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見える人見えない人
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俺の会社に、モデルみたいな凄い美人がいる。仮にA子とするが、なんてゆうかいわゆる典型的なそういう女で、男受けはいいが同性からは陰で嫌われてる。でこのA子が、中途採用で入社した若い男(B)を相当気に入ったみたいで、猛烈にアタックしてた。A子の本性を知っている俺ら会社の古株は、「あぁ、次はこいつか」ぐらいの感じで見て見ぬふり。若い男性社員は、僻み満載のバチバチ目線で睨みつけてる奴もいたが。 女性社員はというと、若い独身の男性社員が少ないのと、そのBが結構男前だった事もあって、「お前も結局A子かよ!?」みたいな感じでふてくされてた。Bは最初A子を避けてる感じだったが、猛烈なA子のアピールに次第に心を開いて、お互いの顔見りゃ満面の笑みをこぼす様になってた。もう、会社の中で二人だけの世界ってゆうか…その内A子は好き放題うちの部署に出入りして、業務中にも関わらずBに『かまってちゃん』をし出す始末。しかし、A子が上層部の人間と関係を持っていたのと、BがA子をたしなめつつ誰よりも仕事をしていた為、文句を言える者もおらず、そんな日々が続いていた。ところがある日、A子が急にBを避ける様になって、更には怯え出すようになった。最初は、A子の悪事がばれてBに振られたのか?とか思ってたが、一度凄い剣幕でBがA子を怒ってたのを見てから、普段チヤホヤされてるお姫様のA子は、あんなにきつく言われたらそら怯えるわなぁ…と、勝手に自分の中で解釈してた。しかしA子の怯え方が尋常じゃないので、「あんなに仲良かったのにどうした?最近は、社員のメンタルヘルスとかでうるさいんだよ。ヤボかもしれんが、話せる所まで話してくれよ」と、一応上司として聞いて見た。Bは、苦虫を噛み潰した様な顔をしながらこう言った。「A子が『自分には霊感があるのか、幽霊が見えて困っている』と言い出したんです」もう俺ポカーン。基本的に不可知論者というか、そういった存在はあまり信じて無かったので、A子はそんな電波なとんでもちゃんだったのか!?そう心の中で叫びながら、「お前にかまって欲しくて付いたカワイイ嘘じゃないのか?私を見て~っていう子だろあの子は」と、さも経験豊富な上司を演じて語ってみるも、そんな俺を流してBは続けた。「ちょっと前からそれでうんざりしてたんです。ところがある日、僕が残業してたら、A子が突然会社に来て…」『ここに小さい男の子いるでしょ!?ほら、○○課長の机の上!髪長い女の人!!』ってな具合に、会社のどこそこに幽霊がいると説明し出したらしい。「さすがにそれは引くわなぁ。お前には見えたのか?」そう聞いた俺に、Bは軽く首を振った。「見えるはずないでしょ、そんなもん。一度だって見た事ないですよ」そう言い放つBを見て、やっぱりこいつもそういうの信じて無いタチか、そんな感じだもんな、と思い、「そらそうだな…まぁ、なんだ。またなんか困った事あったら相談乗るからよ、しばらく放っとけよ」と当たり障り無いアドバイスだけして、その日は帰った。そこからしばらくは、二人とも気に掛けて見ていたんだが、変わった様子も無くて、Bが愛想尽かしたんだろうと思ってた。パタリとA子はうちの部署に姿を見せなくなったし、他の男には相変わらず愛想振り撒いてたんで、もう大丈夫だろうと胸を撫でおろした。Bの直属の上司は一応俺なので、正直、立場上A子の存在は厄介だった。実際周りの社員にも悪影響がで出していたし、一時期A子の上司であった事もあって、少なからず頭を抱えていた。そんな折、社員の一人が「週末にカラオケに行こう」と言いだし、部署の人間が乗ったので、付き合いで俺もBも同行した。しばらくは普通に楽しんでいたのだが、中盤からBが頻繁にトイレに立つ様になった。気になった俺は後をつけると、別の階でBが電話していた。怒鳴ったり、諭したり。間違いなく相手はA子だろうと思った。途中俺の存在に気付いて、Bは「また、電話する」と言って電話を切った。「A子か?どうした?」「……………」「大丈夫なのか?」本気で心配になって来た俺は、Bを無理矢理引き連れてカラオケの場を中抜けした。「係長…すんません。ちょっとヤバイかもしれないです。なんか会社にいるみたいで」「とりあえず行った方がいいんじゃないか?あの子追い込まれると結構弱いぞ」俺は急に寒気がして、A子がリストカットでもしてるんじゃないかと心配になった。何か修羅場的な感じで若干興奮してたのかもしれんが、とにかくタクシーを捕まえてBと一緒に会社に向かった。道中、「最近の若い子は何をするかわからん」と、わけのわからん事をほざきながら、もし首でも吊ってたら課長にどう説明しようなどと、リーマン丸出しの考えを張り巡らせる俺だったが、Bは終始無言だった。会社に着いて、守衛のおっさんに訳を話したが、守衛のおっさんは「女の子なんか見て無い」と言う。とにかく俺は微妙な係長権限で、守衛のおっさんとBを引き連れてうちの部署に走った。扉を開けると、A子が尋常じゃ無いぐらい震えて立っていた。「おいA子、お前こんな時間に会社で何してんだ?」問いかける俺に対して、A子は泣きながら「わかりません」とだけ答えた。茫然と立ち尽くしていると、Bが「なにしてんねん。もうええやろ。カラオケ行こうや」と急にA子に話し掛けた。A子は「ここから出れない。無理!ほんと無理!」と、ばかでかい声で叫び出した。「見えてるもん!!いるもん!!私の足引っ張って、『連れて行く』ってずっと言ってる!!」もうほとんど狂乱状態で叫びつづけるA子に俺失禁寸前。守衛のおっさん唖然、茫然。「無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理ぃ~!!!!!!!!!!!!」もうねオカルト。初めて見たよ人が壊れる瞬間。「わかっとるはボケ」Bがまた急に口を開いた。ん?何言ってるのこの子は?わかってる?何が?「係長、心経唱えられます?」ん?俺?シンキョウ?般若心境?無理、無理。何言ってるのこの子?「いや、無理っす」何故か微妙な敬語で答える俺。守衛のおっさんが急に「真言宗でもええか!?」と、興奮気味に言いだした。「上出来」そう言うとBは、つかつかと泣き叫ぶA子によって行くと抱きしめて、「わかってる、わかってる。見えへんと思い込ませた方が、思い込みで見えてると思わせた方が良いと思ったんや。ごめんな」と言うと、ブツブツと呪文のような物を唱え始めた。その間ずっと、守衛のおっさんはお経を唱えてた。しばらくして、Bが「もう大丈夫」と言うと、A子がワーワー泣き崩れた。パニック通り越してドッキリを仕掛けられてると思う事にした俺は、ただ立ち尽くしていた。Bは「また、きちんとご説明します」と言うと、A子を抱えて出て行った。俺は急いで後を追いかけて、タクシー呼んで、BとA子を乗せて見送った。守衛のおっさんはボソっと、「たまにあるんだよね。ここ(会社)多いからさ、そういうの。どっかで取り憑かれたんだろうなあの子」そういうと、さっさと引っこんでしまった。なんか目の前で起こった事を理解出来ずに、俺は一人歩いて帰宅した。後から聞いた話だが、Bはいわゆる『見える人』で、A子は行方知らずの水子が二人程いたらしい。その関係かしらんが、子供の霊に取り憑かれてしまっていて、Bはわかっていたが、基本的に浄霊する様な力は無いので、A子が気にしない様に仕向けたが、A子自身が水子の事を深く思い出してしまったので、完全にやばい状態になったと。「たまたまあの時はうまく行っただけ」との事らしい。Bは人の厄を被って人を護る家系の出らしく、「今回も恐らくそういった関係で、A子と引き合わされたのだろう」と言っていた。しかし、A子の事を本気で好きになってしまったので、A子の人生や悪事を心の底から許す事が出来ず、ここまで事態が悪化した。「恐らく本当に助ける事は出来ないと思う」と語った。しばらくしてBは急に退社した。A子は、Bが退社してからうつ病にかかり結局退社してしまった。その後は音沙汰無いが、マジで怖かったし、どうにも後味が悪い…あの二人はどうしているのかわからない。
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