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猫と子供と老婆
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これは叔父が若い頃に体験した話で、 夏祭りの時に叔父が話してくれました。 叔父は昔、 E県の田舎に出張していた事がありました。 仕事が一段落すると、 疲れを取ろうと叔父は休暇を取り 出張先で一緒に出張していた同僚のH氏と一緒に 旅館に宿泊しました。 そのホテルでの出来事です。 2人は酌を交わしながら 深夜まで他愛もない世間話をした。 そして深夜の2時頃になると べろんべろんに酔った2人は ベランダで将棋(酔ってるので定石とかも滅茶苦茶適当) を指し始めたのですが、 暫く指していると叔父が 外の景色の中に変なモノを見つけました。 ベランダのすぐ横の庭園で白い猫が2匹、 小石や酒蓋を並べて将棋をやっているのです! 「そんな馬鹿な事が!」 と叔父は驚き 数分の間2匹の指す将棋を凝視していたのですが 確かに駒の配置や動きに矛盾は無く 2匹の猫は紛れも無く将棋を指していました。 「おい早く指せよ」 とH氏は叔父を急かしますが、 すっかり酔の覚めた叔父は 庭園に出ようと身を乗り出したのですが 急にH氏にグイっと手を引っ張られ ドタドタっと部屋に放り投げらてしまいました。 その騒ぎで猫はビックリして 小石と酒蓋を蹴っ散らかして 逃げ去る所を叔父は見ました。 叔父は 「お、おい!お前今の見なかったのか? 猫が将棋やってたぞ!」 と言ったのですが、H氏は 「バカ野郎!悪酔いし過ぎ! ここ4階だぞ? どこに猫が居るんだ?」 と言うのです。 叔父は目を何度も擦ってベランダに出てみると 確かに下に川が流れているだけで 庭園も小石と酒蓋の将棋盤も何処にも無かったそうです。 その後、酔を覚まそうと ホテルのホール横の台で H氏と卓球勝負をする事にした2人ですが、 更に酒が入ってしまい 酔のせいでどっちが勝てるか負けてるかは分からなかったそうです。 しばらく打ち合っていると 小学生位の子供の一団(4、5人位)が 奥から廊下を走りながら近づいて来るのを叔父が見た。 何と子供達は服も浴衣も着ておらず 叔父は少しビックリしたそうですが、 これから温泉に入るのか、 でなければ何かの悪ふざけでもしてるのだろうと思い、 すぐに意識を卓球台に戻しました。 ですが、 子供達は全員温泉の部屋には見向きもせずに ホールに近づいて来ました。 近くで見ると 少し黒っぽい肌をしていたそうです。 そしてその中の一人の子供が 何故か先ほどの白い猫を1匹脇に抱えていたそうです。 子供達は叔父とH氏の横を素通りし、 自動ドア横の手動扉を開けて 皆外へと出て行ってしまいました。 叔父は呆けてその様子を見ていたのですが、 きっと悪ふざけの方だろうな、と思うと H氏に 「こんな時間にどこ行くんだろな?」 と聞きました。 すると、H氏は 「そんな子供なんて居なかったぞ?」 と言ったそうです。 そして、その2日後、 同僚のH氏を旅館に残して出張から帰り着いた朝、 叔父は東京の自宅でくつろぎながら 一人でテレビを見ていました。 チャンネルを幾つか替えていると 不思議な番組がやっていました。 ドロドロに汚れた白装束を着た 背の高い裸足の不気味な老婆が走っているのです。 「ホラー映画か?」 と思った叔父は そのままその番組を視聴する事にしましたが、 ある事に気付きました。 背景にH氏と宿泊した あの旅館が一瞬映ったのです 「ふうん、ロケ地はあの旅館か」 そう思ってしばらく視聴していたのですが、 ずっと老婆が雑木林や砂利道や原っぱを走っている映像ばかりが流れ続けていて 番組の内容がいまいち分かりません。 「なんだこりゃ? 映画じゃなくて 前衛芸術とか実験映画とかいう奴だろうか?」 そう思いながら新聞のテレビ番組欄を見ても それらしき番組の放送予定は無く… 「バラエティ番組って訳でも無さそうだし、 放送事故か?」 叔父はこの不思議な番組の正体をあれこれ色々と考えていたが、 そのうちに眠くなり考えるのを止めて そのまま眠ってしまいました。 果たして何時間寝ていたのか分かりませんが 叔父の目が覚めると窓の外は既に真っ暗だったそうです。 テレビは付けっぱなしだった… 例の番組はまだ続いており 時計を見ると午前3時を回っている。 「おいおい!嘘だろ? 24時間テレビの間違いじゃないのか?」 叔父は驚いたのですが そのまま暫く番組を見る事にしました。 老婆が尚も走り続けている映像に映る背景は 叔父の住んでいる街そのものでした! しかもよく見ると 老婆の手にはいつの間にか包丁が握られていたそうです。 「馬鹿な!?ここに近づいて来てるのか!」 叔父は少し怖くなってテレビを消しました。 ブウ-ン という音と共に テレビが独りでに点いた。 叔父は恐怖を感じて テレビの電源ケーブルをコンセントから抜き、 部屋中のドアや窓の鍵を閉めてベットに潜り込む… ベットの中から恐る恐るテレビを覗く… そこには老婆はもう映っていませんでした。 旅館で見た黒い肌の子供達が 叔父の家のドアを 内側から力いっぱい手で押している映像が映っていました。 「きっとドアを壊して アイツを部屋の中に入れようとしているんだ! どうしよう!?」 叔父は何も出来ずに ベットの中で震えていました。 すると画面が突然切り替わって 包丁を持った老婆が 階段を上って来ている映像が写りました… 「やばい!家のマンションじゃないか!」 ベットの中で震えている叔父は 腰が抜けて一歩も動けなかったそうです。 とうとう叔父部屋ドアの前で 老婆が立ち止まりました。 そして… コンコン… テレビでは無く現実に ドアをノックする音が聞こえて来ました。 この時叔父はショックで失禁していました。 ですが、次の瞬間 「夜分失礼します! 叔父さんですか? お久しぶりですF子です! 叔父さん開けてくれますか? 大事なお話があるんですが…」 F子さんというのは 叔父の大学時代の元恋人である。 叔父はF子の声を聞いてベッドから出ようとしたが、 テレビをもう一度見ると 物凄い勢いで包丁の柄で ドアをガンガンやたらめったら叩きまくっている 狂った老婆の姿が映されていた。 コンコン 「叔父さん? 本当に夜分にごめんなさい! 大事な用なんです!」 F子の優しい声とノックの音は現実に聞こえるが、 テレビのスピーカーから流れる老婆の凶悪な破壊音は 現実には聞こえない。 何だこれは!? F子が助けに来てくれたのか? F子に霊感なんてあったのか!? 混乱してそんな事を思っていた叔父は F子に助けを求めようとベットから出る。 するとまたテレビの画面が切り替わり 黒い子供達が映り込む。 子供達の一人が手に何かを持って 玄関の壁に文字を書き出した。 叔父はテレビ画面を凝視する。 「えふこはにせものでたらころされるよ」 ひいっと叫び尻餅を付いた叔父。 コンコンコンコン 「どうしたんですか? 叔父さん開けて! おねがいします!」 精神が限界に達した叔父は ベットに戻り そのまま朝まで震えていた。 朝6時頃… ベットから顔を出すと テレビは普通に戻っていた。 ドアの方は恐怖で見る事が出来なかった為 大家さんを携帯で呼び ドアの周囲を確認して貰った。 すると… 「あらやだ!酷い! なあにこれ! 泥棒じゃ無いわよね? 暴走族にでもイタズラされたのかしら? ドアがベッコベコじゃない? 何があったの?」 と言うので恐る恐る見に行く… べっこべこどころでは無かった。 ドリルで付けられた様な穴が無数に空いており、 ドアの中心部はグシャグシャに凹んでいた。 どうしてここまで破壊されていながら 中に侵入されなかったのが不思議だと 大家さんは言ったそうだ。 きっとあの黒い子供達が守ってくれたんだろうか? その日、叔父は F子さんに確認の電話を入れたんだけど 当時の大学時代の固定電話番号はもう使ってないみたいで 音信不通なので確認不能。 叔父はすぐにドア代を弁償し 部屋に自分の荷物を全部放っぽって引っ越した。 その後は不思議な猫にも子供にも老婆にも出会って無いそうです。 「あれは何だったんだろう?」 と叔父は言っているけど ホントなんなんだろう? 地霊か何か?
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