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激安下宿
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親戚繋がりで知り合った方が元同人活動してたんだけど、その人が体験した話をしますね。一応、その方をTさんとしておきます。この話、過去に一度聞いたんだけど、より詳しく聞く為に(てか、ここに載せる為に)先日会って、出来るだけ細かい所まで聞きました。なので、少々長くなると思いますがご容赦下さい。Tさんは前述の通り既に同人活動を引退してるんだけど、Tさんが同人現役だった20年位前の話。その頃のTさんは大学生。 それに加えて貧乏。なので、とにかく激安下宿を探して即決。まあ、安いには安いなりに理由がある訳で、まず建物がヤバイ位に古い。そしてトイレ・台所・風呂は共同。けど、下宿には部屋が幾つもあるのに、住んでるのはTさん1人。だからトイレも台所も風呂も、実質Tさん専用。更には、大家さんが「アンタ(Tさん)が出たら取り壊す予定だから、好きに使って良い」なんて言う。学生にとっては、理想的な環境だね。そんな環境なもんだから、Tさんとサークル仲間(当時、Tさんは学生仲間で同人サークルを組んでた)は、下宿を溜まり場にして、暇さえあれば夜中から朝方まで騒いでた。騒ぐって言っても、ただ酒飲んだりするだけじゃなくて、漫画やアニメ・自他問わず同人誌を仲間内で評論したり、皆で協力して同人誌作ったり、(当時はパソコンを使わず、オール手作業)これからの漫画やアニメ、同人についてとか、好きな子の話とか大学の講義やレポートについての話とか。ちょっと脱線しちゃうけど、Tさんは晴海や幕張でコミケが開かれていた頃の話や、皆で協力し合って同人誌を作った話をしてくれた。特に同人誌の執筆に関しては、今よりも「人対人の、直接的な交流」が活発だったんだな、と感じた。話を元に戻します。で、早速というか何と言うか。下宿に来た同人サークル仲間の1人(以後、Uさん)が「ここ、ヤバイなぁ、凄くヤバイ」発言。何がヤバイかって言うと、下宿に結構強烈な奴が憑いてると。その時集まってたメンバーは「U、何言ってんだよ、お前~」みたいな感じで軽く流したそうだけど、Tさんが1人になると、やっぱり落ち着かない。だから、下宿には頻繁にサークル仲間やら同じゼミの人間やらを呼んだり泊まらせたりした。けど、毎日必ず誰かを呼べるって訳でもなく、Tさん1人になる時もある。そんな日は、早々に寝たりしてた。でも、いつの頃からか、部屋の外(廊下とか共同台所とか)では幽霊が好き勝手に暴れるようになった。誰かがひたすら廊下を歩いてたり、一晩中ブツブツ言う奴が居たり、押し殺したような笑い声が聞こえたりとか。その都度、Tさんは廊下を見回ったりするんだけど、誰も居ない。けど、部屋に戻ると再び廊下を歩く音やヒソヒソ声・笑い声がする。つまり、ずーっと『幽霊のターン』状態。Tさん的には、こんな和製ボーリー牧師館みたいな下宿はとっとと出たい。けど、Tさんには引越し費用が無い。いや、それ以上にサークル仲間が「お前がソコを出たら、俺達はどこで同人活動するんだ!」と大反対。まあ、同人活動の場ってか騒ぐ場所が無くなるのが、サークル仲間にとっては痛かったらしい。そこでTさん、最初に下宿の異変を悟っていたUさんに相談した。本当は大家さんにも相談したかったんだけど、大家さんは底抜けに良い人で、何となく言い難くなって断念。Uさんは解決策として、Tさんに塩を盛らせたりした。でも、Uさんは「お前、早くここ出た方いいぜー。正直、俺じゃどうにも出来ないって。このままだと、お前喰われるぜー」なんて事を言う。まあ、普通だったらこんな下宿には絶対住めないけど、Tさんは2年間も住み続けた。Uさんが色々してくれたって事もあるけど、やっぱりサークル仲間が頻繁に出入りしたり、可能な限り泊まってくれたりしたのが、大きかったみたい。でも、やっぱり最後は出る事になる。ある日の晩、Tさんは用事があって遅い帰宅をした。暗い裸電球が点く廊下を歩き、自室のドアを開ける。すると、真っ暗な部屋のど真ん中に、女性が仁王立ちしていた。部屋は真っ暗なのに、彼女の姿はシッカリ見えてしまった。着ている服はボロボロ。ボロボロ過ぎて良く分からないけど、多分着物。で、女性の髪は何故かぐっしょり濡れている。その髪は異常に長く、膝下ぐらいまで伸びている。そんな人が真っ暗な部屋で突っ立っている。しかも、Tさんにガン飛ばしてる。それだけでも十分に恐怖だけど、Tさんが一番恐かったのは、彼女に『顔』が無い事だった。目玉はちゃんとある。けど、その他のパーツが判別出来ないぐらい、顔が滅茶苦茶になってた。ちなみに顔が滅茶苦茶なのに女性と思ったのは、髪の長さと体型から、らしい。そんな人が、真っ暗な部屋の中央に立って目玉だけギョロギョロさせて、Tさんを睨んでいる。しかも、その目の動きの早いこと早いこと。せわしなく上下左右に目玉を動かし、Tさんの上から下まで舐めるようにガン飛ばし。『絶対に人間じゃない、コイツは幽霊だ!』Tさんは逃げようとするが、体が動かない。相手はそれを悟ってか、畳を擦るような音を立てながら、ゆっくりとTさんに近付いてくる。当然、その間も目玉はグリグリ動きまくってる。『もう駄目だ、俺はコイツに殺される』そう思った時、手に持ってたカバンが床に落ちた。すると、何故か今まで動かなかった体の自由が戻った。もちろん、Tさんは即座に下宿を脱出。脱出する時、背後から獣が吼えるみたいな声がしたけど、とにかく逃げた。下宿から逃げ出したTさんは、結構遠かったけどUさんの家まで逃げた。深夜にも関わらずUさんは起きていて、Tさんの様子を見るなり、「出たか?見たか?女見たか?見たなら、もう駄目だな。お前、もういけないよ。あそこは出た方がいい」と言う。Tさんは無言でガクガク頷いた。Tさんは次の日からすぐにUさんと2人で下宿を捜し歩き、少々割高になるけど別の下宿に引っ越すことになった。引越しの日までは何日かあったけど、Tさんはあの下宿に絶対戻りたくないので、頼み込んで何日間かUさん宅に間借りした。数日後、Tさんはサークル仲間に頼み込み、昼間を選んで引っ越し作業をした。出来ればTさんも荷物の梱包や運び出しの作業をしたかったんだけど、恐くて下宿に近付く事すら出来なかった。お金の方は、親に泣き付いて何とか出して貰ったとの事。後にUさんが語ったところによれば、あの幽霊は以下のような感じだった。Tさんが部屋の中で見た女性は、一言で言えば危ない奴。理性がぶっ飛んで、怨念の塊みたいになっている。で、あの下宿そのものってか土地に憑いている。夜に室外で騒いでたのも、この女性。姿を見せずに部屋の外で騒ぐぐらいなら、まだ良かった。でも、(Uさんが言うには)あまり霊感の無いTさんまでも女性を見てしまった。それでUさんはいよいよ危ない、と思ってTさんに下宿を出るよう勧めた。じゃあ、そもそも女性は一体何者なんだろう?って事になる。それについては、少なくとも2~300年も前、もしかしたら更に遡る位、昔の人だと思う。けど、何者なのかは全く分からない。何故、あの土地に憑いてるのかも不明。Uさんが何とか探り出そうにも、数百年も経って怨念ドロドロ状態な上、下手に探って刺激すると大変なので、探る事は不可能だった。ただ、Uさんが女性を見た時も、彼女は顔が滅茶苦茶な上、頭部が割られて流血した状態だった(Tさんは恐怖の余り、頭部が割られている事までは気付かなかったそうだ)。で、彼女の髪が濡れていたのは、水で濡れてたんじゃなくて血。少なくとも、尋常な死に方じゃない。けれど、顔だけが滅茶苦茶になってたって事は、恋人絡みとか愛人絡みで怨まれ、あの場所で殺されたのかも…との事。とにかく、Tさんは引っ越してからは平穏無事に生活出来ました。大学卒業まで目一杯同人活動して、卒業と同時に同人からも卒業。けれどUさんを含め昔の同人仲間とは、今でもたまに連絡を取り合ってるそうです。
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