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ワンルームマンションで一人暮らし
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社会人になり、このワンルームマンションで一人暮らしを始めたころの話です。そのマンションは作りも立地もよく、そして家賃がかなーりお安くと、何より大卒リーマンにとってはすべてが好条件でした。初日は引越しの疲れもあってすぐに熟睡。が、朝はなんか寝足りない気分でした。就職準備やら家具の買い物やらで、次の日も熟睡できるかなと思ったのですが、ところが次の日も、朝は気分がさめませんでした。 そんなこんなで、いよいよ明日が初出勤という夜、緊張のせいかなかなか寝付けず、さらになんだかのども渇き、ビールを開けて一気に飲み干して、また布団に入りました。しばらくしてうとうとしかけたころ、部屋の片隅が気になった。目を開けて見ると、ぼやけていたが何やらそこに立っている。だんだん焦点が合ってくると、それは鎧武者でした。手には弓矢を持ち、そして『はなてーーー!』みたいな口の動き(声は聞こえなかった)をし、その矢は私の方に飛んできた。そして私は気を失った。翌朝は目覚ましの音で起きた。部屋の中はいつもと変わらないし、私にももちろん傷も無かった。その日は初出社ということで、緊張感でなんとか乗り切った。家に着くと、寝不足も重なり疲れがどっと出てきて、その日は夕食を取るとすぐに寝た。しかし夜中、ふと目が覚めると、またあの鎧武者が出てきて矢を放った。そして私は気を失う。こんなことが毎日続き、寝不足で仕事も集中しきれず、毎日怒られる日々。とうとう私も我慢しきれなくなった。その日は金曜日、次の日は休み。今日はあの武者と戦う、決戦!決戦は金曜日!!戦うといっても相手は幽霊。言葉でこちらは応戦しよう。まずコンビニでお酒、するめなどのつまみを買い、夜に備えた。部屋を暗くして、ふとんの中でじっと待つ。2時過ぎかいつもの気配。今日は気絶しないようにと、お酒を一口一気に飲み気合を入れて、布団からがばっと出てみた。武者はいつものように『はなてーーーー』の口の動きと共に矢を放つ。その瞬間、私は「おいちょっと待て!毎晩毎晩矢を放っても俺には通用しない」。止まる武者。「まあ話を聞け。もうこの時代は、おまえさんの生きた時代じゃないんだ。それを今は理解できないかもしれないが。とにかく、お前さんがここにいることはいっこうに構わない。ただ、毎晩矢を放つのはやめて欲しい。それと、これはお酒だ。つまみも置いておく。好きにやってくれ」と、私は日本酒をコップに注ぎ、するめを皿に置いて、そのまま就寝した。すると、翌晩からは鎧武者は現れなくなった。私は話が通じてくれたのだと思い、毎日酒とつまみをテーブルの上に置いてから就寝した。たまにビールやワインなども置き、「おい、これは現代の酒だ。試してみな」と独り言のようにしゃべっては寝た。それからは寝不足もなくなり、仕事も順調にすすんでいった。たまに仕事が遅くなったり飲み会で遅く帰ってきたときも、寝る前に新しいお酒とつまみ。つまみもポテチやスーパーの惣菜など、さまざま(自分も食べてたしな)準備して寝た。仕事が終わらなく深夜までパソコンを使いながらの日は、ふと「あんたも夜中まで仕事することとかあったのかい?」なんて聞いたり、パソコン使いながら、「なあ、俺のいない時間にこの箱使ってみなよ。こうやって検索したらいろいろ調べられるぜ」などと話しかけたりもした。そうこうしているうちに転勤で引っ越すことが決まり、引越し準備やらなにやらでお酒を忘れて、何日か寝てしまったある晩。夜中に目を覚ますと、彼はただじっとそこに立っていた。前のように弓矢は手に持っていなく。「ああ、そうかすっかり忘れていたよ。ごめんな。」と俺は酒をテーブルに置きまた寝た。明日引っ越すという晩に私は、「俺は明日でここからいなくなってしまう、あんたもそろそろどこかへ入ったらどうだ、まあ今日はとことん飲もう」と、コップ二つ出して飲んだ。「そういや今日、宝くじ買ったんだ。これなんだかわかるか?この数字があたると大金当たるんだよ」そんなこと言いながら飲み、そして寝た。次の日は引越しでばたばたしたが、出る前に床に日本酒を紙コップに入れて、そのマンションを後にした。新居では何事も起きなかった。しばらくして、ふと忘れていた宝くじを見つけた。10万当たっていた。もしや、あの武者のお礼だったのかも・・・
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