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じじい狩り
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石じじいのはなしです。じじいが昔話をしてくれていたとき、唐突に言いました。「おっちゃんは、狩られたことがあるんよ」?と思いました。当時は、「オヤジ狩り」という言葉はなく(そのような行為はありましたが)、すぐには理解できませんでした。じじい曰く、「山に登っとったときにのう、銃で撃たれたんよ。あれにはまいったい」 それは単に猟師による誤射や悪戯ではないか?と思ったのですが、彼の遭遇した「狩り」は以下のものでした。じじいが山道を歩いていたとき、突然銃声がして、近くの樹木の幹に跳弾したそうです。兵役経験のあるじじいは、すぐにこれは銃撃だ!と気がつき身を伏せました。すると二発目が。一発目よりも彼の近くに着弾しました。じじいは背負っていたザックを捨て、金属のバールだけを持って、ほふく前進で低木の生い茂った道の脇を移動しました。さすが元大日本帝国陸軍衛生兵。ほふく前進は得意です。もといた場所から10メートルくらい離れたときに、彼の近くの地面に銃声とともに着弾しました。射撃者はじじいの位置を知っているかのようだったと。身の危険をひしひしと感じ、彼はどんどん進んで、そして意を決して立ち上がって山道を走り始めました。そこに、さらに至近距離に一発銃弾が。5分ほど全力で走って、息が上がったじじいは道路際の茂みに身を隠しました。すると、目の前の道の上に一発着弾。ここでじじいは、おかしい!と気がつきました。銃撃は道の山側、山のほうから行われています。そこには道がないのに、じじいに追いすがって、おくれることなく正確に撃ってくる。じじいは少し死を覚悟したそうです。そのまま彼は道から離れて山の斜面を這いながら下って、大きな樹木に身を隠しました。夜を待ったのです。その日の夜は闇夜だったそうですが、それに乗じて彼は森のなかを這いずって山をくだりました。「生きたここちがせんかったわい」進んでは潜みを繰り返しながら薄明るくなってきた時に、山道にでました。その道をおそるおそる下っていると、道の地面に銃の薬莢が散らばっていたそうです。じじいは怖くなって、その薬莢の一つを急いで拾ってポケットにしまうと、また必死で走って里までくだりました。それ以降は撃ってはこなかったそうです。
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