怖い話登録数18393話
恐怖感アップダークモード
(0件)
▼コンテンツには広告が含まれています
✕
遭難事故の死者と生者
お気に入り
1739
29
0
中編4分
コピー
「遭難事故の死者と生者」の朗読動画を探しています。YouTubeでこの話の朗読動画を見つけたらぜひ投稿していってください。
※YouTubeのURL必須
開始時間
00時間00分00秒
投稿する
道路端に置かれた花束。テント場や山頂の煙草、缶ビール。どちらも死者に捧げられ、供えられたものだ。「いいんだよ、吸うのが供養なんだから」その日の同行者は、そうした手合いだった。それほど煙草に困ってる訳ではない。 ただ、面白がっているだけだ。手にした煙草は未開封で、しかも見るからに新しい。素早くパッケージを破り、煙草を取り出し、咥えた時にはすでに火がともされているほど手早い。その日の同行者は、そうした手合いだった。鋭い声がすっ飛んできて、それより早く手が飛んできた。同行者の口から煙草を叩き落とし、小柄な男が唾を飛ばして食ってかかり、テント場に居合わせた連中は、びっくりしてこちらを伺っている。食ってかかっているのは、管理人の手伝いをしている男だ。話を聞くうち、煙草を供えたのは、どうやら彼らしいと知れた。それでは少々怒られても仕方あるまい。「やられちゃったねえ」その夜、俺たちのテントに管理人が酒持参でやってきた。友人や仲間のために供えた煙草を吸った方が悪いので、頭をかいて恐縮していたが、管理人の話を聞くうち、頭をかいていた手はひざに置かれ、せっかく注いでくれた上等の純米酒の事さえ忘れた。あの男は数年前の遭難事故での生存者で、色々あってここに居ついた。煙草を供えているのは、生存者ではなく死んだ方だという。遭難事件の死亡者が、生存者に向けて煙草を供えているが、その煙草はあの男が供えている。という事は、あの男が死んだ男?訳がわからない。遭難事故の当事者は二人。あの男と、その友人だ。彼ら二人はこのテント場を出発した後で、数日間雪山に閉じ込められた。救助隊に発見された時、生きていたのは彼だけだった。一緒にいた彼の友人は死亡していたが、その死因は失血死だった。極限状況で生まれる美談は多いが、その一方で、深い絶望や恐怖が招く暴力行為や、それが発展しての殺人事件は、どうやら少なくないらしい。当然、生存者が発狂している事もあるだろう。彼に殺人の容疑がかけられたが、警察がどう調べても、彼の友人は『自分の首を小さなナイフで刺して死亡した』という結論しか出なかった。彼は小さなテントの中、自殺を図った友人と向き合い、緩慢に死んでいくその姿を見続け、流れ出る血に足を浸し、友人が死体になった後は、その姿を見守り続けたのだ。同時に、あらゆる遭難事故の生存者が感じるという、生き残った罪悪感を、特殊な状況下で強く感じ続けていただろう。ようやく救助された時、彼はすっかり変わっていた。人格と名前が死んだ友人のものになっていた。生き残った彼の中では、死者と生者が入れ替わっているのだ。それでいて記憶は元のままだった。彼と友人の関係に即していえば、記憶の中では彼は自分自身を友人として扱っていて、山で死んだ友人の視線で世の中を、自分を、見ているのだ。記憶の中には、時として自分に向けられた悪感情もあるだろう。記憶にある彼の家は、今となっては友人の家なのだ。そして、新たな人格、名前となった彼には、その名前で過ごした記憶がない。行き場をなくし、精神が破綻した彼にとっては、最後に友人(あるいは自分)と過ごした、この場所しか居場所がないのだろう。毎月、彼の記憶の中の家族から、管理人宛にいくばくかの金が送られてくる。管理人から金を貰うと彼は煙草を買い、死んだ友人(記憶の中での自分)に供えているのだという。確かに、彼の精神世界と現実世界を二枚合わせにして考えれば、管理人の言う通り「死者が生者に煙草を捧げ、供えている」のだ。「でもね、本当に、いい人間ですよ」と、管理人は話を結んで小屋に戻っていった。翌日、山に登る気がすっかり失せた俺達は、ぼんやり煙草ばかりをふかして過ごした。
怖い話を読んでいると霊が寄ってくる?不安な方はこちらがおすすめ
感想や考察があればぜひコメントで教えてください ↓コメントする
この話は怖かったですか?
怖かった29
次はこちらの話なんていかがですか
続きを読む
※既読の話はオレンジ色の下線が灰色に変わります
Amazon無料でスグに読める本
お隣さんの騒音がすごい どこかの誰かの体験談マンガ
日本生まれのインド人、メタ・バラッツのスパイスカレーユニバース (インターネットオブスパイス)
転生してから40年。そろそろ、おじさんも恋がしたい。 二度目の人生はハーレムルート!? 1 (アース・スターコミックス)
パラドックスループ-うまくいかない私たち-
まいみ!
嘘つきな彼氏(推し)を懲らしめた話 1 ますまゆまんが!集
前の話:【じわ怖】一体何だったんだ…?
次の話:【じわ怖】単眼オヤジ
怖い話 No.12124
【じわ怖】女性の能面がぽつんと置いてある
朗読 OCCULT HITORI 怪談朗読ラジオ オカルトヒトリ
2302
36
長編9分
怖い話 No.12757
【じわ怖】山小屋のノート
1459
39
短編1分
怖い話 No.4309
【じわ怖】繰り返す昨日
1155
54
怖い話 No.4783
【じわ怖】カッパハゲのサラリーマン
1306
22
中編3分
怖い話 No.13159
【じわ怖】不思議石
975
25
怖い話 No.4263
【じわ怖】二人の溺死体
1811
50
1
怖い話 No.12047
【じわ怖】何かが聞こえた
1452
48
怖い話 No.13618
【じわ怖】深夜に友だちと電話してた
1261
怖い話 No.5641
【じわ怖】親父が入院している時
1247
31
怖い話 No.12210
【じわ怖】息子が帰ってきた
1377
30
短編2分
心霊サイト運営者
全国心霊マップ
ghostmap
プロフィール
Twitter
新着じわ怖
S奈のお父さん
カーナビの示した位置
ベランダに女の影
国産うなぎ
マンションの屋上
占い師
窓に立つ男
幽霊の正体
自殺頭痛
友達からの葉書
医学は万能じゃない
嫁の日記を読んだ
新着コメント
友達の様子がおかしくなってきた
3人で横一列に並んで歩いていた
元恩師にストーカーされていた
家鳴り?
幽霊のいた家
公衆電話ボックス
子供がうるさい