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白装束の女
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初めて変な経験をしたのが4、5歳。 もう30年以上前の話をしてみる。 父親は離婚のためいなくて、 6畳一間のアパートに母親と二人暮しだった。 風呂がなく、毎晩近所の銭湯に行ってた。 いつもの通る道には、 その町では割と有名な大きな柳の木がある。 ある日の帰り、その木の根元に、 白装束の女の人が立っていた。 じっと俺のほうを見ているのだが、 怖いとかそういう気持ちはなかった。 母親が突然俺の手を握って、 「俺君、走って帰ろうか」 と突然走り出した。 俺の記憶はそこまで。 最近になって母親にその話をした。 「多分俺には幽霊が見えてたんだわ」 と話すと、 母親は顔が真顔になった。 そのときの出来事は、 母親にも鮮明に残ってたようだ。 というか、 リアルタイムで現在も苦しめられてると。 あの時、走ってアパートに戻ったのだが、 ドアを開けて中に入ったら、 電気のついてない部屋の中に、 柳の木の下に居た白装束の女が待ち構えていたのだ。 柳の木の下に立っていた白装束の女は、 母親にも見えていたらしいのだが、 この世の者ではないことが即座にわかったらしく、 走って帰ったらしかった。 部屋の中の白装束の女を見た途端、 母親は気を失った。 その間の俺は、 近くに祖母が住んでいたので、 祖母の家に行ったらしく、 「ママ死んだ!」 って祖母に伝えたらしい。 そして慌てて祖母は、 学生だった叔母に俺を託し、 アパートへ走った。 母親はアパートには姿がなかったらしく、 2週間後の3月20日に帰ってきたらしい。 母親と祖母は色々とその間のことを話したらしいのだが、 祖母から強烈な話を聞かされることになる。 祖母が10歳にも満たない頃、 同じ柳の木の下で白装束の女を見ていた。 しかもその女は走って追いかけてくるので、 ひたすら走って逃げ回ったと。 川を泳いで渡り、山の中を走り、 やっと姿が見えなくなって家に戻ったら、 2週間が経過していたらしい。 祖母は2、3時間くらいの感覚だったらしいし、 その間食事どころか排泄さえもしていない。 母親がいなくなって2週間、 母親もまったく同じ体験をしていたようだ。 母親はそれから毎月20日の未明に、 必ず白装束の女に追いかけられる夢を見ることとなった。 祖母も昔の経験以来、 毎月20日に必ず同じ夢を見ていたのだが、 母親がその夢を見て以来、 ぱったりと見なくなってしまったらしい。 母親はその後再婚して、 俺と一緒に住んでる土地もはるか遠くに移ってしまった。 祖母は15年前くらいに死んだので実家はなくなったが、 墓だけはあるので、1,2年に1回は墓参りに行く。 今年も3月末に、 女房と6歳になる娘を連れて墓参りに行った。 母親は体調が悪いとのことで、 一緒には行かなかった。 そのときに、 気持ち的にはできるだけあの柳の木を見たくないと思っていたが、 どうしても通ることになった。 俺はなるべく視界に柳の木を入れないようにしていた。 柳を木を通り過ぎたところで、 後部座席に乗る娘が言った。 「あの女の人何してるんかね。 あんな白い薄い服を着て寒くないのかな」 俺は 「え?」 とバックミラーを見たら、 ちょうど柳の木が見えていた。 しかし、俺の目には何も見えない。 娘はさらに言う。 「わぁ。走って追いかけてくるよ~あぶなーい」 俺はアクセルを踏み込み速度を上げた。 女房が 「誰もいないよ?娘ちゃん何言ってるの~」 と言うと、 「もういないよ~」 と娘。 すごく嫌な予感がしたのだが、 娘は行方不明にするわけにはいかない。 祖母や母親のときとは状況が違うから何もない、大丈夫、 と言い聞かせた。 そして今朝のことだ。 寝ていた俺の携帯が鳴って目が覚めた。 母親からだ。 母親は興奮気味に言う。 『今日は夢見の日だから、 覚悟して寝たのだけど、夢は見なかったのよ。 ただね・・・、あの女が何なのか少しだけわかったのよ』 聞くと、女は血縁のある者らしい。 いわゆるご先祖様というのかな。 ひどく苦しい目に合わされたようで、 姉に恨み言を言いながら絶命したらしい。 根拠は何もないが、 そういうイメージが頭に浮かんだらしい。 『夢を見なかったからだけど、 嫁ちゃんや孫ちゃんが心配。どうも女が気にいらないようだから。 嫁ちゃんは大丈夫?孫ちゃんは?なにも変わり事ない?』 「あるわけないだろ!」 と電話を切った。 そして体を起こしてコーヒーを飲んでいたら、 娘が泣きながら起きてきた。 女房があやしながら 「どうしたの~?怖い夢でも見たのかな」 と言うと、 「白い服来た女の人が追いかけてきて怖かったの~」 と泣きじゃくった。
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