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高生まれ
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学生の頃、 当時付き合っていた彼女の弟と 首里で2DKのアパートを借りて住んでいた時の話だ。 彼とは住居費を節約できるとのことで 何とはなしに一緒に住み始める。 お互いを干渉しない気楽な同居生活。 実際、学生で昼と夜がひっくり返ったような生活の僕は、 仕事をして規則正しい生活の彼とは 殆ど顔を合わせることのない日々が続いた。 異変が起きたのは住み始めて数ヶ月経った頃。 その頃から彼は 僕が夜遅くまで帰らず一人で寝ている時に限って、 何かに取り憑かれたように夜中に目を覚ますようになる。 それほど神経質な性格ではない彼、 最初気にすることはなかったが 頻繁に続くようになると さすがに気味悪さを覚え始めた。 僕は何か心当たりはないか聞いてみた。 しばらく考え込む彼・・ ”もしかしたら・・”と次のような事を言った。 このアパートの入り口ドアは 道路正面から裏手に回りこむようにある。 すぐ傍にこんもりとした雑木林があり、 その中に小さな御願所がポツンとあった。 彼が言うには三週間ほど前の晩酔って帰った際、 そこに悪戯で小石を投げあてたらしい。 多分その事が原因だろうと、 さっそくその場所に向かって 二人で手を合わせ頭を下げた。 その日を境に彼が夜中に起きることはなくなった。 だが頭からそのことも消えかけたある日、 やはり彼が一人でいる時新たなる異変は起きた。 シャワーを浴びている彼の胸に、 墨で版を押したような丸い円が浮き上がってきた。 びっくりした彼は タオルで何度も擦るがどうしても落とせない。 みるみる彼の顔は青ざめていった。 ちょうどその時彼の姉(僕の彼女)が アパートに尋ねてきた。 彼女が目にしたのは 濡れたバスタオルで身体を巻いて 半開きの風呂場のドアにもたれかかっている弟の姿。 胸の異変は消えかかっていたが 何とか確認できた。 夜遅くに帰った僕は 二人からその話を聞いた。 翌日連絡を受けた彼の兄弟たちがアパートに集まり、 話し合った結果ユタに診て貰うことになった。 「御願所の件は関係ないね」 ユタは一通り状況を聞き、 何点か確認した上でこう切り出し、 「大きな理由はそのアパートにある」 と続けた。 そして彼に向かって、 「あんたは自分では気づかないだろうが、 高生まれ(霊感が強い)しているよ」 何でも首里のその一帯は戦時中激戦地で、 たくさんの人が亡くなった 所、今も浮かばれない霊がたくさんさ迷っている。 アパートはその上に建てられたもので、 「あんたみたいな高生まれの人がいたら、 それらがみんな寄ってくるよ」 そういえば同じアパートに住んでいても 僕には何の異変も起きてないなぁ。 「胸に出たのはグソー印(あの世の印)で あんたの魂は久米島の門中墓の所にいる。 その魂があの世に行きかけている時はその印が出ていて、」 息を呑むよう空気が漂う中、 ユタは淡々と続けた。 「でもそれをあんたのひいおばあが、 まだ来てはならないと引き止めている。 その時は印も消えている時・・」 さらにユタは、 「あんた最近、車も買い換えたでしょう。 何かおかしい事はない?」 と急に話題を変えた。 それは僕にも思い当たる節がある。 彼は二週間前に三菱ギャランに買い換えている。 鮮やかな黄色は初めて見る色で とても安く買ったと自慢していた。 そして先日何気ない話の中で、 ”先週、アパートの近くを走っている時、 フッと途中から意識が途切れ、 気がついたら安謝の火葬場の前を走っていた”。 「その車は事故車で、 助手席には今も女性が乗っている。 あんただったらもしかしたら 髪の長いその女性が見えるはずだよ」 それからユタは一呼吸置くと 結論めいたアドバイスをくれた。 「アパートは出た方がいい。 車も買い換えたほうがいいけど、 出来なければ普天間宮あたりでお払いさせなさい」 僕らはその日はそれぞれ兄弟の家に泊まり、 翌日大家さんに別の理由をつけて引っ越した。 彼は2、3日後に車も買い換えた。
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