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東北の地方都市の洞窟
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同級生と久々に飲んで思いだした話。 今くらいの季節で10年くらい前。 当時大学生だった俺は 東北の地方都市で一人暮らしをしてた。 この街は少し変わった造りで、 街の中心にひょうたん島みたいな200mほどの山がある。 山の駅側は神社や夜景、桜が見れ、 夜でも人や車の往来が多く賑わっていた。 でも裏側は夜は真っ暗で不気味な感じ。 ある時、山の裏側で 友人ABCDと五人でサバゲをやることになった。 朝から集合し、 軽く遊んでだんだん飽きたね、 って雰囲気になった。 するとBが山から高架橋走る電車が撮りたいと言い出し、 みんなで獣道をザクザクと駅の方へ獣道を歩いていった。 20分ほど歩いたところで池があり、 獣道が終わった。 「これ以上進めないなー。諦めるか」 なんて話しながら辺りをガサガサしてると、 B「あれ、洞窟じゃね?ほら、あっち」 と言った。 指さした方を見ると、 池をぐるりと囲む崖の一角に洞窟らしきものがある。 入口がちょうど大人が這って入れるような大きさで、 池の対岸にあった。 A「ちょっと見てくるわ」 小柄なAが池沿いに 脛辺りまで水につかりながらバシャバシャ走って行って、 穴を覗くと興奮した様子で、 「こっちきてみ!スゲー広いぞ!ずっと奥まで続いてるぞ!」 ってはしゃぐので、 「これは行くしかねー!」 って感じになり皆で入りました。 中は男三人が並んで立ってもまだ余裕があるくらい。 高さに至っては2m以上。 地面は整地されている箇所も多く、 『洞窟』というより『坑道』とか『防空壕』を思わせる雰囲気。 岩肌むき出しの天井には、 10センチほどの人工的な四角い穴が定期的に空いていた。 入口付近にはペンキで「長」と「津」を合わせたような 謎の漢字が壁に書き殴ってあった。 懐中電灯で奥を照らしてもかなり奥まで続いているようで、 予想外のおもちゃを見つけた俺らは興奮し、 「中国人が掘った坑道?」 何て笑いながら5人で進んでいった。 奥へ奥へと進んでいったんだけど、想像以上に広く、 分岐の殆どは十字路になっていた。 内部は相当広くて全ての道は調べられなかったが、 内部は十字路がいくつもあり、 碁盤の目のように規則的な作りなんじゃないかと推測した。 最後尾にいた俺とBは、 分岐の度にかっぱえびせんで大きな矢印を床に作って 十字路を奥を目指して進んでいった。 やがて緩やかな下りの一本道になり周囲がゴツゴツ狭くなり始め、 ついに先細りになって這わないと通れないような場所にたどり着いた。 ?十十入 ?十十十 ?十十十 十十十十 十十十? 十十?? | ~ |←(細い下り坂) 内部は探索していない場所も多いがこんな感じだった。 G-shockを見ると15時半。 すでに一時間半以上経過していた。 B「ここが最奥かね?」 C「どうする?時間的に引き返す?」 そんな会話をしていた時 ッチッタッ 突然音がしてみんなが固まった。 「チッて言った?」 「水の音?ではないよな?」 何か舌打ちをするような聞こえて。 周囲を探した結果、 どうやら最奥の小さい穴の方から聞こえてくるんじゃね? という結論になった。 音は暫く断続的に続いていたが やがて止まってしまった。 「なんなんだろうな」 「先いってみるか」 Cがそう言い出し、 這って穴をくぐり始めた。 周囲の岩は脆そうだったので 大きいDとBは残り、A、C、俺で這って行った。 Cが潜って数秒もしないうち、 「この先、出れるぞ!」 穴の向こうから声がした。 意外にも狭い箇所は2m程で終わり、 その先は広くなっていた。 ちょうどTの形になっており、 「|」の部分が這って通ってきた最奥の細い箇所、 「―」がその先の広い道って感じで。 早速、二手に分かれて探索してると、 「ちょっとこっち来て!」 とCが呼んだ。 近づいてみると、 Cの探索した方の道は両側にカマボコ形の入口が並んでいる。 そして、奥の方の穴は全て塞がれてた。 穴壁穴壁穴壁穴壁穴壁穴壁穴 出口 ーーーーーーーーーーーーーーーーー 穴壁穴壁穴壁穴壁穴壁穴壁穴 て感じで。 「なんだここ…」 「何でコンクリで塞がれているんだろうな。封印?」 そんな風に話しながら ホテルの廊下のような坑道を歩いていった。 「お、ここ、少し崩れてるぞ?」 見るとコンクリートが崩れて 大人の頭二つ分ほどの空洞が空いている。 早速覗きこんだCが、 「あれ?すぐ壁だ…あ、違う…・これ縦穴だ。 底照らしても全然見えねー。相当深い」 と驚いた。 俺とAも、 A「マジ?これ塞いであるトコ全部縦穴なのかな?」 俺「地下世界の入り口じゃね!」 と盛り上がって。 その後でAが、 「ちょっとBから借りたカメラで中を撮っとこーぜ」 とAがカメラを構えて再度穴を覗いた。 パシャ!パシャ! 「あっ!!!?」 何度かフラッシュが瞬いた後、 Aが驚いた顔でこちらを見て、 A「……何かおる!」 と呟いた。 C「動物ー?さっきは何も見えんかったぞ!」 そう言ってCが近づいた。 A「違う!見てみ! 縦穴の下の方になんかでかいのいた! なんつーか、つくし?」 C「つくし?」 A「だから!『つくし』みたいな細長い頭の奴がおる!」 俺「それ岩じゃねーの。 ちょっと俺にも見せ『 チッ タ 』ろよ」 Aの覗いていた穴から相当に近い音で聞こえた。 「行くぞ!いそげ!」 振り返ったAの声で急に我に返った俺とCは、 急いで逃げ出した。 10mほど穴から遠ざかったところで、 坑道に這って戻る場所まで来た。 押し合いながらCと俺が這って戻り、 Aが出てきた。 何だ?どうしたんだ? ってキョトンとてるBとDに 「逃げるぞ!変なのいた!」 ってCが短く告げて走り出した。 俺らもガチャガチャ荷物を揺らしながら逃げた。 BとDは 「何?」 「何いた?」 って??顔で付いてきた。 とにかく走って、 碁盤の坑道まで付いたところで皆息が切れた。 B「何いたの?びっくりしたわー」 D「また音聞こえたと思ったら速攻で逃げてくるから」 俺「奥の縦穴で変な生き物がいたみたい。 あの音もソイツが言ってたっぽい」 A「あの音、 アイツの喋り声だったとか洒落なんねーよ」 C「『つくし』みたいな頭の生物って」 なんて皆で話をしていて 少し雰囲気が緩んだ。 Dの様子がおかしい。 しきりにまだ探索していない十字路の横道に ライトを向けていた。 「D?」 と聞くと、 「いや、あっち何か動かなかった?」 とライトを奥へ向けている。 Cも一緒に横道へライトを向けた。 D「あれなに?棒? つーか動いてね?」 Aもライトを向けた。 「えっ?何あれ?え?」 「やばいやばいやばい!」 白い棒のようなものが にゅっと側道の奥から突き出ていた。 「手!手だ!手ぇでて来た!」 突然Dが叫んだ。 「ヤバいヤバいヤバい!!」 漢字の分岐に着き、 そして何とか坑道を脱出した。 時刻は6時半過ぎで真っ暗だった。 D「やべーってなんだあれ! Aの言ってた『つくし』?」 A「わからんけどあんな色やった! 眼が反射して光ってて…」 俺「手?腕?」 C「ピンクぽい手?だったよな!」 B「道幅2m以上はあったぞ!「手長足長」か!?」 A「絶対『つくし』だ!アイツ追いかけてきたんだ!」 そんなこんなでその日は解散。 後で情報処理ROOMでAが撮ったデジカメを見たが ほとんどブレブレだった。 数日して、 Cと喫煙所で話をしていると、 最近Aが大学に来ていないって話になった。 C「まあ単位取り終わってるみたいだから、 またパチスロ行ってんじゃね―の?」 って言ってたが、気になって 「生きてる?今Cと学校来とる」 ってメールをしてみると、 すぐに 「色々忙しくてスマン!」 ってだけ返ってきた。 俺「生きてはいるみたいだわ」 C「やっぱスロットだろうな」 なんて話をしていたら 顔馴染みの教授が会話に混ざってきた。 何でもゼミで例の山でバーベキューを企画してるらしく、 Cが 「そういや、先生、怖い話あんすよ! この前H山で凄いの見つけて…かくかくしかじか…」 と話し始めた。 『お前らあの山へいったのか!』 なんて展開は無く、 教授「へー。あそこの山さ、 炭坑跡だかなんだかを旧帝国陸軍が秘密基地にしたらしいよね。 中○工場とか知らない?あんなかんじで」 俺「初耳ですよそんなん。 もっと話題になってんじゃ…。 聞いたことなかったですよ」 教授「山の右側数キロくらい広がってるらしいよ。 戦時中は朝鮮から来た人も大勢働いてて何人も死んでる。 終戦まで穴作り続けたみたいよ?亡霊かもな(笑)」 C「亡霊ですか…」 教授「でもあそこ入り口は全部塞いであるらしいよ? まぁ、全部把握できてるかってーとそうでもないけどね。 元々炭鉱だったて話も、 資料も図面もなーんにもないからよくわかってないし。 ま、秘密基地っつーくらいだから、 図面あったらマズかったのかもしれない。 縦穴とか危ないし一応、学生課注意するよう言っておく?」 C「誰も行かないと思いますけど 機会あれば言ってください、俺らも偶然見つけたし」 教授「穴塞ぐのだって行方不明が結構出てるからだし。 戦争の歴史を管理展示しようってお年寄りもいるから ちゃんと管理すりゃいーのに、 なんでやらねーんだろうなぁ…」 って話で終わった。 「幽霊か~」 Cが呟いた。 俺「何か幽霊って感じではなかったよな」 C「モロに生きてる感じだったわ」 俺「でもさ、あんな生き物いるのか? あの『チッ、タッ』って鳴き声も謎だわ」 C「チッタ?『コッチ、キタッ』だろ?ゾッとしたよな」
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