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かぁさん

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  アパシー　学校であった怖い話1995　vol.１

• 私は徒歩で学校まで通っている。
  
  ご近所さんはみんな仲良しで、会う度に笑顔で挨拶してくれる。
  
  「今日もいい天気だな～」
  
  空を見上げながら呟いたとき、またベランダに出てる...
  
  カラスも一緒に...
  
  毎日何をみてるのかな？
  
  最近引っ越してきたという話を聞いたことがある。
  
  お母さんは内向的な人みたいで、ご近所とあまり接しようとしないそうだ。
  
  この、いつも2階のベランダから外を見ているのは風子ちゃんというらしい。
  
  5才ぐらいの可愛らしい女の子。
  
  私はその光景を昼夜問わず目撃している。
  
  ある日の学校帰り、途中でコンビニに寄り肉まんとあんまんを買った。
  
  寒さで凍えた手を肉まんで暖めながらほおばっていると、風子ちゃんの頭が見えた。
  
  私は、
  
  「風邪引いちゃうから早くお家に入った方がいいよ～」
  
  と、声をかけた。
  
  すると、
  
  「ママをまってるの～！」
  
  ......なんて健気な子なの！
  
  私はあんまんの入った袋を風子ちゃんに投げ渡した。
  
  「無理しちゃダメだよ！」
  
  と言って手を振ると、風子ちゃんも嬉しそうに手を振り返してくれた。
  
  気のせいかな？
  
  カラスがちょっと増えたような...
  
  ーーー数日後ーーー
  
  学校から帰る途中、
  
  「かぁさーん開けてー！かぁさーん！」
  
  と激しく泣きながら母を呼ぶ風子ちゃんの声が聞こえてきた。
  
  私は心配になり、
  
  「大丈夫？」
  
  と声をかけた。
  
  風子ちゃんは泣きながらもこちらに気付き、
  
  「かぁさんにおこられちゃった」
  
  夕陽に染められた風子ちゃんの顔はくしゃくしゃになっていた。
  
  カラスもその様子を窺っているようだった。
  
  次の日から風子ちゃんの姿を見かけなくなった。
  
  今頃どうしているのかなぁ...と考えていると噂好きの母が、
  
  「最近越してきたお家の、風子ちゃんて言ったっけ？あの子、突然居なくなっちゃったらしいのよ！
  
  なんでも、ベランダにパジャマが脱ぎ散らかしてあるだけで、本人の姿がどこにもないんですって！」
  
  後日聞いた話だとその母親は、風子ちゃん失踪後に精神を病んで入院しているのだそうだ。
  
  今日もカラスが激しく鳴いている。
  
  かぁさーーーーん
  かぁさーーーーん
  
  
  

  かぁさんの解説
  
  
  カラスの死骸をあまり見かけないのは
  仲間のカラスが死骸を食べて
  自分の身にするから、という都市伝説がある。
  
  風子ちゃんは母親から虐待を受けていた。
  
  毎日ベランダに閉め出され、
  かぁさん、かぁさんと呼び続ける。
  
  その声がカラスを呼び寄せ、
  ふうこちゃんの周りには
  いつもカラスが居つくようになった。
  
  真冬にも関わらず締め出されていた風子ちゃんは
  とうとうベランダで衰弱死してしまう。
  
  それを見つけたカラス達は
  ふうこちゃんの肉を喰らい、
  自分たちの身とした。
  
  その後もカラスたちはその場から離れることはなく、
  毎日のようにふうこちゃんが言っていた言葉を発する。
  
  母親は毎日繰り返される
  カラスの鳴き声に精神を病み、
  入院してしまった。
  
  
  母親が戻ってきたときに
  カラスは母親を襲ったりするのだろうか？

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