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幽霊団地
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どの世代にも共通することだと思うんだけど、 ガキってオカルティックなこと大好きだよな。 何でだろう。 俺にも軽い肝試しやらまじない紛いのことやら、 休み時間の度にやってたアフォな時期があったんだが、 その頃に起こった俺的にほん怖な話。 当時、俺はすごい目立ちたがり屋で、 馬鹿やっては笑い取ろうとしたり、劇とかやらされる度に主役狙ったり、 とにかくテンションが高かった。そんな小学3年生www 女子の間でオカルトが流行りはじめた頃、 友人引き連れてベートーベンの絵とか、 女子トイレとか見に行ったのは憶えてるんだが、 いつからか俺は「霊感がある」と自称するようになってた。 きっかけは憶えてない。 ただ単に目立ちたかっただけだと思う。 朝礼中に 「教頭の後ろに白い女が立ってる!」 とか言って楽しんでたwwwアフォスwww そんな折、常々噂になってた幽霊団地に数人で行くことになった。 結構な大人数で計画してたんだが、実際に行ける奴は結局5,6人。 確か、女子2,3人、男子3人。 人数曖昧ですまん。 女子は普段から中心になって騒いでた子達で、 男子は俺と、俺みたいなアフォもう1人と、 あと何で誘ったのかも憶えてない地味な奴だった。 そこはちゃんと人は住んでたんだけど、 コンクリートには蔦が這ってて柵とかも錆びてるし、 まさに出ますって雰囲気だった。 でも『出る』って話だけで、 具体的にどこがヤバいとかは聞いてなかったんだよな。 ガキだったから、珍しいことしてるってだけで興奮してたんだと思う。 よって計画性ゼロwww とりあえず、 「入って、階段でも上ってみよう!」 ってなった。 階段といっても、普段住んでる人が使う団地の中心にある奴じゃなくて、 端についてた非常用の鉄筋造りの奴。 住人に見つかったらヤバいと子供心にも思ったのか。 何階建てだったかは憶えてないが、真ん中あたりまできたあたりで、 カン、カン、カンって、鉄の手すり叩くような音が聞こえてきた。 俺は別に怖いとも何とも思わなかったんだけど、誰も音につっこまないから、 踊り場に来たところで、リズムにノって「ポリンキー♪ポリンキー♪」とか踊りはじめた。 周りはたぶん『いつもの馬鹿』って感じだったんだろうけど、 地味男だけは反応が違った。 地味男「何やってんの?」 俺「踊ってんだよ。何も起こらねーし、つまんないよなー」 地味男「音、聞こえてる?」 俺「?だから踊ってるんじゃん」 そういう会話してたら、他の奴らが「音?何?」みたいにざわついた。 そしたら女子が盛り上がりはじめて、俺質問攻め。 女子「え、俺君何か聞こえるの?見える?」 俺「え?え?」 女子「見えてるんでしょ!?何?教えてよ」 俺「え?え?」 その間もずっと、カン、カン、カンって音は聞こえてた。 俺も最初は、 「誰か手すり叩いてるじゃーん」 とか呑気に言ったのが、 マジで聞こえてないらしいってのと、 女子の「教えて」の熱狂ぶりに押されて、さすがにビビりはじめた。 そこでいきなりアフォ男が、 「ああああああああああああああああああああああ!」 って絶叫した。 そしてものすごい勢いで階段下りて行ったもんだから、 その場にいた全員一瞬硬直して、同じく叫びながら駆け下りていった。 一同落ち着いたところで、その日は解散。 でも帰るのも怖くて、地味男と一緒にうろうろしてた。 アフォ男は走りすぎてどこかへ行った。 正直、地味男はすごい無口だったもんで、話題も続かず楽しくなかった。 だけど帰り際に、 「聞こえてたんだよな?」 って聞いたら、 「大丈夫だよ」 って返してくれたのがすげー安心して、嬉しかったのを憶えてる。 それからいきなり仲良くなった訳ではないが、 何か秘密を共有wみたいな感じで仲間意識が芽生えた。 学校でも地味男とはちょくちょく話すようになり、そこからは腐れ縁。 地味男は中学辺りからいきなりモテだして、 今ではあいつの方が数倍リア充です。 まあ、これで終わればよかったんだけど、 後日、一緒に行った女子とアフォ男が、 「変な音が聞こえるんだけど」 って言いはじめたのには参った。 しかも、俺が霊感あると思われてるから、 「助けてよ」 とか縋られるし…… 当の俺は、親にべったりくっついて寝てたりというビビり様w 「相手が強いから、とりあえず拝んでおくけど、効果あるかはわからない」 と、適当なことを言ってかわしていた。 これ以上関わりたくなかった、というのが本音…… そしてある日、移動教室で階段を上ってるとき、アフォ男が 「鳴ってる!鳴ってる!」 と俺のとこにやってきた。 そして俺にも、確かに階段でカン、カン、カンと鳴ってるのが聞こえてしまった。 俺はクラスメイトが集まってる中で、急いで地味男の姿を探した。 地味男は集団の後ろの方で、無表情にぼーっと立っていた。 俺には仏の顔だった。 また階段を駆け下りようとするアフォ男を、 すぐさま寄って来た地味男が落ち着いた声で、 「俺君が除霊するから大丈夫。先行ってて」 といった感じでなだめた。 アフォ男とその他クラスメイトが去って、俺と地味男だけになったときも、 しーんとした踊り場で音だけはずっと響いていた。 すでにガクブルな俺にとって、やたら冷静な地味男だけが支えだった。 俺「ど、どうすんの。俺、霊感とかないんだけど」 いつ地味男に嘘をバラしたのかは憶えてないが、 地味男はとっくにわかってたみたいだった。 俺は地味男にしがみつきじっと上を睨んでいたが、 音だけで姿はチラリとも見えなかった。 俺「上、行ってみんの?俺無理なんだけど」 地味男はさらりと言った。 地味男「何言ってんの?アレ、下にいるよ」 …………え。 地味男「俺君、リコーダー貸して」 俺の手からリコーダーを取り、自分の荷物を押しつけると、 地味男は「あ゙―――――っ」と奇声をあげた。 リコーダーで手すりを滅茶苦茶に叩きながら、階段を駆け下りていった。 もう何にビビっていいのかわからなくなって、 俺は唖然とそこに突っ立っていた。 地味男の立てる音が聞こえなくなったとき、例の音も消えていた。 地味男が戻ってこなかったから、恐る恐る踊り場から下を見ると、 地味男がニヤニヤしながら立っていた。 そしてそのままニヤニヤしながらまたこっちに上ってきて、 リコーダーを手渡された。 地味男「もう大丈夫だよ」 よくわからなかったが、地味男が何か凄いことをしたのはわかった。 地味男は俺の手から教科書と自分のリコーダーをとり、 「行こう」と言った。 というか、自分のリコーダーあるなら自分の使えよ。 それから更にDQN化していった俺の尻拭いを、 何度か地味男に頼んだことがある。 まあ、俺は本当に霊感ないし、 この板で見るような恐ろしい体験ではないんだが。 ガキの頃から、 「俺君、地味男と友達なの?」 と女子に言われることは何度かあったが、 地味男がモテはじめるにつれ、 そのニュアンスが着実に変化していったのが虚しい。OTZ
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