怖い話登録数18393話
恐怖感アップダークモード
(0件)
▼コンテンツには広告が含まれています
✕
眠り稲
お気に入り
1347
20
1
中編4分
コピー
「眠り稲」の朗読動画を探しています。YouTubeでこの話の朗読動画を見つけたらぜひ投稿していってください。
※YouTubeのURL必須
開始時間
00時間00分00秒
投稿する
祖父が未だ子供の頃の話。 その頃の祖父は毎年夏休みになると、祖父の兄と祖父の祖父母が暮らす田園豊かな山麓の村に両親と行っていたのだという。その年も祖父は農村へ行き、遊びを良く知っている当時小学校高学年の兄と毎日毎日、朝から日が暮れるまで遊んでいた。 ある日、田んぼ沿いの道を兄と虫網を持ちながら歩いていた。幼かった祖父は眼前に広がる見事な青々とした稲達に感動して、思わず「すげえ、これ、全部が米になるんか」と声に出してしまったのだ、すると「そうじゃ、この村の皆が一年間食べる分じゃ」と言いながら祖父の麦わら帽子に手を置いた。 しばらく二人でその景観を見ていると、不意に兄が口を開いた。「なあ、健次(祖父の名前)『眠り稲を起こすな』って知っとるか?」突然の質問に祖父は戸惑いながらも首を左右に振った。 「『眠り稲』はこの村に伝わる合言葉みたいな物でな、『稲が眠ったみたく穂を垂れても、病気じゃないから変に心配はせんでいい』っちゅう意味らしいんじゃ」へえ、と祖父は驚きと納得が混ざった様な返事をする、この稲が全部眠る事があるのかと思うと、なんとも言えぬ不思議な気分になったという。その夜、晩飯を食い終わり、祖父が縁側で心地よい満腹感を感じていた時、不意に兄から声がかかった。 「健次、花火せんか?」振り向くと大きなビニール袋を掲げた兄が立っている。祖父はすぐに「うん」と返事をした。 この年の子供達は家の中では常に退屈している様な物である。二人は履物をつっ掛け、「ぼちぼち暗なってきたから、気ぃ付けえや」の声を背に外へ出て行った。 田んぼ沿いの道を、花火を持ちながら歩く。赤や黄の火花に見とれながら、度々着火の為に止まる。 そのまま一帯を散歩しようかとなっていた時だった。祖父が特別大きい花火を喜んで振り回していたら、近くの民家の窓が開き、祖父さんが怒鳴った。 「くらあ!餓鬼共!そないな物振り回して、稲が燃えて駄目になりでもしたらどないしてくれる!」いきなり知らない大人に怒鳴られて、祖父は勿論、兄もびっくりし、涙目になって逃げだしたという。祖父は今でも、家に帰り着いてから兄が「糞親父、今に見とき」と呟いたのを覚えているという。 ――深夜、祖父は自分を呼ぶ声で目を覚ます。目を開けると、徐々に輪郭を持ち始める闇の中に兄の顔が見えたという。 「なあ、面白い事考えたんじゃ」一体何をこんな夜中に思い付いたのだろう。「今からあの糞親父の田んぼ行って、案山子を引っこ抜いたるんじゃ、健次も来るか?」祖父は余りに驚き、必死で首を振って拒否した。 「そうか、行かんか。それでもええんじゃ、けだし、大人達には俺じゃって事、ばらしてくれるなよ?」祖父は頷いた。 兄は一人で行って来るのだろうか?兄が部屋を出て行く気配を感じたのを最後に、また祖父は深い眠りに落ちて行った。――翌朝。 何か悪い夢を見た気がする。祖父は目を擦りながら家族が待つであろう一階へ降りた。 異様に静かだ。というより、誰もいない。 祖父は嫌な予感がした。兄が取っ捕まったのじゃないだろうか?寝間着のまま急いでわらじを履いて外へ駆け出した。 田んぼ沿いの道を、走る。やがて例の農家が近付くと、異様な人だかりが見えた。 嫌な予感はますます強まり、人だかりを必死でかき分けて祖父は田んぼを見たという。――そこには、案山子があった。 いや、それは兄だった。両足を田んぼの泥に突っ込み、両手をバランスでも取る様に水平にしている。 口からは涎が垂れ、目の焦点はあってない。「兄やん……?」祖父はそう言うのがやっとだった。 家族は兄を家に引きずる様にして連れ帰り、深刻な顔で話始めた。「眠り稲を起こしよったな…」「あれは気が触れてしまってるのう…」幼い祖父にはなんの事か分からない。 結局祖父には何も分からないまま、その年は早く地元へ帰り、もう毎年兄の住む農村に帰る事はなくなったという。「眠り稲を起こすな」この言葉の真意を、祖父が知ったのは、兄の葬儀の為に最後に農村へ帰った時。 これが意味するのは、決して稲が穂を垂れても~という事じゃない。『草木も眠る丑三つ時、田んぼに行ってはならない』という村の暗黙の了解の様な物だったのだ。 丑三つ時の田んぼに行った兄、タブーを犯してしまった兄にあの夜何が起こったのかは分からない。もしかすると化け物に襲われたのかもしれない。 とにかく、人間には想像すらできない様な正体を持つ伝承は、日本のあちこちにひっそりと息を潜めているのだという
怖い話を読んでいると霊が寄ってくる?不安な方はこちらがおすすめ
1人が登録しています
感想や考察があればぜひコメントで教えてください ↓コメントする
この話は怖かったですか?
怖かった20
次はこちらの話なんていかがですか
続きを読む
※既読の話はオレンジ色の下線が灰色に変わります
Amazon無料でスグに読める本
美味しいご飯が食べたくなる漫画⑩: 変化編 美味しいご飯が食べたくなる漫画【にしみつ】
無能は不要と言われ『時計使い』の僕は職人ギルドから追い出されるも、ダンジョンの深部で真の力に覚醒する THE COMIC 1 (ライドコミックス)
悪いのは、私ですか?【6】: 職場編 ぼめそのエッセイ漫画集
私たちに愛されたい妹 読者さんの恋愛・浮気体験談
【考察版】廃棄!コンビニお姉さん 無料まんが集 by きたしま
治癒魔法は使えないと追放されたのに、なぜか頼られてます~俺だけ使える治癒魔法で、聖獣と共に気づけば世界最強になっていた~2巻 (グラストCOMICS)
名無し
くねくね みたいなモノが出たのかな?
前の話:【洒落怖】理不尽な監禁
次の話:【洒落怖】人型のシルエット
怖い話 No.8056
【洒落怖】爺ちゃんの告白
1739
52
0
短編2分
怖い話 No.21266
【洒落怖】図書館で本を借りた
1120
33
怖い話 No.1438
【洒落怖】手を打ち鳴らす音
1756
29
中編3分
怖い話 No.20440
【洒落怖】親の小さな別荘に泊まった
1705
45
2
怖い話 No.21521
【洒落怖】穴場の海水浴場
1182
10
怖い話 No.14651
【洒落怖】屋根裏部屋で話す
2158
58
怖い話 No.2093
【洒落怖】黒い手の仕業?
1445
30
怖い話 No.21378
【洒落怖】着物を着た男性
1331
21
長編6分
怖い話 No.9374
【洒落怖】無数の手形
2487
25
長編5分
怖い話 No.525
【洒落怖】湯船から・・
1532
心霊サイト運営者
全国心霊マップ
ghostmap
プロフィール
Twitter
新着洒落怖
留守番電話
舞台学科による演劇
分譲現場
謎の会話
たけのこ掘り
かんのけ坂
4階のベランダから落ちた友人
林間学校で登山
自転車に乗っている夢
雄別炭鉱
運動会?
坪の内
新着コメント
お父さんはお母さんを人間扱いしてくれないの!
手を引っ張るモノ
裏S区?
(´・ω・`)
邪視
真夜中の花嫁
もうお一人様乗れる余裕が御座いますが、いかが致しますか?
長い髪の毛
腕章の少年