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夜中に出かけた
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連休の山小屋には色々な客がいる。相部屋になったのは外国人、高校生、若い会社員と、珍しい取り合わせだった。夕飯を食い、部屋に戻って皆で話しているうちに俺は眠ってしまい、夜中にトイレへ行きたくて目を覚ました。トイレは部屋を出て廊下の先の方にある。廊下へ出て玄関を通りかかると、相部屋の会社員が背中を丸めて出発の準備をしている。 午前2時。「早いね」と声をかけ、小声で話し、その日の行動予定と目的地を聞いた。やがて靴を履き終え、ザックを背負い、ヘッドランプをつけ、彼は出かけていった。暗い部屋に戻り、ベッドに目をやると、そこには今出かけたばかりの彼が寝ている。声が出そうになり、不思議に思い、声をかけようかと少し迷い、結局そのまま俺は自分のベッドに戻った。朝起きると彼の荷物はベッドの上にある。食堂へ行き、彼の正面に座った。飯を食いながら、夜中の2時に彼を見送ったことを話した。彼は俺の話を最後まで聞き、「ふぅん」と呟いた。「たまに聞くんですよ、その話。山で自分が夜中に出かけたって話です」何が起こっているのだろう。俺は勿論、彼にも分からない。「ただね、」と彼は言う。「たぶん今日と明日は、ここから動けないんですよ」理由を訊ねる俺に、彼は靴が無いからだと言った。服も荷物も全部残っているのに、靴だけが消えるらしい。で、翌日か翌々日の朝になると靴が玄関に戻ってくる。どこを歩くのか毎度びっくりするほど汚れた靴が、玄関にちょこんと置かれていると言う。「出かける自分と鉢合わせしたことは?」「それがないんですよねえ。口惜しいのは、その日は絶対に晴れるってことです。それと、泊りが延びるから、余計な宿代ね」彼は笑った。朝食後、俺は彼に見送られて小屋を出た。見上げるだけで頬がゆるむような晴天。もうひとりの彼はきっとご機嫌だろうなと思い、俺は歩き出した。
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