怖い話登録数18393話
恐怖感アップダークモード
(0件)
▼コンテンツには広告が含まれています
✕
彼女は時を超えて見守ってくれていたんだ
お気に入り
1694
50
1
長編5分
コピー
「彼女は時を超えて見守ってくれていたんだ」の朗読動画を探しています。YouTubeでこの話の朗読動画を見つけたらぜひ投稿していってください。
※YouTubeのURL必須
開始時間
00時間00分00秒
投稿する
個人的な話ですが、 ふと書き込もうと考えた俺の行動にもなにか意味があるのなら。 修士に進学した4月、 こんな俺にもはじめての彼女ができた。 相手は講座に配属になったばかりの4年生。 女子学生が少ない学科だったが、 その中でもこの講座は特に少ない。 過去にもほとんど女性がいなかったので、 彼女は当初、その存在だけで俺達を困惑させた。 前髪を野暮ったく切ったロングヘアーに、 度のキツイ眼鏡。 いかにも母親にデパートで見立ててもらいました、 というようなフリフリのロングスカート姿。 講座の連中は、 そろいもそろって自閉症気味のオタクばかりで、 女子学生が入ってきたというだけで、 もうどう対処して良いのか判らなかったようだ。 かく言う俺も、 当初はめんどくさいなあとしか思っていなかった。 新歓コンパの二次会に向かう路上、 眼鏡を外した彼女の素顔。 俺は古くさい言い回しだが、 視線が釘付けになった。 「こんな綺麗な娘だったのか」 いや、実際そこまでの美形ではなかったのかもしれない。 でも、俺には彼女が、彼女と並んで歩いているこの時間が、 まるで遠い過去から予定されていたような、運命的なものを感じた。 瞬間、恋に落ちていた。 「あ、あのさあ…」 「え?」 眼鏡をかけ直して振り向いた彼女に、 俺は自分でも予想のつかないセリフを放った。 「世界で一番、君が好きだ。たぶん、ずっと昔から…」 「はい。たぶん、わたしも…」 コンパの二次会をすっぽかして、 夜の街をなぜか手を引いて走った。 誰に追われている訳でもないのに。 女の子と付き合ったこともなかった俺は、 どこに行けばいいのかわからない。 駅前の喫茶店で夜の10時まで話し込んだ。 それが自宅生の彼女のタイムリミット。 駅のホームで見送る俺は、 胸が張り裂けそうだった。 「シンデレラだって門限は24時だろうがよ!」 人生、数式では定義できないものだと知った。 「コペンハーゲン解釈、ありゃ嘘だね」 「わたしも思ってた」 「エヴェレットにしても人生経験が浅い」 「多元宇宙論ね。解釈問題に立ち入ると先生が怒るわよ」 「君も俺も、世界で一人ずつだ。他にスペアはいらない」 世界は、この世界は、 俺が人生を賭けられると思っていた物理の真理よりも、 はるかに甘美な世界だった。 「このまま時間が止まればいい。 でも、時間の流れは過去も未来も定義に違いはない。 流れていると感じる我々に限界がある」 「はぁ。なんでこんなに好きなんだろ。 あなたと会えなかった世界なんて、 パラレルワールドにもあり得ないわ」 安アパートの、 通販で買ったソファーで彼女の肩を抱きながら、 時間の経つのも忘れて話しをした。 「高校まではずっと野球部だったけど。その頃の話でね…」 俺は高校までは野球漬けの生活だった。 進学校の弱小野球部、 3年間で公式戦では一度も勝てなかった。 それでも俺が部活を続けていたのは、 試合ではいつも、いや、日頃の練習でもなぜか俺達を見に来る、 野球好きらしい女の人の存在があったからかもしれない。 その人はいつも同じ格好をして、 俺達の試合や練習を見に来ていた。 不思議とチームメイトたちは気が付いていないようで、 俺が話題を振っても「何それ?」という具合。 黒のミニスカートにタンクトップ。 真夏でも紅いスイングトップを羽織って。 ショートの髪型とハイヒールが『大人の女』そのもので、 俺はずっと気になっていた。 「たぶん、高校のOGなんだろうけど。 でも、俺らの高校が共学になったのはそれほど前じゃないし、 野球部はずっと弱小チームだったから、わけが判らないのだよなあ。 OBの話でも女子マネージャーはいなかったって言うし、 単なるファンなんてありえないのだけどなあ」 「あなたの憧れのひと?もしかして初恋のひと?」 「そんなんじゃないんだけど。たぶん、君に似ていたんだよ」 「わたしと出逢うよりず~っと前でしょ!」 「それが時間的に前の事象だと決定できるの?」 「物理の話してるんじゃないでしょ! ふふっ。あなたは憧れてたんだ。そういうお姉さんに」 「お、俺はそんなこと(野球部)しながら、 大学受験は大丈夫かクヨクヨしていたただの迷い子だったよ! 話しかける勇気もなかったさ」 夜中に電話で起こされた。 なにか気がかりな夢をみていた記憶はある。 起きたときに涙で視界がぼやけているのが、 自分でも訳が分からなかった。 『おい!そこを動くな! 今から行くから、とりあえず目を覚ましておけ!』 友人のSからの電話だった。 Sが部屋に来てからの記憶は飛んでいる。 霊安室でベッドでもない妙な台に横たわった彼女は、 いつもの姿ではなかった。 黒いミニスカート、紅いスイングトップ、ショートヘアー、ハイヒール。 彼女の友人らしい女の子が、 泣きじゃくりながら俺を責める。 いや、俺を責めていたわけではないのだろう。 「あなたに、あなたに見せるんだって言って。 私とこの服買いに行ったのよ!」 「眼鏡がないと…きっと困ってる」 「なに言ってるの!?あなたのために…」 彼女は友人と別れた後、 自宅と目の鼻の先の路上でクルマにはねられたらしい。 運転していた若造は一旦逃げたが、 仲間に付き添われて警察に出頭していた。 俺はその後もふらふらと生きている。 大学院は中途で辞めた。 今は普通のサラリーマン。 物理のブの字も想いだしはしない。 半袖ワイシャツでの営業の途中、 暑さにたまりかねて飛び込んだ喫茶店で甲子園の中継を見る。 なにをしても中途半端だった俺の、 もうどうでもいい人生で、 2番目に大切だった思い出。 高校の野球部。 彼女は時を超えて見守ってくれていたんだ。 知り合う前から、ずっと…。
怖い話を読んでいると霊が寄ってくる?不安な方はこちらがおすすめ
1人が登録しています
感想や考察があればぜひコメントで教えてください ↓コメントする
この話は怖かったですか?
怖かった50
次はこちらの話なんていかがですか
続きを読む
※既読の話はオレンジ色の下線が灰色に変わります
Switch売れ筋
スーパー マリオパーティ ジャンボリー - Switch
大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL - Switch
ドラゴンクエストIII そして伝説へ…- Switch
Minecraft (マインクラフト) - Switch
マリオカート8 デラックス -Switch
Nintendo Switch Sports(ニンテンドースイッチスポーツ) -Switch
名無し
切ない不思議な話だな
前の話:【じわ怖】そこでね釣りをするととり憑かれるんだってよ
次の話:【じわ怖】モロオヤジ
怖い話 No.12046
【じわ怖】家の少し手前の直線道路
1177
31
0
短編2分
怖い話 No.5871
【じわ怖】病院の二人部屋からうなり声
1195
35
短編1分
怖い話 No.4910
【じわ怖】次はいつ会えるんだろうなw
1382
27
怖い話 No.13150
【じわ怖】御神木
879
40
怖い話 No.12400
【じわ怖】メインクーン
1374
52
怖い話 No.13274
【じわ怖】大日杉から飯豊山を経て大日岳に行くコース
1511
42
長編6分
怖い話 No.5354
【じわ怖】北海道の支笏湖
朗読 オカメ【2ch怖い話朗読】
1588
37
中編3分
怖い話 No.5368
【じわ怖】改名後結婚
1370
14
怖い話 No.18556
【じわ怖】ウルトラの母
1142
怖い話 No.5074
【じわ怖】ヒゲもじゃ
1115
心霊サイト運営者
全国心霊マップ
ghostmap
プロフィール
Twitter
新着じわ怖
S奈のお父さん
カーナビの示した位置
ベランダに女の影
国産うなぎ
マンションの屋上
占い師
窓に立つ男
幽霊の正体
自殺頭痛
友達からの葉書
医学は万能じゃない
嫁の日記を読んだ
新着コメント
友達の様子がおかしくなってきた
3人で横一列に並んで歩いていた
元恩師にストーカーされていた
家鳴り?
幽霊のいた家
公衆電話ボックス
子供がうるさい