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祭
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10年くらい前の話。 大学時代、初秋の頃、暇だったんで、 友人3人とドライブに行ったときのこと。 車を1時間も走らせれば過疎地に行ける距離。 適当にあっち寄りこっち寄りしていて、 大して面白くもなく時間が過ぎて、 あっという間に夕方近くになっていた。 友人の一人Aが 「そーいや、ここらへんに心霊スポットがあんじゃね?」 って言い出した。 まだスマホもない時代、 携帯の電波も悪い地域なのですぐに調べることはできないが、 友人Aの勘でその付近へ向かことにした。 夏も終わりに近づいていたので、 日が暮れるのも早く、 あたりは薄暗くなってきた。 「お~お~なんだか雰囲気でてきたねぇ」 とAははしゃぐ。 勘のわりには、 「そこ右に曲がってみて」 とか何だかテキパキとした指示で、 やや違和感があったが、 ほかの連中もAにつられて盛り上がり始めた。 あたりが真っ暗になるころ、 左手に建物が見えてきた。 よく地元産の野菜とか特産物を売るような 道の駅っぽい感じの建物。 B「ここじゃね?」 A「いや、ここじゃねぇ」 俺「まぁ、普通の道の駅っぽいしなぁ」 建物は暗かったが、 特に古くもないので、 そのまま通り過ぎることにした。 なんか不気味な山道で、 みんな押し黙っていたが、 しばらく走っていると、 ドンドン、という太鼓の音や笛の音が聞こえてきた。 C「おっ。祭りじゃね?」 B「らしいね。寄ってかね? 俺、ションベンもしたいしさ」 俺「俺も~」 安堵感のため多弁になる俺ら。 少し進むと、 さっきと似たような道の駅みたいな建物が左手にまた見える。 俺「あれ?さっきのじゃないよな」 B「わけねぇじゃん、いつの間に戻ったんだよ」 それにしても、 さっきの建物とソックリなんだ。 俺「こんな似たような建物、 近くに作るなんて税金の無駄遣いじゃねーか」 と虚勢をはったが、 実は変な感じがしてビビっていたのだ。 違和感の正体はすぐにわかった。 駐車場のようなスペースに車を止めて降りると、 駐車場のアスファルトもかなりガタガタ。 建物も閉鎖されてかなり時間がたっている感じでボロボロ。 すぐ近くで祭がやっているらしく、 その薄明りで浮かび上がって見える建物の姿はとても気味が悪かった。 B「ありゃ~。これじゃ、便所も空いてなさそうだな」 俺とCは 「気持ち悪いな~、さっさと行こうぜ」 と車に戻ろうとしたが、 Aがいつの間にか駐車場の端っこまで行っていて、 「お~い」 と呼んでいる。 A「こっち、こっち。祭りやってんぞ」 B「そっちに公衆便所とかある? なければここで立ちションするわ」 A「いや、あるから来いよ」 ションベンが漏れそうなBは ダッシュでAについていく。 Cと俺は 「なんか、Aの奴、なんか変じゃね?」 と言い合いながら、 その後をダラダラと追った。 建物の脇の小さい道を進んでいくと小さな広場にでて、 赤い提灯が並んでいた。 録音だと思うが、 太鼓や笛の音が聞こえるんだが、 どこから流れているのはわからない。 提灯の赤い光が並んでいるが、 不気味なことに誰もいない。 C「あれ、あいつらどこ行った?」 俺「便所だろ? っつーか、なんで誰もいないんだ?」 C「中止になったとかじゃない?」 俺「いや、それにしても… スタッフとかだれかいるもんじゃねぇ?」 俺とCは寒気を感じながらも ブツブツとしゃべっていた。 何分過ぎたかわからない。 俺「おっそいな~。なにやってんだ。あいつら」 C「ってゆーかさ、ここらへんに集落あった?」 俺「いや…知らんけど…」 なんか背筋が凍った。 ここにいちゃやべぇみたいな気がして、 「車戻ろうぜ」 と早足でCともどった。 車に戻ると、Bが乗っていた。 俺「あれ?お前…いつの間に」 B「はぁ?最初から俺は車から出てねーよ」 C「はぁ?」 俺「Aはどうした?」 B「A?Aって?」 俺「Aって…一緒に来たAだよ」 B「はぁ?」 さっぱり意味がわからなかった。 Bの中では 俺、B、Cと3人でドライブに来たという。 俺とCは確かにAと一緒に来ている。 だが不思議なことに、 確かに車の中にはAの荷物がないのだ。 しかし今日一日のことを思い出せば、 俺とCはAと交わした会話も幾つか思い出す。 …が、確かになんか記憶が希薄という感じもしないまでもない。 Aの携帯電話に電話してみようと思ったが 3人とも圏外だ。 その時だった。 ボォオオオーーーン と変な音がさっきの祭会場の方向から鳴った。 俺「うぉっ!!?」 C「なんだ!」 いつの間にか提灯の明かりも消えていて、 車のライトしかない。 俺「ちょっとやべぇ!やべぇよ」 テンパっている俺。 俺「車出すぞ!帰るぞ!」 BもCもやべぇやべぇ!と大騒ぎ。 その時またもや ボゥウォオオオーーン っと変な音。 すぐに車を発車させる。 大急ぎで駐車場から抜け出る俺たち。 真っ暗なのだが、 確かに祭り会場から人影みたいなのが、 ぼわっといくつか出てきたのがバックミラーごしに見えた。 俺「おい。ちょっ。後ろ見て、後ろ! なんか追いかけてきてねぇ?」 C「ちょっ。マジ!!??」 後ろを振り返るBとC。 でも暗くてよくわからないらしい。 そのまま来た道を速攻で戻る。 途中、先ほど通り過ぎた道の駅らしき建物が見える。 C「ちょっ、まっ、電気、電気ついてる!」 B「さっきは…あれ…?」 俺「何!?」 運転に集中している俺は、 わき見できない。 しばらくして、 やっと国道に出た俺たちは安堵感に包まれていた。 が、心臓はまだドキドキしている。 C「なんだったんだよ、あれ。ふざけんなよ…」 俺「っつーか、さっき何見たんだよ。B」 B「いや…さっきの道の駅みたいなところに、 人がいっぱいいた…・」 普通なら、 そりゃいるだろと思うところなのだが… B「なんか、駐車場にも建物の中にも黒い人だかりができてて… それだけいるなら声の一つもするだろうに…何も聞こえねぇし… 何より、そいつら全員俺らの方を見ていた気がして…」 俺「なんなんだよ…それ」 しばしの沈黙。 俺「そういえば、Aのやつに電話してみてよ」 CがAに電話をする。 普通に出るA。 だが、サークルで飲んでいるというA。 後ろではがやがやと音がするし、 ウソをついているとも思えない。 このドライブのことも知らないとぬかしていた。 そういえば、 このドライブも誰が行こうといったか思い出せない。 数年後、 昼間にもう一度ここに行こうと思ったが、 どうしても行くことはできなかった。 いったいあれは何だったのだろうか?
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