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ボリ
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これは小学校6年生の頃の話 俺の田舎で起こった出来事です その村には、 大人から入るなと言われている神社がありました 理由を聞いても答えてはくれません 俺らは怖い物知らずでバカだったんで まーなにもないと高をくくり、 夜に肝試しをすることにしました 俺と村の子供4人 ガキ大将のA、 Aに無理矢理連れてこられた怖がりのB、 Aの弟のC、 寺の息子で霊感があるDです 鳥居を超えたあたりから、 Dは止めようと言い出しましたが ほかの3人は何ともなかったので、 さくさく進みました 道の一番奥まで進むと、 獣道みたいな切れ目がありました 「おい、なんかやばいな」 ここまで来ると、 嫌な雰囲気を全員が感じたようです しかしAは無理矢理にでも行こうとしました 僕らは皆で止めたのですが、 先が気になるAに引きずられる形で進みました 獣道を超えると、 そこは鎮守の森の中にぽっかりと開いた空間でした 8畳ほどの広さで、 平たい岩が敷き詰められていました 石畳・・・ いや、舗装といえるほどのものではなく、 アンコールワットみたいに自然と同化していました 所々苔が生えた石の隙間から 無造作に雑草が伸びています よくみると、 石造りのほこらのようなものが奥の方に見えました 周囲と同化しており、 暗がりでは目立たないのですが 何故か異様な存在感を放っておりました 「おい、やばい気がするぞ」 とDが言いました さすがにAも怖気づいていましたが 「ここまで来て調べずに戻れねーだろ」 と言って、 ほこらに近寄りました ほこらは俺らの背丈と同じくらいで、 大きなものではありません 遠目には天然石を寄せ集めて作ったように見えたのですが 近くでみると赤茶けたぼろい木戸が付いていました 観音開きの戸で 中央に木の錠前が付いていました 錠前はにかわの様なもので固定されておりました 「あけてみようぜ」 Aはそう言いました 錠前は子供の力でも簡単に外せそうですが 皆はあまり乗り気ではありませんでした そんな空気を無視して、 Aは錠前に手を掛けました にかわらしきものが、 ばりばりと剥がれる音とともに それはあっけなく外れました 戸を開けると、 中にはさらに小さな祭壇があり 中央に石で出来た置物がありました 一見すると牛のような外見ですが、 何の動物か分かりません 大きさはアルミ缶ほどです 胴と頭、角か耳か分からない突起が頭上にふたつ 全体的に角がなく丸っこい、 子供が粘土で作ったような感じです Aは 「なんだこれ、大したことないや」 といって 置物を手に取りました Aは皆にも手渡そうとしましたが、 気味が悪いので持ちたがる人はいませんでした 「うあ・・・」 Bが祭壇の中をのぞいて言いました 視線を祭壇の中に移すと・・・ 石の置物が置いてあった下には、 魔方陣のような物があったのです 円の中に筆で描かれた呪文のような文字がありました 直感的に、 置物を封印してあるものだと思いました 「兄ちゃん!やばいから戻そうぜ、それ!」 弟のCはAに言いました Aもさすがにヤバいと思ったのか 「お、おう、そろそろ戻すわ」 と置物を戻しました 翌日、 Aが夜中のうちに失踪したと 村中大騒ぎになりました 前日に一緒にいた俺たちは、 当然事情を聴かれまして 神社での出来事を全て話しました 「あれを開けたのか!ばかたれ!」 村の爺さんに怒鳴られました 真剣な顔で 「あれ」について語り始めました 「あれ」つまり石の置物は、 何らかの呪物だそうです 何時からあるか、 正確なことは不明ですが、 少なくとも江戸時代にはあったらしい 神主が代々管理しており、 村の人間は誰も近付かない物だそうです 置物は「ボリ」と呼ばれるもので 子供が触ると、 体が重く感じて自ら動けなくなるそうです 不思議なことに、 見ると触りたくなることもあり、 危険なので結界に封じていたと言います 「Aはボリに魅入られたのかもしれない」 村の爺さんはそう言いました しばらくすると、 Aが神社の境内で発見されたと連絡がありました 奇妙なことに、 Aは自分から体を動かすことが出来ないと言います 爺さんの話と一致するので、 皆は恐ろしくなりました Aは病院に運ばれました しばらく入院していましたが、 動けない原因は全く分かりませんでした 一向に良くなる気配もありません 呪いなんて信じがたい話ですが・・・ Aの両親は、 ボリを管理する神主に相談しました 皆もAが心配なので、 神社まで付いていきました 「事情は分かりましたが、 どうなるか分かりませんよ」 神主は神妙な面持ちで言いました Aは神社の中に運ばれて、 お祓いを受けました 神社の中は狭いし、 お祓いは危険だというので お祓いの様子は子供にみせてくれませんでした しばらく待っていると、 Aと神主とAの両親が神社から出てきました Aは自力で歩いているので、 何とかお祓いは成功したようです その後しばらくは、 Aは足が重く感じられたそうで 走ることが出来るまで数週間掛かったそうです 幸い、後遺症もなく Aは回復しましたが 「触っていた時間が長ければ、 再び動くことは出来なかったかもしれない」 「Aはおそらくボリに呼ばれたのだろう」 「再びボリを触らせるために・・・」 神主はそのように語っていました ボリとは何なのか? 誰が何のために作ったのか? いつからそこにあるのか? いつまで力を持ち続けるのか? いつまで封じる必要があるのか? 今となっては誰も知りません ただ、 強力な呪物だということは、 間違いないようです これが私の体験した不思議で恐ろしい話です
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