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ピチガイ
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自分の記憶と兄から聞いた話、 それに友達からの情報、 それらを元にした話なので、 完全に真実の話ともいえないかもしれませんが、 結構怖いと思った話なので、 書き込ませていただきます。 始まりは、 俺が小学校低学年の頃までさかのぼります。 当時、神戸市垂水区にあった (今も在るかは知りません)公務員宿舎に、 俺の家族は住んでいました。 外観は古いタイプの団地って感じで、 全部で十棟くらいあったと思います。 一つの棟には三つ階段があって五階建て。 ウチは五号棟の真ん中の階段の五階でした。 話の元となる家族が住んでいたのは、 向かって右側の階段の四階、 号室までは覚えていません。 そこは両親と一人っ子の長男の三人家族。 父親は公務員で母親は専業主婦、 長男は浪人生。 この母親と長男の関係が、 はじめの悲劇を生みました。 母親はかなりの教育ママで、 自分の息子に自分が望む志望大学に入学してもらいたかったらしく、 半ば強制的に息子に勉強をさせていました。 何度目かの受験失敗の後、 長男は母親のプレッシャーと受験失敗を苦にして、 団地の四階、勉強部屋の窓から飛び降りて自殺しました。 結構大きな騒ぎになったらしいのですが、 俺はあまり覚えてないです。 教育バカママはその一件がかなりショックだったらしく、 精神的に追いつめられておかしくなっちゃいました。 夜中に突然散歩に出かけたり、 外で会った人に 「あなたの後ろに羽の生えた人が見える」 なんて言ったりして、 団地の住人にかなり恐怖を与えていました。 実際にウチの兄貴は、 そのバカママ改めピチガイオカンに 訳のわからないことを言われたらしいです。 他にも聞いた話では、 死んだ息子の部屋の窓を必ず開けっ放ししていて、 「閉めると息子が帰ってこれなくなる」 なんて言っていたらしい。 だんだん症状がひどくなり、 今度は部屋中に何処からか持ってきたお札を張りまくって、 「あいつらが、息子が帰ってくるのを邪魔している」 と夜中にわめき散らしたり、 寝巻きのまま外に出たり、相変わらずの 「あなたの後ろに羽の生えた人が見える」 を団地の人に言ったりと、 かなりヤバイ状態までいきました。 ここらへんのことは俺も当時、 団地の話題になったのを覚えています。 それで旦那が困り果てて、 色んな人(カウンセラーから宗教関係者、心霊系まで)に相談したものの、 良い結果は得られなかったらしいです。 偶然にもその家族の向かいには、 某宗教団体に属する家族が住んでいました。 ある日、相談を受けたそこの父親が そのピチガイオカンを訪問して、 彼女の前でお祈りをしたところ、 急にピチガイオカンの声色が変わって、 その父親を罵ったり手がつけられないほどに暴れたりと、 エクソシスト張りのことがあった… そんな噂も団地に広まりました。 家庭の事情で俺の家族が引っ越すことになってしまい、 その後の経過を見ることなく、 その一件は記憶のかなたに追いやれることになります。 ウチの家族は何度か引越しを繰り返して、 二年後、また神戸に帰ってきました。 しかし、例の公務員宿舎ではなく、 少し離れた学区も違うところです。 それに、その頃は すっかりその家族のことなんて忘れています。 神戸に戻ってから四、五年経ったころ、 俺がもう高校生になるかならないくらいの時、 母親の友人がうちを訪れました。 その人は公務員宿舎に住んでいたときからの友人で、 神戸に戻ってきてから時折、 母に会いにウチに来ていたのです。 その日もくだらない世間話をしていましたが、 俺が挨拶をしに顔出すと、 「そういえば覚えてる?」 と、あの家族の話をはじめました。 ピチガイオカンは一向に良くならず、 けっきょく旦那はピチガイをつれて 田舎のほうに引っ越すことになりました。 何処とは聞きませんでした。 そこで旦那がピチガイの面倒を見ながら、 遠くの会社まで通勤していたらしい。 しかし、 この旦那もかなりの年齢、 よる年波には勝てないのと、 ピチガイの面倒、 長い通勤時間等がたたり、 体調を崩してしまった。 それで早めに退職し、 そのまま田舎でピチガイの面倒だけを見ることに。 旦那が退職してしばらく経ったころ、 近所の人がおかしなことに気づきはじめた。 夫婦の姿を最近見かけない。 奥さんのほうがピチガイなのわかっていたし、 旦那が最近退職したのも皆知っている。 旦那の方はよく買い物なんかに出かけていたが、 このところ全然姿を見かけない。 おかしいとは思いつつも、 家庭の事情が事情だけに、 誰も家まで出かけてどうなっているのかを 確かめたりはしなかった。 それから何週間がたっても夫婦の姿をみかけなかった。 さすがにこれは本当におかしいと思い始めた近所の人。 近所といっても 田舎で家と家のあいだはかなり離れているので、 具体的に家の状況とかはわからなかったので、 警察に事情を連絡し、 一緒に様子を見に行くことになった。 カギはかかっておらず、戸を開けると その瞬間に異臭が漂ってきた。 明らかに何かが腐った匂い。 警察官と近所の人が中に入っていくと、 寝室と思われる部屋に座る人影が見える。 敷かれた布団を前に ピチガイの奥さんが座っている。 きちんと正座して。 腐臭の元は明らかにその部屋からきている。 部屋に入っていくと、 ピチガイ奥さんの前に敷かれた布団の上に、 変わり果てた旦那の姿があった。 死後からかなりの時間が経っている様子。 ピチガイの奥さんは、 その前でじっと座っていた。 後から聞いた話では、 旦那は他殺ではなく、 体調を崩しそのまま病死したらしい。 ただひとつ気になることは、 家の中には食料といえるものは一切なくなっており、 近所の人も誰一人、 ピチガイ奥さんが買い物に行ったのを見ていない。 旦那が死んでから何週間ものあいだ、 ピチガイはなにを食べていたのだろうか。 彼女の目の前に在ったのは…
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