怖い話登録数18393話
恐怖感アップダークモード
(0件)
▼コンテンツには広告が含まれています
✕
遭難事故の死者と生者
お気に入り
1791
29
0
中編4分
コピー
「遭難事故の死者と生者」の朗読動画を探しています。YouTubeでこの話の朗読動画を見つけたらぜひ投稿していってください。
※YouTubeのURL必須
開始時間
00時間00分00秒
投稿する
道路端に置かれた花束。テント場や山頂の煙草、缶ビール。どちらも死者に捧げられ、供えられたものだ。「いいんだよ、吸うのが供養なんだから」その日の同行者は、そうした手合いだった。それほど煙草に困ってる訳ではない。 ただ、面白がっているだけだ。手にした煙草は未開封で、しかも見るからに新しい。素早くパッケージを破り、煙草を取り出し、咥えた時にはすでに火がともされているほど手早い。その日の同行者は、そうした手合いだった。鋭い声がすっ飛んできて、それより早く手が飛んできた。同行者の口から煙草を叩き落とし、小柄な男が唾を飛ばして食ってかかり、テント場に居合わせた連中は、びっくりしてこちらを伺っている。食ってかかっているのは、管理人の手伝いをしている男だ。話を聞くうち、煙草を供えたのは、どうやら彼らしいと知れた。それでは少々怒られても仕方あるまい。「やられちゃったねえ」その夜、俺たちのテントに管理人が酒持参でやってきた。友人や仲間のために供えた煙草を吸った方が悪いので、頭をかいて恐縮していたが、管理人の話を聞くうち、頭をかいていた手はひざに置かれ、せっかく注いでくれた上等の純米酒の事さえ忘れた。あの男は数年前の遭難事故での生存者で、色々あってここに居ついた。煙草を供えているのは、生存者ではなく死んだ方だという。遭難事件の死亡者が、生存者に向けて煙草を供えているが、その煙草はあの男が供えている。という事は、あの男が死んだ男?訳がわからない。遭難事故の当事者は二人。あの男と、その友人だ。彼ら二人はこのテント場を出発した後で、数日間雪山に閉じ込められた。救助隊に発見された時、生きていたのは彼だけだった。一緒にいた彼の友人は死亡していたが、その死因は失血死だった。極限状況で生まれる美談は多いが、その一方で、深い絶望や恐怖が招く暴力行為や、それが発展しての殺人事件は、どうやら少なくないらしい。当然、生存者が発狂している事もあるだろう。彼に殺人の容疑がかけられたが、警察がどう調べても、彼の友人は『自分の首を小さなナイフで刺して死亡した』という結論しか出なかった。彼は小さなテントの中、自殺を図った友人と向き合い、緩慢に死んでいくその姿を見続け、流れ出る血に足を浸し、友人が死体になった後は、その姿を見守り続けたのだ。同時に、あらゆる遭難事故の生存者が感じるという、生き残った罪悪感を、特殊な状況下で強く感じ続けていただろう。ようやく救助された時、彼はすっかり変わっていた。人格と名前が死んだ友人のものになっていた。生き残った彼の中では、死者と生者が入れ替わっているのだ。それでいて記憶は元のままだった。彼と友人の関係に即していえば、記憶の中では彼は自分自身を友人として扱っていて、山で死んだ友人の視線で世の中を、自分を、見ているのだ。記憶の中には、時として自分に向けられた悪感情もあるだろう。記憶にある彼の家は、今となっては友人の家なのだ。そして、新たな人格、名前となった彼には、その名前で過ごした記憶がない。行き場をなくし、精神が破綻した彼にとっては、最後に友人(あるいは自分)と過ごした、この場所しか居場所がないのだろう。毎月、彼の記憶の中の家族から、管理人宛にいくばくかの金が送られてくる。管理人から金を貰うと彼は煙草を買い、死んだ友人(記憶の中での自分)に供えているのだという。確かに、彼の精神世界と現実世界を二枚合わせにして考えれば、管理人の言う通り「死者が生者に煙草を捧げ、供えている」のだ。「でもね、本当に、いい人間ですよ」と、管理人は話を結んで小屋に戻っていった。翌日、山に登る気がすっかり失せた俺達は、ぼんやり煙草ばかりをふかして過ごした。
怖い話を読んでいると霊が寄ってくる?不安な方はこちらがおすすめ
感想や考察があればぜひコメントで教えてください ↓コメントする
この話は怖かったですか?
怖かった29
次はこちらの話なんていかがですか
続きを読む
※既読の話はオレンジ色の下線が灰色に変わります
ひっそりと話題になってる心霊系の本
心霊浄化師 神楽京 恐怖の地下屋敷
心霊特捜 <新装版> 心霊特捜 <新装版> (双葉文庫)
心霊探偵八雲1 赤い瞳は知っている (角川文庫)
月下の黒龍 浮雲心霊奇譚 (集英社文庫)
ルポ“霊能者”に会いに行く 「本物」は存在するのか
新 心霊探偵八雲 赤眼の呪縛
前の話:【じわ怖】一体何だったんだ…?
次の話:【じわ怖】単眼オヤジ
怖い話 No.5062
【じわ怖】犬が家の前でうろうろしてた
1469
44
1
短編1分
怖い話 No.5371
【じわ怖】K村H美
1208
30
怖い話 No.19224
【じわ怖】オバケになるぞ
1467
短編2分
怖い話 No.4198
【じわ怖】私は誘拐(拉致監禁?)されたことがあります
1883
28
中編3分
怖い話 No.5696
【じわ怖】古びた一軒屋に飛び込みの営業
1574
36
怖い話 No.21869
【じわ怖】耳元で声がする
1213
7
怖い話 No.13016
【じわ怖】塗り壁の道
1038
怖い話 No.5606
【じわ怖】友人と何かを見た
1066
怖い話 No.12989
【じわ怖】山道をドライブ中に林道を見つけた
935
39
怖い話 No.21941
【じわ怖】霊視
1018
8
心霊サイト運営者
全国心霊マップ
ghostmap
プロフィール
Twitter
新着じわ怖
S奈のお父さん
カーナビの示した位置
ベランダに女の影
国産うなぎ
マンションの屋上
占い師
窓に立つ男
幽霊の正体
自殺頭痛
友達からの葉書
医学は万能じゃない
嫁の日記を読んだ
新着コメント
熟女体験談逆周り
電気つけずに台所でバナナ食ってた
卒業式後の日曜日
苦労を支えあった義母との思い出
冒険生活送ってた
ジョージアの謎
コンビニの外にいた男
牙