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金縛り体質
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私の家系は、 ちょっと勘が利くといいますか、 霊感が強い傾向があります。 特に母は所謂『予知夢』なんかを見たり、 人の隠し事を察知して、 言い当てるなんて事もしばしばです。 まぁ、母親の勘とか女の勘とか、 そういう類なのかなって感じもしますが。 しかし、霊が見えるというわけではなく、 とにかく察知するってだけです。 それは私の兄たちも同じで、 次男は結構洒落にならない体験もしてるようです。 因みに、父は全くそういうものは働きません。 『勘』のかの字もないってタイプです。 そして、母や私達兄妹に共通するのが『金縛り体質』です。 先に書いた、兄の洒落にならない体験も、 殆どがこの金縛りに関する出来事。 けれど私は、兄が 「この部屋では寝れない」 と泣きを入れるような場所でも、 全然平気で何事もなく眠れたため、 自分には霊感や不思議体験など無縁なんだな、 と思っていました。 そんな中、私が高校生になった頃、 実家の隣にお寺が建ちました。 窓を開ければ寺があるって環境は、 あまり好ましいものではありませんでしたが、 綺麗な真新しい建物だったので、 気持ちが悪いとまでは思っていませんでした。 ですが、その頃から私までも、 金縛りに遭うようになったのです。 内容としては、 ありきたりですが…こんな感じです。 夜中、突然目が覚め(正確には意識だけ醒める)、 同時に身体が動かなくなり、 部屋の中で女性のクスクス笑う声が聞こえました。 あ…ヤバイ、 これは目を開けてはダメだ。 そう思い、 とにかくそのままジッとしていたんです。 すると、その声が 段々自分に近づいてくるのが分かりました。 クスクス…クスクス… あ~…やだな、どうしよっかな… と案外冷静に思考は働いていました。 それでも目だけは開けまい、 あわよくば寝てしまえ、自分。 と思っていると、 笑い声が途絶え、ほっとした瞬間、 耳元に気配を感じました。 「○○(←私の名前)ちゃん」 そう耳元で呼びかけられたのです。 ひ!と思った瞬間金縛りが解け、 その後は隣室の母の部屋に猛ダッシュして布団に潜り込み、 また寝ました。 そんな感じで、 ちょくちょく金縛りに遭うようになったため、 母がお札を部屋に貼ってくれたり、 部屋に盛り塩したりしていました。 でも寝てる間に起こる事なので、 そこまで気にせずに暮らしていたんです。 まぁ、家族(父除く)揃ってそういう経験があるので、 そういう金縛りにも楽観的でしたし。 家族みんな、 「塩置いときなー」 「お経唱えなー」 くらいの反応でした。 ちょうどお盆の時期でした。 夕方窓を開けたまま部屋で寝ていた時です。 つけっぱなしのTVの音が、 急に大きく聞こえ始めました。 目を閉じたまま、 あーこりゃ始まったぞと思いました。 案の定、身体が固まり、 同時に窓から何かが入ってきた気配がしました。 TVの音がどんどん大きくなります。 もはや騒音レベルです。 いつものように『南無阿弥陀仏…』と頭の中で唱え始め、 早く終わるのを待ちました。 すると、身体の上にドスン!と何かが乗ってきたのです。 思い切り、 大人の人間が乗ってきたような感覚です。 息も止まりそうなくらい苦しかったのですが、 必死に頭ではお経を唱え続けました。 ところが今度は、 顔を大きな手で押さえられました。 基本的に金縛りの際、 私は絶対に目を開けません。 それは、兄が金縛り中に、 色々見てしまった体験を聞いていたからです。 けれど今回は、 はっきりと分かります。 大きな手が自分の顔に当てられ、 ぐうぅっっと思い切り押し付けているのが。 ここまで来るとこちらも必死で、 『南無阿弥陀仏』から『南無妙法蓮華経』に至るまで、 知ってるお経をがむしゃらに唱えました。 すると、それに抵抗するかのように、 さらに手の力が強まります。 長い!長い…!今回のは長い!! と、焦り始めました。 とにかく力いっぱいに押し付けられ、 それでも負けるか…!負けるか!!とお経を唱え続け… ついには、あまりの苦しさに目を開けてしまいました。 目の前には、 髭だらけでボサボサの髪をちょんまげのように結った、 男の顔がありました。 イメージ的には、 時代劇なんかに出てくる浪人が、 髭も髪も伸ばし放題にしている、 そんな顔と髪型です。 表情までは覚えてませんが、 大きな手の指の間から、 それをはっきりと目にしたのです。 その瞬間、何故か私の中に強い怒りが起こり、 男の顔に向かって 「うおおおおおおおおお!!!!」 と、大声で怒鳴っていました。 吼えた、と言ったほうがいいでしょうか。 (すいません、事実です…) すると、顔への圧迫が解かれ、 男の顔がスゥ…っと消えました。 そして、身体も自由になったのです。 ガバっと跳ね起きた時も、 怒りが収まっておらず、 「待てこの野郎!!!!」 と叫んでいました。 今思うと、 何故あんなに怒っていたのか分かりませんが。 落ち着いてから部屋を見渡すと、 あれだけ爆音に聞こえたTVの音量もいたって普通で、 窓からは、真っ赤な夕焼けの陽が差し込んでいるだけでした。 そんなこんなで、 いい加減に金縛りに嫌気が差していた頃、 電車の中で友人に、 上に書いたような体験内容を話していたんです。 向かい合わせに座り、 興味津々で聞いていた友人が、 途中から私の後ろにばかり目をやっています。 どうしたんだろう?と思った瞬間、 突然後ろから60代くらいの女性に話しかけられました。 「それはね、あなたに助けて欲しいからなのよ」 正直相当びっくりしましたが、 後で友人に聞くと、 女性はずっと私の後ろで、 話をニコニコ聞いていたそうです。 困惑している私たちに、 女性は柔和な笑顔で続けます。 「あなたはね、血が巫女さんなの。 だから、みんな救って欲しくて来るの。 今度からは、『ここは違うよ、お帰りなさい』って言ってあげるといい。 それで大丈夫」 と。 「え?え?」 と戸惑う私に、 女性は顔を近づけじっと見つめ、 「あのね、あなたは神さまに仕える血筋なのね。 お家は神社に関係してない?」 と、聞いて来ました。 「そんな事はまったくない」 と答えると、 「それなら、 お母さんかお父さんに聞いてごらん、 必ずそうだから」 と断言します。 正直、いきなり見知らぬ人からこんな事を言われ、 不気味だったのですが、 友人がノリノリで女性に質問していました。 そこで言われたのが、 ・寺ではなく、神社に関係する血。はっきりと「神主さんが先祖にいる」と言われました。 ・あなたは絶対に危険な目に逢わないから、心配しなくていい。 ・日頃見えないのは守護霊が強いから。 ついでに、 「友人は良い結婚する」 と言われていましたが、 私は言われませんでした…。 さらに女性は、 「困ったらここへ訪ねて来なさい」 と、住所を渡そうとしてくれたのですが、 あまりにも突然の事で、 「いいですいいです」 と固辞しました。 帰宅後、母に電車での顛末を話し、 「神主なんていないよね」 と言うと、 祖父が昔、神主を副業にしていた事実が出たんです。 確かに母方は代々神道なんですが、初耳でした。 母も大層驚いていて、 しきりに「すごいね~」と言っていました。 数日後、そんな話を手土産に、 祖父の家に遊びに行きました。 祖父は黙ってその話を聞いた後、 どこかから資料を持ってきました。 それは家系図でした。 「このな、一番上見てみなさい。 ○○○とあるだろう。 これはな、朝廷に仕える巫女さんなんだ。 それの一番偉いの。 それが○○○で、家の始まりなんだ」 (すいません。 もっと歴史なども交えて説明してくれたのですが、詳しくは書きません。 結構特定されるような内容なので) これは母も初耳の事だったようで、 3人で暫く無言になりました。 その後、祖父は白い紙に墨で 『きよめたまひはらいたまへ』と書いて、私にくれました。 「それを持っていろ。 また金縛りに遭ったらそれを唱えろ」 と付け加えて。 結論から言って、 その後まったく金縛りに遭いません。 なんとなく嫌な感じの場所に行っても、 その言葉を唱えるようにしています。 後で知ったのですが、 祖父がくれた言葉は『祝詞』の一節なんですね。 それにしても、 電車で会ったあの女性は、 一体何者なのでしょうか。 その後、 電車に乗る時は探しましたが一度も見かけませんでした。 住所を貰っておけば良かったかも知れません。
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