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トラックの運転手
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昼間の話です。 ちょっとした用事があり、 自宅から1時間程離れた埼玉県の川越市に、 バイクで出掛けました。 風も無く、とても良い天気でしたので、 気分よく走ることができました。 ところが、目的地に着く間近で、 ちょっと道に迷ってしまったのです。 まあ、道に迷ったと言っても市街地ですし、 大まかな土地鑑はありましたので、 適当に走っていれば近くに行けるだろうと、 のんびり走っていました。 10分程走った所、 狭い道(車がぎりぎりすれ違える位)に出ました。 道が狭いのですが、割と交通量があり、 ちょうど地元の人が使う抜け道のようです。 その道の途中で赤信号に引っかかりました。 信号待ちの車の列は約10台。 すり抜けて列の先頭に出るには道幅が狭く、 私のバイクは列の最後尾で停止しました。 停止車両の列の中程、 5台目付近に佐川急便のトラックがいました。 今から思うと不思議なのですが、 そのトラックが目に入った時、 一瞬、嫌な胸騒ぎがしました。 信号が青に変わり、 先頭の車から順々に発進して行きます。 青信号の間隔が短そうだったので、 もう一回信号待ちかなと思いつつ、 前の車が発進するのを待っていました。 その時、おかしなことが起こりました。 佐川急便のトラックが、 前の車が発進したにもかかわらず全く動かないのです。 はじめは、 ぼーっとしてるな位に思っていましたが、 1分、2分たっても動きません。 今から思うと不思議なのですが、 後ろで待っている車もクラクションひとつ鳴らさず、 おとなしく待っているのです。 とうとう前方の信号がまた赤になってしまいました。 佐川急便のトラックの前には、 自動車4台分のスペースが空いたままです。 もしかしてあのトラックのドライバーは、 車をあそこに止めて、 何処かに荷物を届けに行ってるのかも知れない。 それに、いつまでもここで待っている訳にも行かないし。 そう思った私は、 対向車が来ないことを確認し、 対向車線にはみ出しながら車の列を抜きにかかりました。 たいした距離でもないので、 ゆっくりと一台ずつ抜いていきます。 一番最後に、 問題の佐川急便のトラックの所にさしかかりました。 気になったので、 トラックの運転席をひょいと覗き込みました。 「うわーっ!!」 思わず叫んでいました。 その時私の姿を見たら、 バイクに乗ったまま20センチ位、 本当にのけぞっていたと思います。 「死んでる…」 無人と思っていたトラックの運転席に、 ドライバーはいたのです。 両手をハンドルとダッシュボードに投げ出し、 上半身を突っ伏していました。 顔はハンドルにもたれたまま、 私の方を向いています。 詳しく調べた訳でもないのに、 死んでいると思ったのは無理もありません。 顔面は真っ白で、 両目とも白目をむいてます。 口は開いたまま、 舌がはみ出していました。 目に見える血液や外傷はなかったので、 ちょうど今、心臓発作で死んでしまったように見えます。 日曜日の真昼間に、 まさかこんな光景を見るとは夢にも思わなかったので、 0.5秒位、 本当に頭の中が真っ白になりました。 とはいうものの、 何とか自分を取り戻し、 ようやく回り始めた頭で考えました。 心臓発作かなんかかな。 こういうことってあるんだな。 とにかく後ろの車のドライバーに知らせて、 救急車とパトカーを呼ばないと。 とにかくトラックの前に出て、 バイクを路肩に止めました。 改めて後ろを振り返った時、 「えっ…」 私は、自分の気が変になったのではと、 本気で思いました。 佐川急便のトラックが、 何事もなかったかのように動き始めているのです。 フロントガラス越しに見えるドライバーは、 先程のドライバーと同一人物ですが、 表情はいたって普通の元気なお兄ちゃんなのです。 呆然とバイクの脇に立ち尽くす私の横を、 佐川急便のトラックを先頭に、 これまで止まっていた車が次々と走り去っていきます。 以上でこの話は終わりです。 これは一体何だったのでしょうか? こちらを向いている凄絶な死顔が、 今でも頭から離れないのです。
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名無し
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