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追いかけてくる
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小学生の頃だから はっきりと覚えてるわけではないんだけど 実家の近くに山というか林みたいなのがあって、 暖かくなると学級の男子みんなでモデルガンで遊んでた。 普通の道路をそれて、 けもの道を結構歩いたところと場所は決まっていて、 ここなら木も多くて雰囲気が出るし、 大人には絶対にばれない場所だった。 お小遣いが少なかった俺は サイレンがなったらみんなと帰るふりをして、 実は一人でみんなが落としたBB弾を拾って 弾代を節約していた。 その日も一人残り、 林の中を歩きながら手探りでBB弾を拾い、 缶に入れていた。 時計なんて持ってなかったから 何時だかはわからないけど、 5時は過ぎていたはず。 缶がいっぱいになったあたりで帰ろうとすると、 近くの茂みからガサッと音が聞こえた。 はじめは、 音の正体は近くに住んでる大人だと思った。 もしこんな遅く(とは言っても5時過ぎだが)に モデルガンを持ってちょろちょろしてたら 親に告げ口されると思って、 その場にしゃがんで精一杯見つからないように祈っていた。 その音が近づいてくることはなくホッとしたが すぐに違和感を感じた。 音がやまない。 自分から5メートルくらいかな? 少し距離をおいたところで 鳴り止む気配はない。 この時点で人ではないことは分かった。 きっとタヌキとかハクビシンとかだろうと予想したが、 猪だったりしたら大変だと思い、 しゃがんだままゆっくり離れた。 しかし、 歩いても歩いても音が小さくならない。 そこで、 一度止まって後ろを振り返った。 何かがいたわけではないが、 さっきと同じような距離をおいたところで 音は鳴り続けている。 止まる気配はない。 動物でもこんなことありえないはず、 と思った。 もうしゃがみながら動くのはやめて、 立ち上がって全力で来た方向に走った。 それでもやはり、 音が小さくなることはない。 多分、 同じような間隔をあけて 追いかけてきていた。 しばらく走ると、 道路に出た。 草むらより走りやすくなって 坂を下っていることもあり、 とんでもなくスピードが出た。 それでも後ろから ガサガサと音は追いかけてくる。 泣きそうだった。 後ろを振り返るほど 心に余裕はなかった。 必死で道路を走っていると、 もう林を抜ける頃だった。 木々や草はほとんどなく、 完全に砂利道だ。 勝った!と思った。 逃げ切れたのが嬉しかった。 だがすぐにそうではないことに気がついた。 今度はガサガサとした音ではなく、 ザクザクと地面をける音になった。 後ろで誰が走ってるのかなんて もうどうでも良かった。 このままじゃ捕まる。 捕まった俺は… という大きな恐怖が襲いかかってきた。 確かこの辺りで 我慢しきれなくて涙があふれた。 どこまで追いかけてくるのか、 どこまで逃げればいいのかはわからなかったが、 家に付けば何とかなると思った。 まだ外が少し明るいのがせめてもの救いだった。 そしてとうとう家の前まで来たが、 足音はまだついてきていた。 ドアを開けて中に入り、 急いでドアと鍵を閉めた。 玄関で中学生の兄貴が 「お帰り。なに、泣いてんの?」 なんてヘラヘラ笑っていた。 俺は鍵を閉めたそのままの勢いで 兄貴に飛びついた。 玄関の外ではもう音はしておらず、 安心して声を出して泣いた。 兄貴は 「いじめられたのか?」 と心配した様子で 俺を抱いたまま話しかけてきた。 その後家族みんなが出てきて 何があったのか聞かれ、 俺は何があったのか全て話した。 誰も信じている様子ではなかったが、 父は 「まあ山なんて何がいるかわかんねえからなあ、 気をつけろよ」 と言って俺の頭を撫で、 モデルガンの没収と 一ヶ月の外出禁止を宣告した。 これ以降、 俺は一人で林に入ることはなくなった。
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