怖い話登録数18393話
恐怖感アップダークモード
(0件)
▼コンテンツには広告が含まれています
✕
天ぷら
お気に入り
640
31
0
長編6分
コピー
「天ぷら」の朗読動画を探しています。YouTubeでこの話の朗読動画を見つけたらぜひ投稿していってください。
※YouTubeのURL必須
開始時間
00時間00分00秒
投稿する
この間、中学時代の同級生から聞かされた話なんだけど。 そいつの弟はちょっと前に自殺してたんだよね。 なんか、バイトしていた天丼屋をクビになって、 頭から高温の天ぷら油を浴びて大やけどした挙句死んだとかで。 世間話程度で小耳に挟んだ話では、 そいつの母親の作る天ぷらがとてもマズイらしく、 本人は全然料理はできなかったんだけど、 そこそこ美味い天ぷらの味を知っていたとかで、 母親の作る天ぷらが許せなかった。 その日の晩飯は天ぷらだった。 それを邪魔するために頭から油をかぶった、と。 最近になって、 そいつの兄貴(つまり俺の同級生)から携帯で連絡があった。 つっても、 もう10年近く交流がなかったんだけど。 俺の職場が宅配便の会社で、 そいつの家に宅配に行ったのがきっかけで 連絡先を教えた感じ。 奴いわく 「久しぶりに同級生のやつと飲みたい」 と。 俺の地元に住んでる同級生なんて殆ど居ない。 (高齢化が進むベッドタウンなので、 同級生の殆どは東京ないし地方に散らばってしまったんだとか) だから特に俺でなければいけないってわけではなく、 正直誰でも良かったらしい。 「あーあ。こいつ宗教にハマったな。 (弟があんな死に方したから)」 とか思いつつ、別に断る理由もないし、 変な宗教勧誘のたぐいだったらドタキャンして帰ることにして、 指定された待ち合わせ場所に行った。 予想に反して、 待ち合わせ場所にはそいつが一人で待っていた。 (宗教勧誘、特にS価やK正会の類は、 二人一組が基本。 俺は何度も経験があるw) とりあえず落ち合うことにし、 挨拶もそこそこに、 近くにあった今話題の和民に入ることにした。 二人共ビールを注文し、 お通しをつまみにしばしば会話。 とはいっても、 特に仲が良かったわけでもないし、 途切れがちな会話だった。 そしてしばし無言になって ビールを煽っていた。 正直俺としては、 そいつの弟の話を避けたかっただけなんだと思う。 注文していたシーザーサラダが到着したとき、 これまで黙り込んでいたそいつが急に話を振ってきた。 「・・・実はK(弟)の話なんだけどさ」 「Kって、前にあんな死に方したお前の弟のことだろ? お前、いいのかよ」 って俺が言うと、その同級生が 「いや、そろそろ誰でもいいから、 本当のことを話したくなったんだ・・・」 って言った。 そいつの話をかいつまんで話すとこんな感じ。 俺(同級生)の母親って、 結婚するまでろくすっぽ料理が出来なかった人物らしく、 結婚するのを期に旦那の母親(つまりそいつの父方の祖母)から 適当に料理を教わっていた。 だがそれでも料理が面倒くさかったらしく、 ところどころ工程を省いて、 適当な料理を毎日作っていた。 そのため俺もKも好き嫌いが激しくなり、 それでも好き嫌いはよくないと 無理強いされて食わされていた。 特に揚げ物は、下ごしらえもせず、 衣をつける基本も出来ず、 しかも低温で長時間揚げてしまうのが『俺の家』では常識で、 俺もKも揚げ物全般がダメになってしまった。 ところが何故か、 弟は天ぷら職人の道を選ぶようになったんだとか。 理由は、 ホカ弁に入ってるチクワの唐揚げを食って感動したかららしい。 (と聞かされたんだと) そして、 そいつの母方の親戚が営んでいる フランチャイズ系の天丼屋でバイトをする事にしたんだと。 やがてそこの店主が亡くなり、 天丼屋も閉店するという事になったんだけど、 そこで何を血迷ったのか、 地元でそこそこ有名な天ぷら専門店で修行することを選んだらしい。 俺「え、聞いてた話と全然違うぞ?」 同級生「一応話は最後まで聞け」 厳しいながらも、 『美味い天ぷら』が食えるというモチベーションを元に 修行を頑張ったんだそうな。 そしてそれは、 『美味い天ぷらが食いたい』という目標から、 『店を持ちたい』という夢に変わっていった。 ところがその天ぷら屋、 3月で閉店してしまった。 311の地震で 店舗が壊滅的になってしまったかららしい。 (意外と地元にはそういうところが多かったりする) まだ修行は続けたいって気持ちはあったものの、 Kはここで一度立ち止まることを選んだ。 貯金は結構あるので、 旅でもしてもっと美味いものを探してみたい。 とりあえずその前に、料理下手な俺の親に、 俺の修行の成果を見せてやりたいって思うようになったんだそうな。 俺はその日休みで、 本屋から帰ってきたら 台所にKがいた。 エビやイカとか魚とか、 野菜とかの下ごしらえをしていた。 俺「おうK。お前天ぷら作ってくれるのか」 K「ああ。晩飯に振る舞ってやるよ。 楽しみにしておいてよ」 俺「火事にだけは気をつけろよ」 そんな会話だけして、 俺は二階に上がっていった。 それが俺とKの交わした最後の会話だった。 二階に上がって買ってきたマンガを読んでいたら、 暫くして母親が帰ってきた音がした。 その途端、 母親とKが何やら揉め始めた。 母「ちょ、ちょっと!! 危ないからやめてよ! 揚げ物なら私がやるからさ!!」 K「うっせえよ。 俺がやってんだから邪魔すんなよ!」 母「だ・か・ら、危ないって!やめて! あたしがや・る・か・ら・!」 バタンバタンといった物音と、母親の怒鳴り声、 そしてそれを追い払おうとするKの怒鳴り声が聞こえた。 そんな揉めてる音が 断続的に10分ほど続いたその時だった。 K「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」 俺「・・・だから、何?」 同級生「これは推測だけど・・・ Kが死んだのは自殺じゃなくて、 多分うちの母ちゃんが殺したんだと思う」 俺「なんでよ・・・」 同級生「うちの母ちゃん、 『天ぷらなんて、 素人が家庭用のコンロでまともに作れるもんじゃない』 って豪語してたから。 多分Kが、母ちゃんと同じ環境で、 きちんと天ぷら作れることを証明されるのが、 怖かったんだと思う」 結局その件は、 Kの自殺ってことで確定はしている。 ただ、その話を同級生から聞かされた時、 正直聞かなきゃよかったとも思った。 最近その母親は、 ろくに家事をすることもなく、Kの遺品のDSで、 延々と脳トレばっかりやっている毎日なんだそうな。 その母親とは今でもたまに顔を合わせることがある。 顔では愛想笑いしつつ、実は心のなかで 『・・・人殺し』って呟いていたりもするわけだが。
怖い話を読んでいると霊が寄ってくる?不安な方はこちらがおすすめ
感想や考察があればぜひコメントで教えてください ↓コメントする
この話は怖かったですか?
怖かった31
次はこちらの話なんていかがですか
続きを読む
※既読の話はオレンジ色の下線が灰色に変わります
いま注目されてる怖い話
フォロワーさんの本当にあった怖い話
「超」怖い話 辰 (竹書房怪談文庫)
実際にあった怖い話 2025年5月号
実際にあった怖い話 2025年3月号
本当にあった笑える話 みんなの怖い話2024→2025冬
コワい話は≠くだけで。 1 (BRIDGE COMICS)
前の話:【洒落怖】心霊スポットとして有名な北陸の島
次の話:【洒落怖】いじめられていた女の子
怖い話 No.2110
【洒落怖】思い出っていいよね
1735
39
中編3分
怖い話 No.22338
【洒落怖】ビデオ編集バイト
1131
23
怖い話 No.9321
【洒落怖】朝まで続いた足音
1688
35
1
短編1分
怖い話 No.20976
【洒落怖】不動産の査定
850
20
短編2分
怖い話 No.20198
【洒落怖】ペンキ塗り
1730
42
怖い話 No.443
【洒落怖】魔物
2077
32
怖い話 No.18176
【洒落怖】しるし
1579
怖い話 No.9624
【洒落怖】津和野での怪異
1398
47
怖い話 No.9238
【洒落怖】占いカフェ
1298
長編8分
怖い話 No.8611
【洒落怖】とある不動産屋
3198
38
心霊サイト運営者
全国心霊マップ
ghostmap
プロフィール
Twitter
新着洒落怖
留守番電話
舞台学科による演劇
分譲現場
謎の会話
たけのこ掘り
かんのけ坂
4階のベランダから落ちた友人
林間学校で登山
自転車に乗っている夢
雄別炭鉱
運動会?
坪の内
新着コメント
消えた彼女
でんわ
でんでん
着信7百回の男
戦中の魔物
オヤジ殺し
笑う女の夢
はいじま駅
団地での新聞配達