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始まりはテレビの異常
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ここしばらくは何も起きなかったのだが、 つい最近になってまた奇妙な体験をした。 5ヶ月ほど前から会社の寮に移ったのだが、 テレビもなかったので、1ヶ月ほど前に近所の電器屋で安物のテレビを購入。 深夜寝付けないときに、ダラダラとテレビを観るなりしていた。 この前も会社から帰ってきて、いつものようにテレビをつけようとしたのだが、 なぜかスイッチを入れても画面がつかない。 コンセントは当然入っている。 おかしいと思いつつ、あきらめて冷蔵庫に向かったら、 突然バチンと音がしてテレビがつく。 なぜ?と思ったが、接続上の不良か何かのせいだろうと、 あまり深くは考えずにその日は過ごした。 次の日、久々に早めに帰れたので、ドラマでも観ようと、 コンビニ飯を開封しつつテレビをつけようとしたが、またつかない。 リモコンの電池が古いのかもしれないと思って、新しい電池を探し始めた。 しばらくしてテレビが突然ついた。 でも砂嵐。 チャンネルは変えることができない。 音はやたらとでかい。 会社寮であったこともあり、この音ではまずいと思って、 主電源を急いで消したのだが、画面はまだ消えない。 おいおいと思って、コンセントを強引に引っこ抜いたら、 画面は消えたのだがその瞬間に絶句した。 消えた画面には当然私が映っているのだが、私の後に人がいた。 背広・眼鏡姿。見たことはない。 一気に背筋に寒気がしつつ、目を横に向け、 次にゆっくり首を振り返らせた。 でも、そこには誰もいなかった。 とにかくその場を離れたかったので、 スーツ姿のまま寮を飛び出し、 近くのファーストフードで食事をした。 明日も会社があるので、当然早く寝ないといけない。 そのときは、幽霊・怪奇現象というよりも、 むしろ泥棒かと思ったので、警察に行こうと迷ったが、 結局寮に戻ることにした。 怖いので同じ寮の誰かを呼びたかったが、 この独身寮には殆ど知合いはいなかったので、 とりあえずもう一度一人で部屋に入った。 鍵を開け、ゆっくりと部屋に入る。 特に異常はない。 テレビをつけたところ、今度は普通に画面がついた。 よかった。何でもない。 気を取り直して、さっき開封した状態のコンビニ飯を少し口にいれた。 お腹が既に一杯だったのだが、 生来の貧乏性からとりあえず全部食べようと思った。 もう食べ終わろうかという時点になって、また異常が発生した。 テレビの画面が突然消える。びっくりして、 思わず「うわ」と小さく声をあげた。 本能的に周りを見渡す。 誰もいないが、なぜか泥棒の可能性が頭に浮かんだので、 急いで110番をしようと受話器を手にとった。 その瞬間、後ろから声みたいなものが聞こえる。 正確には泣き声。 必死に声を抑えるような、肩がひくひく動いているような泣き声。 受話器をもったまま、「誰だよ」と今度は大声を上げて振り向いた。 人がいた。 先ほどの男?であった。 もの凄い形相をしている。 恐怖に顔がひきつったが、意外にも叫び声をあげて逃げ出そうとは思わなかった。 腰が抜けていたのかもしれないが、 とにかく、その者から目線をはずすことができなかった。 1分くらいだったのか、あるいは10分程度はたっていたのかわからないが、 テーブルを挟んで両者にらみ合いの状況が続いた。 なんともなしに声を出そうとした瞬間、 バチンと音がして部屋の電気が消えた。 真っ暗である。 「おい」と声にならない叫び声をあげようとした瞬間、突然首に感触を感じた。 首を絞めらている。 後になって不思議に思うのだが、 そのときは後ろから首を絞めらていた。 当然、後ろは壁しかない。 手?を解こうと、自分の首に手をやると、ぬめりとした感触がある。 コールタールにつかっていたような感触。 力は強くなかったが、殺されると思ったので、 うぉーと叫び声をあげながら、 前に駆け出すようにその手をふりほどいた。 勢い余って軽くつんのめってしまい、膝を床にぶつける。 目はまだ暗闇に慣れていなかったが、 それでも本能的に先ほど首を絞められた方向に目をやった。 同時に大声をあげた『誰か』。 しばらくしてドアを叩く音。 隣の人だろうか、 「○○さん、どうかしました」 と声が聞こえた。 「鍵は開いているから、入ってきてくれ」 と、叫び声に近い形で私は声をあげた。 ドアが開いて、うっすら外の廊下からの光が差し込む。 その方向に、私は四つんばいに近い状態ながら駈け向かった。 とりあえず警察を呼んでもらった。 私はその隣人(私の上の階の人)の部屋で待機。 泥棒の可能性があるとのことだったので、 警官に鍵を渡し、部屋を見てもらった。 懐中電灯で辺りを照らすが誰もいない。 結局、何も異常が見つからず、かつ、 物をとられた形跡も何もなかったので、 これでは事件にも何もならないということで、 簡単な見聞はしてもらったものの、 結局は警察官は帰ることになった。 その隣人の方も当然、明日は仕事があるので、 これ以上お世話になってはまずいと思い、 その日はそのまま寮に戻らず、 会社近くのビジネスホテルに行くことにした。 会社近くのビジネスホテルに向かう。 当然、山の手線が走っている時間ではない。 しょうがないので、タクシーをつかまえようと近くの大通りに向かった。 歩きながら、 『会社にいったら、人事の福利厚生の人になんて言おうか。 変な噂になったら嫌だな・・・』 と色々なことを考えながら、とぼとぼ下を向いて歩いていた。 ふと妙な気配。 まさかと思い振り向くが誰もいない。 このときになって、始めて“泥棒”以外の要素が頭に浮かんだ。 寮は住宅街にあることもあり、夜になると周りに人はいない。 『ちくしょう、さっきの人の部屋にいればよかった』 と思ったが既に遅く、 私は住宅街の小通りの中、一人ポツンと残されてしまった。 コンビニのある方向に走り始める。 とにかく人のいるところに行きたかった。 近くの十字路にさしかかったときになって、また妙な気配がした。 自分の背中の後ろに、人がぴったりついているかのように生暖かい感触があった。 悪寒が走る。 後ろを振り向いた。 誰もいない。 その瞬間、首にまたあの感触が生じた。 首をしめられるような、あの感触である。 力はさほど入っていないのだが、 殺されるという恐怖を煽るには十分なものであった。 本能であろうか。 私は背中を壁に向かって思いっきり打ち付けた。 しかし、別にその手?は解けない。 「うわ~、うわ~」 と声をあげながら、コンビニの方向に走る。 首にしまる手をふりほどこうとしながら。 近くのセブンイレブンに入った。 肩でタックルをするように入り込んだので、 コンビニのドアが音を上げて開く。 中の店員が私を見ていた。 当然、驚いてる。 「助けてくれ」 私は声をあげた。 店員は 「どうかしたんですか」 と言いながら、後ずさりしている。 「首が、首が」 と言いながら、私は自分の首についている手をほどこうとしたが、 既にその感触は消えていた。 呆然自失のままコンビニに立ちつくす。 店員は「警察を呼びましょうか」と言ったが、 私はその声を無視して、後ろを振り返り凝視した。 コンビニのドアを外を。 眼鏡をかけた背広姿の男が暗闇に立っていた。 こちらを睨むように見ている。 今になって気がついたが、その男の袖はめくられており、 腕は血だらけになっていた。 先ほどぬめりとした感触は、あの男の血だったのだろう。 しばらくすると、その男は消えていった。 後ずさりをするかのように電灯の当る範囲からいなくなった。 店員の人が声をかけてくる。 「どうかしましたか?」 この人には見えてなかったのか。 見えていたのは私だけか。 妙な虚脱感を覚えると、その場に座り込んでしまった。 「警察を呼びますね」 コンビニの店員が話しかけてくる。 「いや、いいです。すいません」 私はとりあえず、何も買いたいものはなかったがそのまま奥の方へ向かった。 暖かい飲み物とお塩を買う。 コンビニのドア近くでお塩の袋をあけ、目一杯身体にふりかけた。 店員が訝しがって見ているだろうが、 気にかけず、頭・肩・胸・腰・足と、手にとった塩をふりかける。 買ったコーヒーを飲み終える。 丁度、一人客が出て行くところだったので、私も一緒に外に出た。 幸運にも、その人は私が向かおうと考えていた駅の方向へ歩いていた。 2~3m後に私が続く。 その人はときたま、不信に思ったのかさりげなく私を見たが、 私は時計を適当に見ながら後ろを歩き続けた。 駅前の居酒屋につく。 5時までやっているところだったので、今日はここで過ごそうと考えた。 人のいるところにいればあいつはやってこないと、 直観的に思ったからである。 居酒屋に入ると、脇のカウンターに誘導された。 店には、数人のリーマンらしき人と、 大学生か何かのグループがいた。 その若者グループは騒いでいた。 普段はうざいと思うものの、 今日に限ってはそうした喧騒が有り難かった。 とりあえずビールを飲みながら、 その日の夜に起きた出来事を頭の中で反芻していた。 なんで、誰が、私に・・・知合い? わかるはずもない原因を頭の中で推理しながら、 先ほどコンビニで見た映像をもう一度頭に思い浮かべる。 あの血はなんだ?自殺か? 親戚や会社の同僚を含め、近くの者で自殺をはかったものはいない。 でも何で私に。 誰かに死んだ後になっても恨みをもたれるようなことをしたことはないぞ。 過去の色々な記憶を辿っていくが、思い当たる人間・出来事はない。 この掲示板で以前も書かせて頂いたとおり、 奇妙な霊現象?みたいな体験をしたことはあったが・・・ 結局その日は、居酒屋から会社に出勤した。 始発近い電車で会社に行ったので、当然、部署には誰もいない。 一人になるのはやだったので、会社のある駅に着くと、近くの牛丼屋に入った。 お腹は空いていなかったので牛丼にはほとんど手をつけず、 出勤ラッシュの時間帯になるまで牛丼屋にいた。 しばらくして朝一番ラッシュ組が現われ始めたので、 自分も会社に向かうことにした。 部署には数人の同僚がいた。 どうせ信じないだろうと思いつつ、昨日の夜の話をした。 「また、はじまったよ」 「何言っているの、朝っぱらから」 当然、誰も信じない。 しょうがないかと思いつつ話を続け、 しばらくして一人の同僚が反応を示した。 「ちょっと待って。 うちの会社じゃないけど、ほら、 お前が以前開発に携わっていたクライアントの会社にさ、 つい最近、自殺した人がいたらしいよ」 まさか。 直接一緒に働いたこともないのに、なんで恨まれるの、俺。 文句を言いつつ不安になったので、さらに詳細を聞いた。 細かく書くとこの掲示板で特定される惧れがあるので詳細は書けないが、 話を聞く限り、何となく心にひっかかるものを覚えた。 「写真か何かないの」 同僚が提案する。 「やだよ。やめてよ。見たくないよ」と、私は反論した。 話を切り出した同僚が答える。 「今はないけど、以前、プロジェクトが終わって、 カットオーバーしたときに、一緒に撮った集合写真がある。 多分、デジカメに入っているはず」 嫌がる私をよそに、同僚らはデジカメをチェックし始めた。 「おい、こいつ?」 「私に写真を見せる?」 恐る恐る写真をチェックし、同僚が指差す人間を見た。 眼鏡はかけていたものの、全くの別人であった。 「違うよ。別人。もう忘れたいから堪忍して」 そう言いながら写真を戻そうとした瞬間、私は驚愕した。 同僚の指差した人間は違っていた。 しかし、その集合写真の端にいる人物が、 まさに私が昨夜見た血まみれの人間にそっくりだったのだ。 「誰、この人」 声をふるわせながら私は同僚に尋ねた。 「○○さんだけど、この人じゃないでしょ。 だって、1週間くらい前に電話で話したよ、俺」 それでもその人物に違いなかった。 私は急いでその会社に電話をして、その人物を呼び出した。 結局、その方は亡くなっていたとのことであった。 自分は全く接点がないにもかかわらず、なぜかは理由はわからない。 同僚に対しては、自分が話した話は誰にも言わないように頼んだ。 さすがに同僚も、タイミングがよさに驚いていた。 その日の午後は会社を早退した。 以前住んでいた家の近くの住職に会い、とりあえず急いで御祓いをしてもらった。 当然その日以後は、毎日塩を身体にふりながらの生活をしている。 今のところは何もない。
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