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十数人のグループ
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人が聞いて怖いかどうかはわからないが、当時の私はちょっと背筋が寒くなった出来事。あれは奥武蔵野のどこかを、日帰りで歩いてきた帰りだった。晩秋だったのでのんびりしていたら、いつの間にか夕闇が迫ってきていた。車道に出て、西部秩父線の駅までの道を歩いていた時だ。車もほとんど通らず、他に通る人もいない沢沿いの曲がりくねった道を独り歩いていて、ふと振り返ると、十数人のグループがはるか後方から歩いて来るのが見えた。 やはりどこかの山へ登ったハイキングの人たちかと思い、はじめは気にも留めなかった。ところが、少しして振り返ると、その距離があまりに近づいているので驚いた。自分がそんなにのんびり歩いていたのかと、少し足を速めたが無駄だった。やがて集団は凄い速さで近づいて来て、一人一人の姿がはっきり見えた。60代くらいの夫婦かと思われる品の良い男女を中心に、30~40位の男女数人と、小学~高校生くらいの子供数人。なんとなく、老夫婦とその子供夫婦と孫たちという感じがした。お互いにこやかに談笑していて、それだけ見れば良いファミリーのようなのだが、しかし、足だけはまるで宙を翔けるようにして、一糸乱れず、一団となって歩いて行くのが異様な感じだった。不思議なのは、いくらかでも登山ぽい格好をしていたのは、じいさんとばあさんだけだったこと。後のメンバーは旅行カバンのようなものを下げているかと思えば、大きな魔法瓶を持った男性などがいた。道の反対によけて呆れながら見送る私の方など見向きもせず、集団はあっという間に遠ざかり、やがて見えなくなった。しばらくして駅に着いたが、前の列車に乗ったのかどうか、すでにその人たちの姿はなかった。五木寛之の『風の王国』を読んだのは、それから少ししてからだったと思うが、あれを見たので、今もそういう伝統を持つ人たちがいるのかもしれないと思っている。
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