怖い話登録数18393話
恐怖感アップダークモード
(0件)
▼コンテンツには広告が含まれています
✕
背無し
お気に入り
2670
42
0
長編5分
コピー
「背無し」の朗読動画を探しています。YouTubeでこの話の朗読動画を見つけたらぜひ投稿していってください。
※YouTubeのURL必須
開始時間
00時間00分00秒
投稿する
会社からの帰路の途中、 ある大学の前を通る。 そこは見晴らしの良いただの直線だが、 何故か事故が多いことで有名だった。 その道をあまり使わない人には分からないだろうが、 毎日車で出勤するオレや同僚には事故の理由は明白だった。 あるおっさんが原因なのだ。 そのおっさんは 大学手前の横断歩道の脇に立っている。 それも毎日。 雨の日も昼も夜も、 ただ無表情で突っ立っている。 そして何故か カラダごと真っ直ぐこちらに顔を向けているのだ。 おっさんに気付いてからしばらくは 「気味が悪い人がいるなぁ」 程度の認識しかなかった。 しかし更なるおっさんの異常性に気付くのに、 そう時間はかからなかった。 おっさんはカラダごとこちらを向いている。 いつ、どんな時でも。 例えば横断歩道の手前30mから おっさんを認識したとする。 「ああ、今日もいるな。 そしてこっち見てる…」 そのまま横断歩道を通過して、 素早くバックミラーでおっさんを確認すると、 やはりこちらにカラダごと顔を向けているのだ。 この異常さが理解出来るだろうか? おっさんはどんな時でも必ず、 真正面からこちらを見ているのだ。 向きを変える気配すら見せず、 瞬時にこちらを追跡してくる。 それに気付いた時オレは確信した。 あのおっさんは人間ではないのだと。 うすら寒さを感じたオレが そのことを同僚に話してみると、 そいつもおっさんのことを知っていた。 何でも地元では 「背無し」という名称で有名らしい。 確かにおっさんは正面しか見せない。 後頭部や背中は見たことがなかった。 変な霊もいるんだな、 とその日は同僚と笑い合って終わった。 オレがビビりながらも、 ある思いを持ったのはその時だった。 何とかしておっさんの背中が見たい。 そう思うようになったのだ。 毎日通勤しながらおっさんを観察する。 普通に通るだけではダメだ。 おっさんには全く隙が無い。 通過後、 バックミラーに目を移す瞬間に おっさんはカラダの向きを変えてしまう。 オレはチャンスを待つことにした。 数日後、 残業で遅くなったオレは 深夜の帰路を急いでいた。 そしてあの道に差し掛かる。 目をやると、やはりいた。 おっさんがこちらを向いている。 「背無し」の由来を思い出したオレは 素早く周りを確認した。 深夜の直線道路。 幸い前後に他の車は無く、 歩行者もいない。 信号は青。 チャンスだった。 横断歩道の手前でぐっと車速を落として ハンドルを固定する。 とにかくゆっくり、 真っ直ぐに。 そして心を落ち着け視線を向けた。 おっさんはいつものように 無表情でこちらを見ている。 目は何の感情も示しておらず、 本当にただ立っているだけだ。 しかし改めてじっくり見るおっさんは、 いつもより不気味だった。 何を考えているか分からないというか、 得体が知れないのだ。 やがて車は ゆっくりと横断歩道を横切っていく。 目線はおっさんから外さない。 怖くても意地で見続けた。 するとオレが目線を切らないから カラダの向きを変える暇が無いのか、 いつも正面からしか見れなかったおっさんの顔の角度が ゆっくりと変わっていく。 車の動きに合わせて ゆっくり、ゆっくりと。 おっさんは始めの向きのまま微動だにしない。 ついにおっさんの完全な横顔が見えた時、 「これはいける!」 と確信した。 おっさんから目線を切らないために オレも顔の角度を変えなければ行けないため、 今や車の後部ガラスからおっさんを見るような体勢だ。 当然前なんか見えちゃいないが、 気にもしなかった。 もうすぐで「背無し」の由来に 打ち勝つことが出来るのだ。 そうしてゆっくりと永い時間が流れ… ついにその瞬間が訪れた。 「背無し」の今まで誰も見たことの無い背中が 後頭部が、今はっきりと見えているのだ。 それはあっけない程に凡庸な背中だった。 何一つ不思議なところは無い。 しかしオレの胸には ささやかな達成感があった。 じっくりと背中を観察し 満足感を味わったあと、 オレはようやく目線を切って前を向いた。 いや、向こうとした。 目線を切って前を向こうとしたオレは しかし、あるものを見て固まった。 助手席におっさんがいた。 もの凄い怒りの形相で。 心臓が止まったかと思った。 「うわぁあ!」 オレは悲鳴を上げ ブレーキを踏んだ。 徐行していたはずの車は 何故か強烈な衝撃とともに電柱に激突し、 オレは失神した。 翌朝、病院で目が覚めたオレは すぐに警察の聴取を受けた。 幸いにオレを除いて怪我人は無し。 オレの車が全損した以外に 大した器物損壊も無かった。 警察は事故の原因を スピードの出し過ぎによる暴走運転と断定したが、 オレは抗議する気力も無かった。 あんなこと、 話す気すら起きなかった。 あれから5年。 オレは通勤のために 今もあの道を走っている。 おっさんは変わらずいるし、 相変わらず事故も多い。 ただ一つだけ変わったことは、 オレがおっさんの方を見なくなったことだろう。 あの時、 聴取の警察官がボソッと言った。 「今回は連れて行かれなかったか」 という言葉が今も耳から離れない。
怖い話を読んでいると霊が寄ってくる?不安な方はこちらがおすすめ
感想や考察があればぜひコメントで教えてください ↓コメントする
この話は怖かったですか?
怖かった42
次はこちらの話なんていかがですか
続きを読む
※既読の話はオレンジ色の下線が灰色に変わります
Amazon無料でスグに読める本
美味しいご飯が食べたくなる漫画⑦: おばあちゃん編 美味しいご飯が食べたくなる漫画【にしみつ】
追放された元雑用係、規格外の技術で「最高の修繕師」と呼ばれるようになりました~SSSランクパーティーや王族からの依頼が止まりません~2巻 (グラストCOMICS)
勇者パーティから追い出された不遇職【罠士】、ユニークスキル【矢印】で最強になる【電子単行本版】1 (comic スピラ)
スキル【再生】と【破壊】から始まる最強冒険者ライフ~ごみ拾いと追放されたけど規格外の力で成り上がる! ~2巻 (グラストCOMICS)
解雇された宮廷錬金術師は辺境で大農園を作り上げる~祖国を追い出されたけど、最強領地でスローライフを謳歌する~2巻 (グラストCOMICS)
解雇された宮廷錬金術師は辺境で大農園を作り上げる~祖国を追い出されたけど、最強領地でスローライフを謳歌する~1巻 (グラストCOMICS)
前の話:【洒落怖】釣れた
次の話:【洒落怖】父と丸太と保母さん
怖い話 No.14593
【洒落怖】女傑家系
1660
34
2
1
短編2分
怖い話 No.10411
【洒落怖】アンダーワールド
1576
14
短編1分
怖い話 No.8261
【洒落怖】もう少し
1550
16
怖い話 No.21256
【洒落怖】パン工場
1278
21
怖い話 No.17865
【洒落怖】びいだま
1720
44
怖い話 No.7857
【洒落怖】秘密の仕掛けもした
1241
35
中編4分
怖い話 No.7283
【洒落怖】手毬
1587
18
怖い話 No.563
【洒落怖】とある下道
1721
32
中編3分
怖い話 No.9142
【洒落怖】噂の廃屋
朗読 怪の談り -カイノカタリ-
2617
長編7分
怖い話 No.9507
【洒落怖】怖いもの
1514
心霊サイト運営者
全国心霊マップ
ghostmap
プロフィール
Twitter
新着洒落怖
留守番電話
舞台学科による演劇
分譲現場
謎の会話
たけのこ掘り
かんのけ坂
4階のベランダから落ちた友人
林間学校で登山
自転車に乗っている夢
雄別炭鉱
運動会?
坪の内
新着コメント
消えた彼女
でんわ
でんでん
着信7百回の男
戦中の魔物
オヤジ殺し
笑う女の夢
はいじま駅
団地での新聞配達