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迎えに来ない妻
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私は妻と二人でキャンプに行きました。 キャンプ場から車で10分ほどの所に、 釣りに適した海があります。 私と妻は、キャンプ場にテントを張り、 早めの夕食を済ませました。 そして、すぐに釣りへ出かけたのです。 ところが、釣りを始めてから20分ほどすると、 妻が 「トイレに行きたいからキャンプ場に戻るけど、 またここに来るね」 と言い出しました。 「ああ、行っておいで」 「けど、しばらくしたら、 車で迎えに来てくれ」 そう言って、 私は妻を見送りました。 そして、私はしばらくの間、 のんびり一人で釣りを楽しんでいたのです。 そのうちに日が暮れ始め、 しだいに辺りが暗くなってきました。 妻がキャンプ場に戻ってから、 随分と時間が経っています。 私は妻が、 まだ自分を迎えに来てくれない事に、 段々と苛立ってきていました。 だから私は、 妻を待ちきれなくなり、 「釣り道具を片付け、 道路で妻を待とう」 と決断したのです。 「暗い中、 妻を釣場まで歩かせるのは、 危険だよな…」 私はそんな事を考えながら、 リールを巻き上げ始めました。 すると突然、 リールの巻き上げが重くなり、 すぐに軽くなったのです。 どうやら、 糸が切れてしまったようでした。 ところが、 そのままリールを巻き上げ続けていると、 再び巻き上げが重くなったのです。 でも今度は、 前より巻き上げが重くありません。 「妙だな…」 私は不思議に思いながらも、 リールを巻き上げ続けました。 すると、海面から人間の手のような物が、 糸に付いて引き上げられてくるのです。 私は怖くなり、 すぐにナイフで糸を切りました。 手のような物は、 そのまま海の中に沈んでいきます。 「一体、あれは何だったんだ」 しばらく私は、 呆然と海を眺めていましたが 「とにかく、キャンプ場まで帰ろう」 と思いました。 「道路を歩くと、 妻も自分に気付くだろう」 と、考えたからです。 するとその時、 海水が突然、私に降りかかってきました。 それと同時に、 足首を何者かが掴んでいる事に、 私は気付いたのです。 私は驚き、その手を振り払って、 道路まで走り続けました。 しかし得体の知れない何かが、 私を追いかけくる気配がします。 しかも、どんどんと私に近付いてくるようでした。 私が必死に走り続け、 道路まで辿り着いた時です。 すぐ近くに、 自分の車がありました。 私は後ろを振り向きましたが誰も居ませんし、 自分を追いかけてくる気配も感じません。 「もしかして、妻とすれ違ったのか?」 「でも、ここに来るまで妻を見かけなかったし…」 その時、私は自分のポケットに、 車のキーが入っている事に気付いたのです。 「車のキーを、 妻が借りに来るはずなのに…」 私は妻が心配になり、 妻を捜す事にしました。 そして釣場に向かって、 私が歩き出した時です。 私は車の中で、 誰かの気配を感じました。 奇妙に思い、 私は車の中を覗き込みましたが、 誰も居ません。 「気のせいか」 私はそう思い、 車から立ち去ろうとしました。 すると車から 「置いて行かないで」 と、妻の声が聞こえたのです。 慌てて振り返って見ると、 突然に車の窓ガラスをすり抜け、 白い手が私の腕を掴みました。 私は恐ろしくなり、 必死に逃げようとしましたが、 物凄い力で腕を掴まれているため、 いくらもがいても逃げられません。 そうしているうちに、 再び妻の声が聞こえてきました。 「一緒に、帰りましょう」 私は思わず 「嫌だぁー」 と大声で叫びましたが、 その後の事は覚えていません。 どうやら私は、 そのまま気を失ってしまったようなのです。 次の日、 妻は海で発見されました。 妻は足を滑らせて、 海に転落したと見られています。
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