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池と女
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これは、俺が学生の頃の話。 俺の故郷って糞が付くほど田舎なんだ。 冗談抜きで今の時代にコンビニも無い様な所でな。 で、実家は糞が付くほど田舎の、 更に廃れたきったねー神社なんだよ。 俺、学校に行くのにバス使ってたんだ。 田舎だからバス停の目印になるような物がうち位しか無くてな。 俺にとっては結構便利なんだが、 何せ田舎の山奥でバス使う人間も限られててな。 乗る時も降りる時も俺一人だし、 バスに乗ってる人も知ってる人ばっかりなんだよ。 だけどその日は少し違った。 学校の帰りにバスに乗るとさ、 いつもは俺の貸切なんだ。 だけど珍しく人が居る。 いつも乗り降りに便利な先頭にさっさと座るから、 あんまり良くは見てなかったんだが女の人みたいでな。 「珍しいなぁ」なんて思ったけど、 部活の疲れもあってそれ程気にしないで イヤホンの音に意識を預けた。 車窓に流れる景色を眺めながら、 もうすぐ家だって所まで来たから降車ボタンを押した。 うちの前のバス停に停まって、 俺は定期を見せてバスを降りる。 いつもなら俺が降りたらすぐ発車するんだけど、 発進する音がしない。 「何だ?」って思って後ろ振り返ると 女が降りてくるのが見えた。 うちの周りってさ、人家が無いんだよ。 ホント村落の外れも外れにポツンとある神社だからさ。 いよいよもっておかしくないか? この先に在るのなんて、 せいぜい小さい滝か池くらいだ。 田舎なんて日が落ちるのも早いし、 外灯もある訳じゃ無し。 俺が部活終わった時間なんて19時過ぎてる。 そんな時間に女が一人で行って良いようなトコじゃない。 一旦家に帰って玄関に鞄とかダーッと置いて、 心配だったからすぐ様子を見に行ったんだよ。 そしたらその女、 神社の裏山に入っていく。 獣道しか無い、 舗装されてない山道だ。 俺も少し不安になってきてさ。 慣れてる道ではあったんだけど、 怖さもあってこっそりついてった。 真っ暗な道を、 ライトも無しにどんどん進んでいく女。 ビビリながら必死でついていく俺。 「何で俺こんな事してんだろう…?」 「大人しく家に帰ってりゃ良かった…」 後悔の感情が浮かんでは消え浮かんでは消える。 ようやく女が立ち止まると、 物心ついてから遊び場だった、 俺の庭とも言える裏山なのに初めて見る場所だった。 「こんな所が在ったのか」 とか、その時は妙に冷静だった。 そこは、周りには木が無くて、 森の中にポツンと穴が開いたような場所だった。 目を引くのは月が浮かんだ池。 その前に女は立っている。 どれくらい見てたのか・・・ なんか女が自殺でもするんじゃないかと思ってハラハラしてた。 ずっとその女から視線を逸らさなかったんだが、 不思議な事に突然フッと消えてしまった。 ビックリして身を隠してた木から出て、 池の周りを半泣きになりながら探した。 波も立ってないから身投げした訳でも無さそうだし、 周囲にすぐ隠れられるような所も無い。 なんか段々怖くなって来てさ。 逃げた。走って逃げた。 泣きながら家に飛んで帰って、 神主やってるじーさんに成り行きを話した。 「すぐその場所に案内しろ」 って言われてさ。 俺も分からないままなのは怖いし、 じーさんも一緒に居れば安心だろうと思って、案内した。 凄く怖かったんだけどな。 で、さっき来た道を引き返して行くんだけど、 どうもおかしい。 ついさっきの事だから、 分からないはずは無いんだが、 どうしてもその池が見つからない。 結局慣れた裏山で一時間程探し回って、 ようやくそれらしい所を見つけたんだが 池なんか無かった。 ただ、小さい祠が一つだけ。 着いた時、 じーさんはなんか悟ったみたいで、 持ってきた道具で儀式みたいなのをやってた。 終わった後、 帰り道で何を聞いても無言で、 結局何にも教えてもらえなかった。 その三日後、じーさんはぽっくり逝った。 結局あれが何だったのか…未だに分からない。
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