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霊道
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友人の話。 そいつはこの話を、 「絶対に人に言うなよ」 の前提で教えてくれたが、 俺に話すと言う事は、 言っても良いって事なんだなと解釈したので、 書き込みます。 その友人をAとする。 Aの友人にBという奴がいた。 と言っても、 2人が会ったのはつい数年前で、 俺も2、3回会った事があるだけで、 直接喋った事は無かった。 Bはなんつーか、 陰気な雰囲気を持っていた。 そもそもこの話を聞いたのも、 『カイジ』という漫画に今出ている、 カジノの社長?の顔がそいつにそっくりで、 その事を友人に電話したのがきっかけだった。 ある時期Aは、 Bと桃鉄が原因でちょっとした喧嘩をしてしまった。 それからしばらくはなんとなく気まずくて、 会う事は無かったそうだ。 そんなある日、 Bから電話がかかって来た。 『今から家に来ないか?』 と。 Aは胸のつかえが取れたと喜んで、 そいつの家に行った。 ドアをノックして中に入ると真っ暗。 「こっちだ、こっち」 のBの声に誘われて部屋に入る。 その部屋も、 何本かのローソクの明かりのみ。 Aは 「どゆ事?」 と聞くと、 「今停電してるんだよ。まあそこに座りなって」。 「ああそうか」 とAが座った瞬間、 「ポンッ」と回りの何本かのロウソクが、 音を立てて消えたそうだ。 「うわっ」 と驚くAの目の前で、 BがAめがけてロウソクを吹き消した。 次の瞬間、 見えない何かが背中にズンと乗っかって来た後、 グニュウといった感じで、 自分の中に入り込んで来た感触があった。 そんな感覚に驚きながらも、 「危なねーな、テメーはよー」 ムッとしてAが言うと、 Bは部屋の電気を付けて、 ニヤニヤ笑いながら 「馬鹿じゃねーの?お前」 と態度が急変。 Aは 「はぁ?」 と聞くと、Bは 「今の儀式でお前に貧乏神がついたよ。 いやあ、苦労したよ。 こいつをこの部屋に連れて来てさあ、 この部屋に閉じ込めるのは」 Aは急激に腹が立ってBをぶん殴った。 そして 「俺にいったい何をしたんだ!」 と怒鳴ると、 Bは鼻血をだしながら、 「言ったろうがよ! オメーに霊をとりつかせたんだよ! オメーが土下座したら許してやんよ! オラ、さっさとしろクズが!」 と狂ったように叫ぶ。 「っの野郎・・!」 と、またAはBを殴った。 何度も、何度も。 しかし、Bの態度は変わらない。 Aは最後に、 近くにあったPS2を思いきりBに投げ付けて、 家に帰った。 その日から夜中の3時近くになると、 頭痛と耳鳴り、 そして気持ちが悪くなり何度も吐く、 といった日々が続いた。 医者に行っても原因不明。 薬を飲んでもまったく効かないそうだ。 Bの家に行っても誰もいない。 毎晩の吐き気で眠れないAは、 軽いノイローゼになったらしい。 「その時書いた日記もさ、訳わかんねえんだよ」 と俺に言ったので、 是非にとAの家で見せてもらった。 書き込むネタ発見!と、 「この日記帳少し貸してくれ」 とお願いしたのだが、 「お前に貸したら何されるかわからん」 と固く断られた。 ならばと、 Aが買い物に行っている隙に、 何ページかをスキャンして自分宛にメールで送信してやった。 日記帳には、 次のような事が書かれていた。 『○月○日 あたり(←天気を記載する場所に書かれていた) 今日からめんそ、げら、眠ることはやしけどそんあのばかりだな。 恒久の平和崇高ゆうこさんからせんべいさんえび。。。。 *****(読めない) あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あああがあああがっがああがああ?あ? むいりむりやっぱり「なあそうだったか」だらーうぜーくう*****』 『あかい月あかい日 やり ないふそらからびばああばば、痛いいたいい、やりたいちんこむくむくぴんぽ、 天井からひこうきりちゃくりく、いたい頭痛い、しにてえ恐いけどしにてえ、 はらがあついまなみふぃなまふしとととととととと』 『きつ月山日 板色 たすけてみてるみてるみてるみてるみえい、あっ8たこそおかしくりはらえんが骨が出現みてない、 むけてもむけてもだらだら流れりしてらんあい』 本当に訳わからん。 そして 「このままじゃマズイ」 と思ったAは、 友人Cに相談した。 Cは結構有名な神社の息子で霊感がある。 因にその神社には、 名のあるミュージシャンなどが祈願にやって来るそうだ。 『電話じゃ何だから』 と、Cは直接Aに会った。 Aを見るなり、 「ああ・・、嫌な感じがするな、お前」 とCは言った。 「どうすればいいのかな?」 とAが聞くと、Cは 「取りあえず、そのBの家に案内してくれ」。 そして2人はBの家に。 相変わらず人の気配は無い。 郵便受けには、 広告や手紙がつまっている。 「んー・・」 とCは唸った後に、 「今から行くか」 と、CはAを自分の車に乗せた。 「どこに行くの」 聞くAに、Cはタオルを渡して、 「それで目隠ししてくれ」 と言う。 「え?何で?」 「いいから俺を信じろって。 助けてやるからさ。 着いたら起こしてやるし、しばらく寝てろ」 とCが言ったので、 「じゃあ、そうするか」 と、Aはタオルで目隠しをして、 後ろの座席で横になった。 横になり目を閉じて車に乗っていると、 なぜか子供の頃を思い出して、 懐かしい気分になった。 車は左右に曲ったり 砂利の上を走ったり・・・ しばらくすると、 Cは携帯で何所かに電話をしている。 「今から行くから、ああ・・」 その内Aは、 妙な安心感からか眠ってしまった。 「おーい、着いたぞー」 その声でAは目覚めた。 反射的に目隠しを取ろうとするAを、Cは 「まだ取るなって!」 と止めた。 そのまま出たAは、 何人かの人に腕を取られながら、 何所かへと連れて行かれた。 砂利の上を歩いているのが、 足の感触でわかった。 途中から靴を脱がされて、 建物の中に入って行く。 「久しぶり」 と言うCの声と、 「ああ、この子か」 と低い誰かの声。 しばらく行くと、 「着いたから座って」 とCに言われ、その場に座った。 床が冷たかった。 何かお香のような匂いがする。 が、妙に落ち着き、 そしてなぜか、泣きそうになる匂いだった。 「目隠し取るぞ」 とCが言って、タオルが外された。 暗い、何本かのロウソク。 まるであの時の、 Bの部屋のようだった。 上を見ると、 かなり高い天井から、 何本かのロープがぶら下がっている。 部屋の四隅にもロープやお札。 目が馴れず上手く見えないので、 目を細めてジッと見つめようとすると、 「こんばんは」 と低い声。 見ると、 誰かが自分の前方に座っている。 見た目はヤクザ。 その人は立ち上がりAに近付いて、 「そのまま」 と、Aの目を親指でアカンベーするように、 目の下の皮を引っ張った。 そしてAの目をジッと見た後、 「可哀想になぁ、今迄つらかったろ、 よく頑張ったな」 と優しく言った。 心身とも疲れていたAは、 その言葉を聞いてボロボロと泣いてしまった。 「うん、それでいい。 とりあえず、無理に泣き止もうとせんで、 力を抜いて感情に身をまかせりゃええでな」 と、Aが泣き止む迄ジッと待っていた。 Aが泣き止むと、 「息子から大体の事は聞いたが、 君の言葉でもう一度、 その時の状況を事細かに教えてくれんかね?」 というので、Aはそれに答えた。 するとその人は、 「やはりな。お前さんに憑いとる霊は、 ここにいてはいけない霊だでな、 それはなあ、いわゆる自縛霊というもので、 本来は人で無く場所に憑く霊なんだよ。 だが君の友人があるやり方したもんで、 自縛霊を憑いていた場所から引き剥がして、 君の体を霊の憑く場所にしてしまったんだ。 今から引き剥がすで、力抜いてそのままでな」 と、Aの後ろに回って、 砂のようなものを首に擦り付けた。 その後、お経のようなものを唱えながら、 シャンシャンと鈴の様なものを鳴らしはじめた。 Aの体は一定の間隔で、 ブルルッ、ブルルッ、と震えたそうだ。 その内頭がクラクラし、 意識がもうろうとする。 最後に体が立ち上がる程ブルルルッと震え、 何かが自分の体から抜けて行った。 その後、そのまま車に乗せられて帰る事に。 頭はボーッとしたままだ。 だが今度は目隠しは無し。 「悪かったな、目隠ししちまって。 あーゆーのはさ、 場所とかの先入観無い方が成功しやすいからさ」 と、遠くで聞こえるCの声を聞きながら、 Aは眠ってしまった。 気が付くと家の前。 Cに起こされ目が覚めた。 外はすっかり夜になっている。 Cは 「今日は俺が一緒に泊まるよ」 と、デカイ荷物と共にAの家に上がり込んだ。 そして家の中をウロウロした後、 Aの家の見取り図を紙に書いて、 「FAXある?」 と聞いたので 「無い」 と答えると、 「それじゃあ」 とCはコンビニへ行き、 FAXをした。 AはCに、 「何が始まるの? 俺はもう大丈夫なんだよね?」 と聞くとCは、 「まだ終わって無いよ。 きっとその内引き剥がされた霊が、 お前の所に戻って来る可能性がある。 これからその対策をするのだ」 と答える。 するとCの携帯に電話が。 どうやらCの父かららしい。 CはAの家の見取り図を見ながら、 「うん・・・そう、そっちが北ね。 ああ、やっぱりこのルートね」 と、ひとしきり喋った後電話を切り、 「今から、帰って来る霊を追い返す処置をするから手伝ってくれ。 あ・・・鏡が無いや。 Aの家って、全身が映る鏡ある?」 「いや、無いよ」 「じゃ、買いに行くぞ」 そして、 近くのロヂャースで全身が映る姿見を買い、 家に帰る。 Aの家の見取り図を見せて、 「お前の家のここ。 ここが霊道になってるのよ。 霊道ってのはさ、 もしお前の家に霊がやって来るとすんだろ? その場合、霊が通る場所ってのがあるんだよ。 それが霊道ね。 いまからその道に障害物とかを置いて、 通行止めにするんだよ」 どうやらA宅の霊道は、 玄関から入り真直ぐ廊下を突き抜けて、 外に出るルートらしい。 「最良のルートだ」 とCは言った。 そして、 持って来た荷物の中から色々取り出した。 廊下の端に、 祭壇の様なものと日本酒の入ったコップ。 廊下を塞ぐような形で姿見を置いた。 何でもこうする事により、 玄関から入って来た霊に、 鏡に映った自分を見て死んでいる事を気付かせる。 また、鏡には色んなものを反射する力があるので、 鏡にぶつかった霊は、 鏡に跳ね返されて戻って行ってしまうらしい。 「これを何日か続ければ、 霊は消えるか他の場所に行ってしまう」 とCは言う。 その夜、 Cは色んな事を教えてくれた。 Aを連れて行った場所がCの実家で、 Aの除霊をしてくれたのがCの父であった事。 Bの家は安易な行動の為に、 関係ない霊までが集まってしまっているのだが、 恐らく間違った結界を貼ってしまった為に、 霊達があの場所から出るに出れない状況。 それに耐えられず、 Bはあの家にいられなくなった。 または、死んでいるだろうと。 結局、その夜は何も起こらなかった。 Aは久しぶりにまともに眠れた。 次に日、 Aにお礼を言われたCはそのまま仕事に行き、 Aはバイトに行った。 その際Cは、 いくつかAに注意をしていった。 「日本酒は毎日取り替える事」 「鏡は出来れば動かさない事。 特に夜は、絶対にあの場所に置いておく事」 「出来れば塩も盛っておく事」等。 その事をAはキチンと守った。 そして何日後の夜、 Aはある物音で目が覚めた。 耳をすまして聞くと、 ミシッ、ミシッ、と何者かが廊下を歩いている。 帰って来やがった! そう思いジッとしていると、 「ガン、ガシャーン!」 と、何かが落ちる音が。 「うわー」 と震えていると、 何時の間にか物音は消えてしまった。 朝廊下に出てみると、 廊下の脇に置いてある洗濯機の上の物が、 廊下に散らばっていた。 その日、 AとCはファミレスで会う。 Aが昨晩の事を話すと、 「ああ、そりゃあ、霊の奴がムシャクシャしてやったんだよ」 Cは笑いながら言った。 「やな霊だな、オイ」 「ま、そんだけ効果があるって事だからね。 出来るだけ廊下付近には、余計な物置かないこった」 とCは言って帰っていった。 さっそく廊下付近の物を無くした。 やがて廊下を歩く音にも馴れ、 朝起きて夜ぐっすり眠るという普通の生活を取り戻し、 ついに霊は現れなくなった。 CもAの家に来て、 「これならもう大丈夫。御苦労様でした」 と、事件の終わりを告げた。 しかし、こうなると気掛かりなのはBの行方。 Cに聞いても、 「別に知ったこっちゃ無ぇんじゃね? まあ、死んだ所で自業自得だしな」 と、全然気にしていない。 まあ、CとBは直接会った事も無いので、 そんなもんなんだろう。 数日後、 AとBの共通の友人Dから、 Bの事を聞いた。 Cの言う通り、 Bはあの後すぐ実家に帰って、 そこで暮らしていたそうだ。 その数日後の夜、 2階の部屋で寝ていたBを、 Bの父が包丁でメッタ突きにして殺してしまったそうだ。 その後、 父は2階から飛び下りて骨を骨折。 しかも、その時の事は覚えて無いらしい。 ただ、奥さんの話だと、 その夜は何か父の様子がおかしかったそうだ。 「この世ではない物に腕を舐められた」 と、訳のわからん事を言っていたそうだ。
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