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ネットカフェ
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自分は学生時代は二年間福岡に住んでいて 就職で関東に来て現在に至るんだけど 関東に来たばっかりの時は環境の変化についていくのが本当に辛くて、 友達もなかなか作れずにいつも ―早く福岡に戻りたい― ずっと思っていました。 当時勤めていた会社は 二年目から一年に一回だけ有給が5連休取ることができました (まぁブラックなんだけどそこはあんまり気にしないで下さい) 有給がとれたときは自分はすかさず福岡に帰省し、 とにかく5連休を遊び尽くしていました 前置きは長くなりましたがその時の話 当時はそんなに高い給料もなく、 帰るときは必ず安いクーポン雑誌を使っていました そのクーポンにはホテルは一泊分しか付いていなくて、 以降は別料金で追加していく なるべくそこを安く済ませようと思い、 そのまま一泊しか付けずに 後は友達の家やネットカフェに泊まって、 最終日まで凌ぎました とにかく朝まで遊び、 ほとんど寝ずに過ごし、 疲れてたのもあるかもしれません 三日目もほとんど寝ずに過ごし、 四日目の朝 流石に疲れた… 少し休みたいし、 お風呂も入りたいし、 でもそこは安く済ませたい! 夕方にはまた待ち合わせをしていて 仮眠が出来ればいいか、と思い 以前住んでいたマンション近くのネットカフェに行くことにしました そこにはシャワールームも付いていて、 使いたい時は受付で名前を記入して 順番が来たら店員が部屋まで呼びに来て シャワールームに入るシステムでした 「約40分待ちになります」 との事で、 寝たらもう起きないと思い 時間まで漫画を読むことにしました そのネットカフェは関東でも見かけるので 大きな規模のネットカフェだと思いますが、 そのビルの地下に降りていき 少し薄暗い雰囲気なんです。 まぁネットカフェ自体そういう雰囲気で 静かなイメージがあると思います 自分もそう思っているので気にした事なんて一度も無かったんですが、 そこに入って個室のソファー席に座るまでとにかくずっと気になっていました 適当に40分位の時間を潰せそうな漫画を何冊か手に取り、 寝ないように読み始めました ソファーの背もたれに深く腰掛け、 M字開脚の如くソファーに足を乗せて膝を机に掛けてバランスを取り、 机の上に肘が来るようなすごく悪い姿勢で読んでいました (文才があまりなくイメージ出来なかったらごめんなさい) 三日もほとんど寝ていなかったので 読み始めてしばらくすると眠気が出てきます するとモスキート音によく似た、 耳鳴りにも似た甲高い金属音が遠くの方から聞こえて来ました それは自分の部屋の扉の前でプツッと消えて また遠くの方からまたやって来ました 次は金属音と共に人の気配も一緒に はじめは漫画に集中していた事もあり ただの耳鳴りと思っていたのですが 音がプツッと消えて小さな気配と共に近付いて来たときに おかしい そう思い、 音と気配に意識を向けました しかしその時から金縛りになっていました 悪い姿勢のまま全く動かず 漫画を持った状態から一切動かす事が出来ません かろうじて目だけは動かす事が出来ます 扉に目をやると、その気配はまた プツッ 消えてまた遠くの方からやって来ました 気配は少し大きな気配に変わって さすがに嫌な気持ちになってきたのですが、 動けないので何も出来ず とにかく体を動かせるように必死にもがいていました 元々の気配は足下の所に感じる大きさが 二回目に近づいた時には膝くらいの大きさで、 扉の前でまた プツッ 消えて遠くの方から、 またやって来ます また少し気配は大きくなって 次は座っている自分の大きさ位の気配に感じました それは扉の前で消えず、 一度扉の前で止まりましたが、 音と共に扉を抜けて フッ と、自分の中に風として抜けていきました その時に気配は一緒に消えたのですが、 金縛りは消えません 気持ち悪くなってきて 早く動け! と、もがいていたのですが 自分の脇腹あたりを見たときに ソファーの後ろから何かが横切りました 自分の後ろを横切った何かは反対の脇腹を見ると、 また自分とソファの後ろに隠れます そのソファと壁との間はネットカフェの個室だし 自分の悪い姿勢のせいもあり人が横切るスペースは、 もちろんありません だんだん冷や汗をかいてきて 気持ち悪さよりも早くここから逃げ出したい気持ちが強くなり、 この後ろにいる『何か』から逃げたくて、 とにかくもがいていました それはソファの後ろで、 こちらが見ると隠れては 反対からまた視界に入ってきて見ると反対からまた出てきます こっちもだんだんと動けないことに興奮してきて 涙目になりながらもがいていると ちょうど悪い姿勢の漫画を読んでいた自分の開いた足と 漫画を持っている手の隙間から覗いていました 笑っていました 自分はそれを凝視することは出来ませんでしたが、 漫画を持っている手元を見ていると 視界に完全に入っていました ちびまる子ちゃんのような服装で 白いシャツに赤いスカート ショートカットですが 前髪は鼻まで完全に隠れるまで長くて目は見えません 口角が前髪に隠れる位あがっていて 歯が見えないくらい真っ黒な口が笑っていました それは自分の視界に完全に入りたいらしく 笑顔でゆっくりと足下から上にあがろうとしています 見たらいけない とにかくそれだけ思っていましたが、 目が閉じれずに息も出来ないくらい焦っていました 過呼吸のような感じで ヒューヒュー ヒューヒュー と涙目で そして悪い姿勢ですごい絵だったと思います それは自分の股の所まで頭は出てきていて 自分の息もいよいよ息が出来なくなってきて ヒュッ と、ここで 「シツレイシマース!シャワールームアキマシター!」 ノックと共に店員が呼びに来てくれました それと同時に金縛りは完全に解けて 自分はそのままシャワールームをキャンセルして、 そこからとにかく急いで出ました お会計のレジまですごく重々しく 薄暗くて静かな雰囲気のネットカフェでしたが それ以降はどこのネットカフェでも感じたことはありません 疲れていたから半寝半起状態で見た夢だとも思うようにしているのですが、 あの現実感と足下を這い上がってくる生々しさは 10年経った今でも忘れられません
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