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深い霧
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知り合いの話。親戚と二人で山菜採りに出かけたところ、折からの深い霧ではぐれてしまった。「おーい」と大声で呼びながら探し続けるうち、霧の向こうから「おーい」と応えが返ってきた。やっと見つけられたと喜んで、「おーい」「おーい」と互いに呼び合いながら距離を詰めていき、ようやく大きな木の下で落ち合えた。しかしそこで出会った者は、はぐれた親戚ではなかった。霧を割って姿を現したのは、藁製の蓑を身に付けた一つ目の大男だった。 こちらも仰天したがあちらも負けず驚いている様子で、しばらくお見合いしてしまう。やがて一つ目が口を開いた。訛りが酷く聞き取りも容易でなかったが、何とか意思の疏通が出来たらしい。「どうやらお互いに、相手を間違えちまったようだナ」深く息を吐いてから続ける。「この奥にはもう足踏み入れんナ。儂ももう、こっから先は行かんけン。お互イのハスミ(?)じゃあねえから、戻れんようになるゾ。お前さんも探し人が見つかると良いノ」そう述べた後、一つ目は霧の奥に戻って行く。微かな呟きが耳に届いた。「こうなシバイ(?)日にゃ、イタケ(?)なキモ(?)と出会うちゅうが、いやいや……」訳のわからない単語混じりだが、言っていることの意味は何となく理解出来た。急に場違いな領域に侵入した気がして、慌てて元来た方へ足を戻す。それからしばらくして、親戚とは無事に再会できた。しかし山を無事に下りるまでは、一つ目の話はしなかったそうだ。
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