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団地での新聞配達
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高校の時に新聞配達をしてた その時とっても怖い思いをした話 配達してたのは、 俺が住んでいた団地8棟。 朝五時前に起きて、 俺が住んでる団地の1階の階段横に行くと 新聞が置かれてあって、 それを自転車に積んで、 1棟1棟配り回るんだ。 だから直接、 新聞屋に行く必要はない。 団地というのが、 4階建てで両端に階段があり 階段と階段の間に通路が通っていて その間に、101,102・・・106という風に 6部屋あるタイプの構造だ。 1階は駐車場だから、 10*の部屋はなかったんだけどな。 うちもそうだったんだが、 貧乏臭そうな連中ばかりが住んでいた団地だ。 その日も暗いうちから起きて配る俺だ。 いつものように、 華麗に迅速にポストに新聞を入れる。 5棟目を配り終え、 6棟目へと自転車を走らせた。 これまで配った5棟は道路側に面してたからか、 街灯の明かりが差し込み わりかし遠くからも部屋番号が確認出来る明るさだったが これから配る棟の周りには、なぜか街灯がないので暗い。 半分くらい配り終えて5時半くらいか… 冬だったからまだ真っ暗だ。 今思えば、 他の4棟は階段に電気が着いていたが、 その棟だけは着いてなかった。 俺が着けてもよかったんだが、 別につけなくても 階段の上り下りに不自由はない。 この棟の配達する部屋は 201、202、205、302、305、401、404~406の、8部屋。 まず道路から近い、 1号室側の階段から2階に上り 201からの順に204、205、206と配り、 そのまま、6号室側の階段から3階まで上って305だけ入れる。 そして、また6号室側の階段から4階上って 406、405、404、401の順に配り 1号室側の階段を下り、 302を配って1階まで降りる。 ドア側を正面に反時計回りに、 ぐるっと周る形で配る寸法だ。 1階の階段脇に自転車を止め、 配る分の新聞を取っていると 向こう側の階段を誰かがゆっくり上って行くのが見えた。 「ここに住んでる住人の人だろうな」 と、特に気にせず2階へ駆け上がった…。 左の階段を駆け上がり、 201のポストに新聞を入れる俺。 俺が6号室側の階段に目をやると、 さっきの奴が上って来たのが見えた。 真っ暗でどんな格好をしているかはわからなかったが シルエットくらいなら確認できる。 そいつの歩き方というのが 上半身をやや後ろにのけ反り 手をひじから先をゾンビのように前にダランと垂らし 足を高く上げフラフラしたかと思えば足を踏み出す 非常にゆっくりとした歩き方。 ゆーっくりゆーっくり歩いてる。 なんなんだあいつは? 生身の人間だったとしても気味が悪い。 ましてや得体の知れない物ならなおさら。 酔っ払いや人がふざけて歩いてるようには思えない。 奴はそのまま3階へと上がって行った。 俺はと言うと まだ2階には配る部屋がある。 202、205と配り 6号室側の階段を3階へ昇り始める。 このまま走って昇ると奴に会うんじゃないか? すっかり奴に恐怖心を抱いてしまった俺だ。 出来るだけ距離を置こうと 奴の歩くペースを想像して 奴が3階くらいに着いたと思ったところで 忍び足のごとく、 一歩一歩ゆっくり緊張しながら昇っていく。 途中踊り場から曲がる時に、 こっち向いて立ってるかもなんて思うと 怖くて怖くて、 ひざから下の力が抜けていく! そ~~~~っと顔だけ出し階段を見上げると・・・ 誰もいなかった・・・ ホッと安心して階段を歩いて上る。 3階に着き 305に入れてる最中に 「もし6号室側から上って奴に会ったらいやだな 今日は先に302を配って1号室側から上ろう」 305に新聞を入れ、 302に向かおうとした次の瞬間! なぜか奴が1号室側の階段から上って来た。 「は?」 「なぜ?」 それにさっきより少しだけだが姿もはっきり見える。 長めのレインコートのようなものを着ていて フードを被っている。 だが何かおかしい? フードが縦に潰れているぞ。 つまり頭がないのだー!ぎゃー やっぱり得体の知れないものじゃねーか しかもこっちへ歩いてきた。 心臓が鼻から飛び出しそうな思いだ! 302に入れるのをやめ、 早歩きで6号室側の階段へ引き返し 4階へ駆け上がりました。 ひえーなんなんだあいつは!? 早いとこ配っちまおう。 406から入れていく。 そこへ奴が 1号室側の階段から上がって来たのが視界に入ってきた! ひえー 新聞を入れている姿勢のまま奴の様子を見る。 相変わらずゆっくりと奇妙な動きで こっちに歩いて来ているではないか! 怖い怖い! 逃げればいいものを 配ってしまわなきゃならないという義務感のほうが先に働いた。 奴がこっちへ来る前に 405、404と入れちまっわないと。 急いで…405の…郵便受けに…入れる! 焦るし、 手はガクガクだし、 うまく新聞を折れない。 ようやく入った! 見ると、 奴は401のドアの前辺りまで来てる。 それでもまだ怖い 素早く404の前に行き 郵便受けに新聞を入れようとするが 郵便受けの中に何か郵便物が詰まっている! たまにこういうことがあるんだな。 こういう場合は、 一度郵便物を取り出して新聞と束にして入れるか 郵便物を避けて新聞を入れ込むかしないといけない。 新聞を中途半端に出した状態で入れると 以前に、確かに入れたはずなのに 配られてないということがあった。 新聞屋の人に 「よその新聞屋が評判を落とすために抜いていくというから ちゃんと入れ込め!バッキャロー」 と大目玉を食らったことがあった。 その時は 「チックショー!」 って抜いた奴を怨んだね。 それ以来俺は よその配達員を敵視するようになった。 たまに出くわして挨拶されても無視してたし、 睨み付けて呪ってやったりもしたぞ。 だから奴の恐怖もあるが 新聞をちゃんと入れ込まないといけないという義務感もあった。 奴はいよいよ402のドアの前まで来てるし焦る。 もうどうでもいい。 無理やり新聞をねじ込み入れてやった。 郵便物がクシャクシャになったのが分かったが、 それどころじゃないよ! 一目散に、 ガクガクになった足で、 6号室側の階段に逃げた。 階段を4,5段抜きで飛び降りるように1階まで下り、 自転車の所まで走った。 まだ、302と401を配ってない。 明るくなって、 あとから入れに行けばいいんだが その時はそんなこと思いつかなかった。 くそーーどおしよー 1号室側の階段から上ることにした。 逃げの体勢をを作りながら、 ゆっくり階段を上って行く。 さっきと同じよう、 踊り場に着いたところで階段を見上げてみる… 「よし!いないな!」 また逃げの体勢で、 ゆっくり上り3階に着いた。 3階の通路を確認・・・・・・・・・いない ついでに4階への階段も覗きこむ・・・・・・ ・・・いない! 「ふ~~~~~」 安堵の鼻息を出して 忍び足で302の前に行き、 郵便受けに新聞を入れ また警戒しながら、 1号室側から4階へのぼった。 4階に着き、 そっと通路をのぞくと 向こうの方で奴が立っているのが見えた! 「あれは404の部屋の前だ!」 ドアの方を向いて立っていた。 401のドアはすぐそこだが、 奴が怖くて階段の陰に隠れて様子を見てた。 すると、くるっとこっちを向いた。 いや?向こうを向いたのか? 暗いからよく分からない。 んが片手に買い物袋のようなものを持ってる! そしてまた珍妙な歩き方を始めた。 どうやら向こうへ、 6号室側の階段のほうへ行ってるようだ。 奴が通路から見えなくなるのを待って、 401の郵便受けに新聞を入れた。 「ふうーやっと配り終えた・・・」 階段を下りようとしたけど 奴のことだから、 いきなり下から上って来るかもしれない。 そう思うと怖くなり、 また階段を飛び降りるようにして下りた。 奴がやって来てもいいように、 とび蹴り食らわすつもりで。 タンッ、タンッ、タンっ、アチョー!っと 一回飛び降りるたびに足の裏が痛いw 3階の踊り場 3階、2階の踊り場と飛び降りて 2階の階段から、 1階の階段に降りようと 通路のほう(建物の内側)を向いたときだった!! 201のドアの前に、 奴が立っていたのだ!!! 「フオアッ!!」 びっくりして変な叫び声出しながら 勢いでそのまま階段を駆け下りようとしたら バランスを崩してコケそうになった。 踊り場の壁に手を突いたからコケはしなかったが。 そして、そのまま1階まで駆け降り、 すぐさま自転車に乗り、 街灯のあるところまで漕ぎ逃げたところで 遠くから柳沢慎吾・・・ いや・・・救急車両サイレンの音が聞こえてきた? そこでやっと現実の世界に戻れてこれたような気がした・・・。 ぼちぼち各棟の部屋の明かりも点きだした。 時計を見たら6時を超えていた。 いつもなら配り終えてる時間だ。 急いで残りの棟を配り終えた。 夜が明けて冷静になって考えてみたら あれは得体の知れないものじゃなくて 普通の人間がレインコートを頭まで覆い被っていただけで 俺を驚かしてやっただけなのかもしれない あ~~404の郵便物グシャグシャにしてしまったよ~ 新聞屋にあとでどやされるな・・・ (授業中だろうが携帯に直接かけてくる) さっきの恐怖よりも こっちの方で気が滅入ってしまった ところがどっこい電話がかかってこなかったのだ 404の住人チクらなかったんだな 良かった… 家に帰ると母が 「今朝ここの団地の人が自転車で運転中、 車にはねられて死んだぞ」 と教えてくれた 「すぐ近所だ近所」 「お前が配達中にパトカーと救急車が来たと思うのだが 知らないか?」 「その人物は新聞配達員だがお前ではない」 そうか! あのサイレンはこれだったのか? 次の日。 昨日の今日だけに、 例の棟は一番最後に配ることにした。 配る時にも、 階段の電気をちゃんとつけて4階まで上り、 406の前に差しかかったときに、 404のドアに何か貼られてるのが見えた。 近づいてみると・・・ |忌| |中| 404の住人の誰かが死んでたのだ! 「死んでそれどころじゃなかったから、 〒郵便物がクシャクシャになった事をチクらなかったのか・・・」 しかし、俺はそこで疑問に思った。 「もしや昨日事故で死んだのってこの部屋の人?」 「そういえば昨日の変な奴の歩き方は、 まるで自転車をこいでる様だった!」 「あれは、この部屋の人の亡霊だったのか!?」 「俺はこの目で亡霊を見たんだ!!!」 途端に何者かが近くにいるような気がして左右を振り向いたが、 誰もいなかった。 俺はドアに向かって手を合わせた。 そして401を配り、 3階へ降りようとしたとき、 「んっ?」 何か違和感を感じた。 3階へ降り、 302の部屋の前に行こうと通路の向こうを見ると なんと、奴が6号室側の階段へ消えるのが見えた! つけていたはずの電気も消えていた。 違和感の正体はこれだったのだ! もし奴が生きている人間なら、 これから階段を利用しようとしてるのに、 電気を消すはずがない。 奴はやはり404の新聞配達員の亡霊だったのかもしれない。 俺がもう6号室側の階段を使わないから 拝んでくれたお礼に、 代わりに消してくれたのか? これを最後に奴の姿を見ることはなかった。
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