不思議。 亡くなった場所は全然違う山なんだけどね。 母はそれ以来暫くの間、夜を非常に怯えるようになって、 心労の所為か何かに障ってしまったのか、 次の日には頬がこける位ゲッソリしてして顔は土気色。 生気を吸い取られたって表現が一番合ってるって、あの時はマジで思った。 2週間位で何とか元に戻ったけどね。 光の筋は、後々母と話しながら地図と照らし合わせたら、 どうやら寺の方からずっと続いていたって事がわかった。 だけど、未だにさっぱり判らない。 寺から川にそって流れていた光の筋はなんだったのか。 その光の筋が集まる宙に浮かぶ白いもやもや、 人が入れない場所に乱立していた看板に寄りかかった人達。 誰か、これが何なのか判る人居ないか?
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