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階段怪談
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突然だが、 “階段怪談”って遊び、知ってる人いるか? 検索してヒットしないから、 多分俺の町だけの話なんだろうけど、 それについての洒落にならん話を一つ。 俺がその遊びを知ったのは 小学6年の頃だった。 俺は普段、 5年から同じクラスだったABCと男子4人でつるんでいて、 クラスでは結構うるさい方だった。 4人とも凝った遊びが好きで、秘密基地作りや、 心霊関連ではコックリさんなんかは序の口、 近所の墓地に肝試しに行ったりもしていた。 まあ、普通のゲームとかもしてたけどね。 “階段怪談”の話は何処からともなく広まって、 学年中の噂になった。 もちろん俺達は、 「どうする?やるか?」 「そりゃ、やるだろ!」 って感じの軽いノリで、 決行することに決めた。 その“階段怪談”の概要は次の通り。 学校の階段の一番上の踊り場、 つまり屋上へと続くドアのある踊り場に座り、 その一つ下の踊り場からの階段の段数だけ、 順番に怪談を語っていく。 一つ怪談を語るごとに、 “何か”が一つ階段を上がってくる。 “それ”が自分達の踊り場まで上がった時、 世にも奇妙なことが起こるらしい。 *途中で止めてはいけない。 *“それ”が登り切るまで、階段の下を覗いてはいけない。 他にもいくつかルールがあるんだけど、 細かいからとりあえずカット。 丁度、百物語とコックリさんを混ぜ合わせたような遊びだ。 仲良し4人組に加え、 話を聞いた女子のDちゃんを加えてメンバーは5人。 噂が大きくなるにつれてこの話は先生の耳にも入り、 “階段怪談”は固く禁止されていたため、 決行は日曜日にこっそりと行われることになった。 決行当日、 俺らは二つ三つの怪談を用意して学校に集まった。 女子の面前カッコつけたい俺は、 ABCをチビらせるような怖い話を本を漁って探したのを覚えている。 5人が集まり、 早速屋上に続く階段に向かい、 踊り場までの段数を数える。 12段だった。 「お前ら、ビビってねえよな」 「当たり前だろ」 なんて余裕シャクシャクの俺たち。 Dちゃんも案外肝が据わっているようで、 ほとんど怖がっている様子はなかった。 埃っぽい踊り場に座って輪を作り、 始める体制を作る。 俺の座る位置は、階段のすぐ近く。 つまり階段に背を向ける形だった。 ほんの少し嫌だったが、 カッコつけたい俺は何も言わなかった。 そんなこんなで、 “階段怪談”は始まった。 語り部は、 A、B、C、俺、Dちゃんの順番。 俺含め、 用意してきた怪談はみなそれなりに怖く、 一周回った時には、 少なからずみな背筋に冷たいものを感じていた。 時々 「お前怖がってんだろ」 という茶化しが入るが、 なんとなく勢いもなくなっている。 Dちゃんも少し不安そうだった。 休日の学校は、 心なしかなんだか薄暗い。 不気味な雰囲気に包まれながら、 俺らの“階段怪談”は二週目に入った。 Aの怪談が終わる。 ルール通りならコレで六段目。 あと半分だ。 誰もがそう思っていただろう、その時。 ギシッ……と、確かに音がした。 思わず顔を見合わせる俺ら。 気のせいだろ、とは誰も言えなかった。 正直この時点で俺はかなり帰りたくなっていた。 他の奴らもそうだろう。 しかし、ルールに 『途中で止めてはいけない』とあるので、 そういうわけにもいかなかった。 止めたら、 どんなことが起こるか分からなかったから。 Bが怪談を始める。 すると、急に空気が変わったのを感じた。 重苦しく、何かに閉じ込められたかのような雰囲気。 ヤバイ、コレは多分本当にヤバいやつだ… と俺含め全員が思った。 Bの怪談が終わる。 ……ギシッ… 俺の背後でまた音が鳴った。 あと五段。 登り切ったとき、何が起こるのか? もはや誰も強がりを言うやつはいなかった。 Dちゃんは殆ど半泣きだった。 Cの怪談が終わる。 ……ギシッ… 気のせいじゃない。 確かに聞こえる。 背後に何かがいるのを感じる。 俺の前に座るAは、 必死で顔を伏せていた。 恐らくすでに顔を覗かせているだろう“それ”を、 見ないようにしているのだろう。 次は俺の番だった。 俺は必死の思いで、 用意してきた怪談を語り出した。 その時。 「気~ぃづいてるんでしょぉ~~?」 と、真後ろで女の声がした。 思わず息が止まった。 誰かがヒッと声をあげる。 隣ではDちゃんが嗚咽をあげていた。 しばらく沈黙した。 どうすればいいのかを考えたかったが、 頭がうまく回らない。 俺は続けるしか無いと思った。 途中でやめるのを禁止されている以上、 それ以外に考えつかなかったから。 声を震わせ、 何度もつっかえながら、 俺の怪談が終わる。 ……ギシッ… 「「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」」 階段を登る音と共に、 急に何処からともなく大量の笑い声が起こった。 後ろで女が手をパンパンと打つ声も聞こえる。 もうみんなが泣いていた。 次のDちゃんはつっかえつっかえ、 短い怪談を10分以上かけて話した。 もはや誰の耳にも内容は届いていなかった。 …ギシッ…… 「アト、二だ~ん」 女の声だ。 「「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」」 汗が玉になって噴き出すのを感じた。 もう、ほんのすぐ後ろまで来ている。 階段を登るときの衣擦れの音が聞こえるくらいに。 Aが語りだす。 「もうやめようぜ!」 とCが言った。 「え…で、でも…」 とA。 「い、いや。そっか、駄目なんだよな、ゴメン…… ゴメンゴメンゴメンゴメンゴメンゴメンゴメンゴメンゴメンゴメンゴメンゴメンゴメン ゴメンゴメンゴメンゴメンゴメンゴメンゴメンゴメンゴメンゴメンゴゴゴゴゴゴメゴゴゴゴメンゴゴゴゴゴメゴゴゴ」 急にCが狂ったようにゴメンを繰り返し始める。 その目は虚ろで、 正気を失っているようだった。 もうCを構ってる余裕はなかった。 Dちゃんが目を瞑って耳を塞ぎながら 「もう早く終わりにしちゃってよ…」 と言い、Aは怪談を始めた。 相変わらずゴメンを繰り返すだけのC。 時々上ずるその声に遮られながらAの怪談が終わる。 …ギシッ…… 「アト、いちだ~ん」 「「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」」 あと一段。 全員が早く終わることを願った。 Bが語りだす。 時間が異様に長く感じる。 そして、ついに、 最後の怪談が語り終わった。 …タン…… 俺の右側に“それ”がついにやって来たのを感じた。 俺含め、 恐らく全員が目を瞑り耳を塞いでいた。 Cもいつの間にか黙っている。 何が起こるのか。 すると、フッと場の雰囲気がもとに戻るのを感じた。 あれ?と思い、 恐る恐る耳から手を離し、顔を上げた。 「タノシカッタ?」 いつのまにか俺らの作った円の中央。 目の前にいたその女には、 体中に顔が盛り上がるようにくっついていた。 くすんだ花柄のワンピースから伸びる手、 少しだけ覗く足、そして通常よりもふた周りほど大きな頭。 びっしり、デタラメに、いくつも、いくつも、いくつも。 「「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」」 顔が一斉に笑い出した。 と同時に、 全員で立ち上がって逃げ出した。 Cも、正気に戻っている。 校庭まで走って逃げ、 俺らは立ち止まった。 「ヤバかった…マジあれはヤバイ…」 みんなでマジ泣きしながら、 改めて女の風貌を思い出して泣いていると、 「あれ!」 と、Dちゃんが屋上を指差した。 見ると、 例の女がこちらに手を振っていた。 再び俺らは逃げ出し、 AだかBだけの家に逃げ込んだ。 それからあの女を見ることはなかった。 この一連の話は俺たち五人だけの話となり、 誰にも話はしなかった。 他のクラスの奴らにも “階段怪談”に挑んだ奴がいるそうだが、 そいつらがどうなったかまでは分からない。 いつしか俺らの間でもタブーの話となり、 この事件は幕をおろした。 …そして、 この“階段怪談”の噂の出どころは、 結局よく分からんまま今日に至る。 ずっと気になってて、 ついに今日意を決し調べてみたんだが、 何にも出てこなかった。 というわけで、 なんらかの手がかりが無いかと、 書き込んだ所存です。 似たような話があったら教えてもらいたい。
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