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河原の石
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俺が小学生の頃の話。 山に囲まれた閉鎖的な田舎町。 家の近くには木曽川と、 それに合流する支流の川があり よく河原で遊んでた。 釣りをしたり、 うなぎの仕掛けをしたり。 水遊びや石投げとか1人でも飽きる事無く遊んでた。 夏休みのある日、 数日前に雨が降り上流のダムの放流増水した川も、 いつも通りになった頃 1人で河原に、面白そうな漂流物でも流れてきてないかと遊びに出かけた。 票流木や、なんか変なゴミとかでも興味深々で 見つけては手に取り、ポイして次を探した。 その時、ソフトボール大位で 平べったい石を見つけ何気に手に取ろうとした時、 「あきら~」(俺の仮名) って、 耳をつんざく位の大きな祖母の声がした。 一瞬、ビクッとして、 振り返ったけど祖母はいない。 まわりをきょろきょろしても姿は見えない。 たしか祖母は家にいたはずで、 家から遊んでる河原までは小5の足で10分位の場所。 家から怒鳴っても聞こえるはずがないし、 耳をつんざく位の声だから、 近くにいるはずなのに姿はない。 やぶに隠れてるのかと探したりそたがいない。 「おばあ~ちゃ~ん」 って叫んだけど返事はない。 気のせいだったのか、 夕立ちの雷の音を聞き間違えたのか位で また遊びはじめようとして、 さっきの石を探し始めた。 その石はすぐ見つかった。 そんなに特徴あるわけでもないのに なんかその石だけ目立ってて スポットライトを浴びてるような感じでまわりから浮いていた。 で、その石を拾おうと手を伸ばしかけた時、 「あきら~」 って祖母の大きな声がした。 振り向いたら、 まだ距離はありそうな所に 祖母がこちらに向かって走ってくる姿が見えた。 えっ?ばあちゃん足はえ~! あそこからあんな声出せるなんてスゲ~(笑) って感じで見てたら、 凄い勢いで走り近づきながら、 「あきら、その石さわっちゃいかん、 こっち来いあきら」 って。 向かうも何も、 すぐ側まで来てたから、 あっという間に俺の手を掴んで抱き寄せられた。 「おばあちゃん、 体痛いって、ちょっと離してよ」 って言いながらもがいたら、 「間に合った~」 って力が抜けてった。 俺の手はしっかり掴んでたけど。 俺とばあちゃんが、 さっきの石の近くまで行って話しはじめた。 「あきら、さっきの石その石だろ」 指がさしている先にはその石があった。 「その石、よ~く見てみ、 人の顔に見えんか?」 さっきまで全然気づかなかったけど、 よく見るとおうとつが歪んだ人の顔に見えてきた。 ってか、たしかに歪んだ顔だ。 えっ、さっきは平べったかったはずなのに。 「あきら、あきらはその石に呼ばれたんやよ。 拾ってくれって。 手にしてくれって」 おばあちゃんが何を言ってるのか解らなかった。 怪訝そうな表情をしていたのか、 続けて話し始めた。 その石はな~、 「お石様」ってよばれてるやつでな、 漢字で書くとまだ習ってないかもしれんが、 汚い心や汚い思いって書いて「汚意志(汚意思)」とか惡い心、 惡い思いで「惡意志(惡意思)」って書く、 触っちゃいかん呪われた石なんじゃよ。 いつ、誰が、何のためにこんな穢れた石を作ったのかは解らんが、 大雨が降った後とか、たま~にこうやって見つかるんじゃよ。 子供にこんな話していいか解らんが、 おととし近所の家に大学生のお兄ちゃん来てたの覚えてないか? 夜中に救急車で運ばれたんじゃが その晩亡くなったんじゃ。 そのお兄ちゃんの家は都会だったから 葬式はこっちじゃやらんかったから 亡くなった事知らんかも知れんが。 そん時も「汚意志様」触ったって言っとった。 あきらが持ってかれんでほんと良かった。 台所でカレー作っとたらいきなり仏壇のおりんが鳴ったんじゃ。 いつもの綺麗な音色じゃなく 悲鳴みたいに鳴ったんじゃ。 誰もいないのに。 すぐあきらが大変じゃ~って、 なんか解らんがそう思って心の中で叫んだじゃ。 いや、本当に叫んだんかもしれんが。 どこにおるかなんて解らんはずなのに 呼ばれるように走りだしたら、 胸糞悪い気配ですぐ気付いた。 間に合ってよかったな~ って、なんか気持ち悪い事を話してくれたけど、 なんか助けられたような気持ちにはなった。 閉鎖的な田舎で、 犬憑きや動物憑きもまだやってるような地域だったから、 オカルト的な怖さは感じなかった。 都会ならこの経験談を自慢話で友達にするんだろうけど、 田舎でこんな話はできない。 当たり前のように生活の一部にそういう慣習がある地域だと、 家族以外にその手の話をするのは控える。 それは、 「何か企んでる・誰かを呪おうとしてる」 って勘ぐられるからだ。 おばあちゃんと家に帰ると、 すぐ誰かに電話してた。 何人かに。 その間ずっと俺の目を見ながら話してたのが気持ち悪かったが。 1時間位したらおじいさんが軽トラで家に来た。 すると次々軽トラの軽いエンジン音が聞こえたと思ったら、 急ブレーキの音と同時位のいきおい物凄い形相の親父と 2人のおじいさんが家に入ってきた。 親父に叱られる、 叩かれると思って歯を食いしばったら 「もう大丈夫や」 って泣きながら抱きしめられた。 そこで、ようやく重大さに気付いたんだ。 これって、俺マジやばかったって事じゃん。って 親父とおばあちゃんと、 おじいさん2人が軽トラ2台で出てった。 俺は残ったおじいさんと仏間に行き 仏壇とおじいさんの間に挟まれる形で、 おじいさんの前に座らされ、 聞きなれないお経なのか呪文なのかをとなえられた。 まだそんなに時間はたっていないのに、 軽トラの急ブレーキの音とともに帰ってきた。 大人たちは俺と一緒にいたおじいさんに、 「大変な事になった! 石が無くなっとる! すぐ先生に連絡してくれ」 って、凄い剣幕で慌ただしく捲し立ててた。 俺は、なにこれ!俺なの?えっ、俺が原因なの? って感じで怯えた。 それに気付いたのか、 おばあちゃんが 「あきらは何もわるーない。大丈夫や」 って肩を優しく抱いてくれてながら言ってくれた。 おじいさん達は、 「後はおれらがやるから、 ばーさんもおやっさんも 僕と一緒に居てやってくれや。 なんかあったら電話くんろ」 って言って 3人とも軽トラでどこかに走り去ってった。 夕方、仕事から帰ってきた母は顔を見るなり 「ピッシー」 ほっぺたを思いっきり叩かれたと同時に 俺を抱きしめながら泣きじゃくった。 母はすぐ仕事を抜け出し、 自分は無力だからって 職場の近くにあるちょっと大きめな神社で 御百度踏んで無事を願掛けしてくれてたって。 親父からの電話が職場にあって、 俺は無事だから大丈夫だって 同僚の人が神社まで教えにきてくれたらしい。 御百度の途中だったから、 願掛けをお礼の気持に変えて最後までお参りしてから 帰ってきたって教えてくれた時に、 この事で初めて涙がこぼれた。 「ごめん」 なんか心の底から愛情を感じて出た。 その後、部活から帰ってきた兄は、 今日の事を親父から聞いても興味なさそうで、 冗談半分で 「お前どんくさいから(笑) 俺なら、石をこう持って川に・・」 「ピッシー」 おばあちゃんのビンタが 兄の言葉が終わらないうちに炸裂した。 家族全員思考停止。 祖母のそんな行動はみんな初めて見たからだ。 いつもニコニコして優しい祖母が、 洒落にならない怖い表情で無言で兄を見てると 「ごめん」 ばつが悪そうに兄が言った。 その晩、食欲は無かったけど おばあちゃんが作ってくれたカレーを家族で無言で食べてると、 電話が鳴った。 親父がでて話してる。 途中で祖母を呼び 何かを確認しながら話してる。 電話を切り、 食卓に戻った親父は 「一件落着だ」 って大きな口を開けて笑った。 祖母も笑いながら 「ごめんごめん、忘れとった」 って。 話を聞いてみると、 祖母が何人かに電話をして、 家に来たのは、親父とおじいさん3人。 電話をかけた相手を確認してみると、 その時は動転していて忘れてたけど もう1人電話してたらしい。 近くに住む本家の祖母の姉。 連絡を受けた祖母の姉が、 すぐこちらに軽トラで向かったみたいで、 悪い気を感じてそのまま河原に行ったらしい。 その石はすぐ解って、 一時的な封じをして、 軽トラに積んである場所に持って行って始末したらしい。 その場所は教えてくれなかったけど、 絶対この世に2度とあらわれない場所らしい。 祖母の姉は、田舎の本家の人間だから、 家族、一族を守るため、 若い頃からいろいろ修行して災いから守る力をつけてるんだそうだ。 翌日、祖母の姉のところと、 駆けつけてくれたおじいさん3人の所に、 おばあちゃんとおふくろの3人でお礼に行った。 それからは、 河原で石を拾うのはやめました。 優しいおばあちゃんに、 洒落にならないくらい怖いビンタさせたくないから。
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名無し
石とか無闇に持ち帰るなって言うよね
婆ちゃんがダッシュで走って来るのが一番怖かった。 流石に石の処理とか雑過ぎ。
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