怖い話登録数18393話
恐怖感アップダークモード
(0件)
▼コンテンツには広告が含まれています
✕
背無し
お気に入り
1162
6
1
0
長編5分
コピー
「背無し」の朗読動画を探しています。YouTubeでこの話の朗読動画を見つけたらぜひ投稿していってください。
※YouTubeのURL必須
開始時間
00時間00分00秒
投稿する
会社からの帰路の途中、 ある大学の前を通る。 そこは見晴らしの良いただの直線だが、 何故か事故が多いことで有名だった。 その道をあまり使わない人には分からないだろうが、 毎日車で出勤するオレや同僚には事故の理由は明白だった。 あるおっさんが原因なのだ。 そのおっさんは大学手前の横断歩道の脇に立っている。 それも毎日。 雨の日も昼も夜も、 ただ無表情で突っ立っている。 そして何故か、 カラダごと真っ直ぐこちらに顔を向けているのだ。 おっさんに気付いてからしばらくは、 「気味が悪い人がいるなぁ」程度の認識しかなかった。 しかし更なるおっさんの異常性に気付くのに、 そう時間はかからなかった。 おっさんはカラダごとこちらを向いている。 いつ、どんな時でも。 例えば横断歩道の手前30mからおっさんを認識したとする。 「ああ、今日もいるな。そしてこっち見てる…」 そのまま横断歩道を通過して、 素早くバックミラーでおっさんを確認すると、 やはりこちらにカラダごと顔を向けているのだ。 この異常さが理解出来るだろうか? おっさんはどんな時でも必ず真正面からこちらを見ているのだ。 向きを変える気配すら見せず、 瞬時にこちらを追跡してくる。 それに気付いた時オレは確信した。 あのおっさんは人間ではないのだと。 うすら寒さを感じたオレがそのことを同僚に話してみると、 そいつもおっさんのことを知っていた。 何でも地元では 『背無し』という名称で有名らしい。 確かにおっさんは正面しか見せない。 後頭部や背中は見たことがなかった。 変な霊もいるんだなと、 その日は同僚と笑い合って終わった。 オレがビビりながらも、 ある思いを持ったのはその時だった。 何とかしておっさんの背中が見たい。 そう思うようになったのだ。 毎日通勤しながらおっさんを観察する。 普通に通るだけではダメだ。 おっさんには全く隙が無い。 通過後、バックミラーに目を移す瞬間に おっさんはカラダの向きを変えてしまう。 オレはチャンスを待つことにした。 数日後、 残業で遅くなったオレは深夜の帰路を急いでいた。 そしてあの道に差し掛かる。 目をやると、やはりいた。 おっさんがこちらを向いている。 『背無し』の由来を思い出したオレは、 素早く周りを確認した。 深夜の直線道路。 幸い前後に他の車は無く、 歩行者もいない。 信号は青。 チャンスだった。 横断歩道の手前でぐっと車速を落として ハンドルを固定する。 とにかくゆっくり、真っ直ぐに。 そして心を落ち着け視線を向けた。 おっさんはいつものように無表情でこちらを見ている。 目は何の感情も示しておらず、 本当にただ立っているだけだ。 しかし改めてじっくり見るおっさんは、 いつもより不気味だった。 何を考えているか分からないというか、 得体が知れないのだ。 やがて車はゆっくりと横断歩道を横切っていく。 目線はおっさんから外さない。 怖くても意地で見続けた。 するとオレが目線を切らないから カラダの向きを変える暇が無いのか、 いつも正面からしか見れなかったおっさんの顔の角度が ゆっくりと変わっていく。 車の動きに合わせてゆっくり、ゆっくりと。 おっさんは始めの向きのまま微動だにしない。 ついにおっさんの完全な横顔が見えた時、 「これはいける!」 と確信した。 おっさんから目線を切らないために、 オレも顔の角度を変えなければ行けないため、 今や車の後部ガラスからおっさんを見るような体勢だ。 当然前なんか見えちゃいないが、 気にもしなかった。 もうすぐで『背無し』の由来に打ち勝つことが出来るのだ。 そうしてゆっくりと永い時間が流れ… ついにその瞬間が訪れた。 『背無し』の今まで誰も見たことの無い背中が後頭部が、 今はっきりと見えているのだ。 それはあっけない程に凡庸な背中だった。 何一つ不思議なところは無い。 しかしオレの胸にはささやかな達成感があった。 じっくりと背中を観察し満足感を味わったあと、 オレはようやく目線を切って前を向いた。 いや、向こうとした。 目線を切って前を向こうとしたオレは しかし、あるものを見て固まった。 助手席におっさんがいた。 もの凄い怒りの形相で。 心臓が止まったかと思った。 「うわぁあ!」 オレは悲鳴を上げブレーキを踏んだ。 徐行していたはずの車は 何故か強烈な衝撃とともに電柱に激突し、 オレは失神した。 翌朝、病院で目が覚めたオレは すぐに警察の聴取を受けた。 幸いにオレを除いて怪我人は無し。 オレの車が全損した以外に 大した器物損壊も無かった。 警察は事故の原因を スピードの出し過ぎによる暴走運転と断定したが、 オレは抗議する気力も無かった。 あんなこと話す気すら起きなかった。 あれから5年。 オレは通勤のために 今もあの道を走っている。 おっさんは変わらずいるし、 相変わらず事故も多い。 ただ一つだけ変わったことは、 オレがおっさんの方を見なくなったことだろう。 あの時、聴取の警察官がボソッと言った、 「今回は連れて行かれなかったか」 という言葉が今も耳から離れない。
怖い話を読んでいると霊が寄ってくる?不安な方はこちらがおすすめ
1人が登録しています
感想や考察があればぜひコメントで教えてください ↓コメントする
この話は怖かったですか?
怖かった6
次はこちらの話なんていかがですか
続きを読む
※既読の話はオレンジ色の下線が灰色に変わります
Switch売れ筋
スーパー マリオパーティ ジャンボリー - Switch
ドラゴンクエストIII そして伝説へ…- Switch
大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL - Switch
Minecraft (マインクラフト) - Switch
マリオカート8 デラックス -Switch
世界のアソビ大全51-Switch
前の話:【洒落怖】サカブ
次の話:【洒落怖】シンメトリー
怖い話 No.9488
【洒落怖】瞬間移動?
1102
46
短編1分
怖い話 No.17266
【洒落怖】狐憑き状態
1563
31
怖い話 No.7387
【洒落怖】やまわらす
1057
32
中編3分
怖い話 No.430
【洒落怖】不気味な「場所」
1847
49
怖い話 No.22729
【洒落怖】俺達の神様
1031
22
怖い話 No.21413
【洒落怖】生き物が好き
1315
15
怖い話 No.9560
【洒落怖】存在しない場所
1678
38
短編2分
怖い話 No.8640
【洒落怖】ツッコミ
1920
53
怖い話 No.7988
【洒落怖】訳ありの部屋
1263
44
怖い話 No.7498
【洒落怖】居残り勉強
1286
29
心霊サイト運営者
全国心霊マップ
ghostmap
プロフィール
Twitter
新着洒落怖
留守番電話
舞台学科による演劇
分譲現場
謎の会話
たけのこ掘り
かんのけ坂
4階のベランダから落ちた友人
林間学校で登山
自転車に乗っている夢
雄別炭鉱
運動会?
坪の内
新着コメント
袋叩き
ペイント
ばあちゃんの人形
呪いのエノキ人形
ラフレシアを求めて
読書家
拍子抜け
水泳部はほとんどが女子
自称犯人