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地厄(じんやく)
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ちょっと今から25年前の、 小学3年生だった頃の話を聞いてくれ。 C村っていう所に住んでたんだけど、 Tちゃんっていう同い年の女の子が引っ越してきたんだ。 凄く明るくて元気一杯な女の子だった。 んで、 このTちゃんは霊感が強いとかのレベルではないくらいに、 霊力とも言うべきものを持ってたんだ。 正直、ここまで書いただけで、 近隣に住んでいた人なら 「知ってる!」 っていうくらい、 地元では有名な子だったよ。 俺、同じクラスだったんだけど、 小学3年生だとそんな話ウソって思うわけで、 俺ももちろん信じてなかった。 で、Tちゃんが 「じゃあみせてあげるよ」 って事になって、 好奇心旺盛な男子がTちゃんの後をついて行った。 その時、 俺は怖くて付いていけなかった。 次の日、 俺のクラスは大騒ぎ。 Tちゃんは一旦家に帰ってポラロイドカメラを持ってきて、 3枚の写真を撮ったそうだ。 その全てに、 思いっきり鮮明に霊が写っていた。 今でも鮮明に覚えている。 一枚目:木の横でうなだれてる中年の男性。 二枚目:顔がグニャグニャに見える甲冑姿の人。 三枚目:叫んでいるような顔が画面一杯に写ってる奴。 流石にこれを見せられては信じるしかない。 この一件で男子からは大人気、 女子からは怖がられる存在になってしまったんだ。 もちろん男子の中にも、 怖がって近寄らない奴も相当数いたけどね・・・ でも、 Tちゃんはそんなこと全く気にする様子もなく、 本当に元気でよく笑う女の子だった。 正直、俺もTちゃんの事が好きになっていた。 このTちゃん、 村はずれの一軒家に住んでたんだけど、 半径100mは一軒も家が建ってないような場所で、 だいぶ打ち解けた男子が、 「何でこんな場所に家建てたの?」 って聞いたのよ。 Tちゃんは、 「お母さんがここに住まないと悪いことが起こるから」 と答えた。 どうやらTちゃんのお母さんも、 凄い力をもっているようだった。 その頃、おれんち借家だったんだけど、 家を建てる計画が出てて土地を探してたのよ。 で、小学生の俺は、 Tちゃん家の近くに住みたい、 とか思っちゃった訳で、 村はずれに空き地あるよ!とか母に助言して、 Tちゃん家の近くに家を建てさせようとしたんだ。 それで、 母がその土地を調べてくれたんだけど、 不思議な事に、Tちゃん家の周辺は、 全て県が保有する土地だったそうだ。 んで、県に問い合わせてみたら、 あの土地を売る気は無いと断られたそうだ。 県の保有する土地にTちゃん家のみ一軒。 あの頃はダメなんだ位にしか思わなかったが、 今考えるとおかしな話だ。 この一件を翌日Tちゃんに話したら、 笑いながら 「それはそうだろうね。 ダメだよ!あそこに住もうとか考えたら」 って言われた。 正直、 聞くまでも無く何かしらあるんだろうとは思っていたけど、 こんな事になるとは夢にも思わなかった・・・・ Tちゃんの事が好きな男子が、 皆でTちゃん家に遊びに行きたいと申し出たのだ。 Tちゃんは普段見せたことの無いような顔で、 「危ないから絶対ダメ!」 と断った。 しかし、 どうしても行きたい男子(俺含む)は、 勝手にTちゃん家に隠れて行っちゃおうということになり、 学校帰りに皆で向かったんだ。 最初に驚いたのは、 Tちゃん家を中心に、 大きくトゲトゲのついた金網がはりめぐされ、 Tちゃん家へ向かう道以外に、 進入経路が絶たれていたことだ。 Tちゃんに隠れて家に行くのが目的だった俺たちは、 道以外の場所から入ろうと言う事になり、 金網をよじ登って、 Tちゃん家の裏側に回りこむように向かった。 地面は土に小石が沢山混ざったような感じで、 草一本生えてなかったのが印象に残ってる。 多分、 丁度金網とTちゃん家の真ん中位まで歩いた時、 一緒に来た男子の一人が、 悲鳴を上げながら走り出した。 それにつられる様に、 俺も含め全員その男子の後を追う。 金網を傷だらけになりながら登って、 学校まで逃げた。 最初に逃げ出した男子にどうしたのか聞くと、 黒い霧みたいなものが、 俺たちを包み込もうとしてたらしい。 結局、 その霧をみたのは一人だけだったが、 その男子は俺たちの中では一番頭が良く、 ウソを言うような奴じゃなかった。 まぁ、それ以前にTちゃんに危ないと言われていたので、 疑う理由も無いわけだが・・・ 次の日、学校でTちゃんに話そうとしたんだけど、 俺らが話す前に凄い剣幕でTちゃんが怒り出した。 「なにしてるのよ!!!」 初めて見るTちゃんの怒り顔だった。 その後、Tちゃんに言われるがまま、 授業を受けずTちゃん家方面に引っ張っていかれた。 金網のより200m位手前で立ち止まり、 ここで待つように言われる。 1時間半位待ったと思う。 一人の女性が俺たちの前に来た。 Tちゃんのお母さんだ。 俺たちを見るなり、 「本当にごめんなさいね。 大丈夫だからね」 と、正直、 凄く不安になるような事を言い出した。 そのままTちゃんのお母さんと、 Tちゃん家へと向かう。 家の壁には、 お札みたいな楕円形の紙が沢山貼ってあった。 家に入ると、 白い衣装を着たTちゃんが正座していた。 Tちゃんのお母さんは家に着くなり、 Tちゃんに向かって思いっきりビンタをして、 「あんた!何したかわかってるの?!」 と怒声をあげた。 Tちゃんは鼻血を出しながら、 お母さんに 「ゴメンナサイ。ゴメンナサイ」 と泣きながら謝っている。 「私じゃなくてこの子達に謝りなさい!」 とTちゃんのお母さん(以下T母)が言って、 俺たちに何度もTちゃんが、 「ごめんね。ごめんね」 と繰り返した。 幼心ながら状況解らないし、 悪いのは俺たちだし。 大好きなTちゃんが鼻血を出しながら謝ってるのに耐え切れず、 皆大声を出して泣いてしまった。 T母は何処かに電話を入れる。 俺たちには聞こえない位置だったので、 何を話しているのかまでは解らない。 その後、 俺たち全員の家と学校へ電話を入れて、 俺たち全員の母親と、 兄弟のいる人はその兄弟も呼ばれた。 1時間位で全員が揃った。 どうやら、 県庁からも連絡が行った事を後から知る。 その後もう1時間位経った頃、 Tちゃんと同じような服を着た、 20手前に見える女の人が到着する。 その女の人が俺たちを見るなり、 「だいぶ持っていかれてますね・・・ 急ぎましょう」 と言った。 もう何がなんだかわからず、 泣くしかなかった。 俺の母親も泣いてるし、 怖くて仕方なかったのを覚えてる。 多分お払いだったんだと思うけど、 TVで見るようなお払いとは全く違っていた。 一言も喋らないし、 正座したまま目を瞑って動かない。 ただ、 その間俺は意識が朦朧として、 耳の奥というか頭の中心から、 うなり声みたいな声が聞こえていた。 やがて、 そのうなり声がだんだんと大きくなっていき、 最終的には聞こえなくなった。 時間にして10分位だと思う。 T母に 「とりあえずこれで大丈夫ですが、 お母さん達は残って下さい」 と言われ、 俺たちは午後からの授業を受けに、 Tちゃんと学校へ戻った。 先生には事情が伝わっていたらしく、 「大変だったな」 と慰められたのを覚えてる。 その次の日から、 Tちゃんは人が変わってしまったかのように 暗く無口になってしまった・・・ 俺たちが話しかけても無視され、 笑顔を見ることは一切なかった・・・ そして3ヵ月後、 先生から転校した事を告げられる。 俺たちは、 自分がTちゃんをあんな風にしてしまったと、 ずっと後悔の日々だった。 小学校3年生編は以上です。 実はこれを書いた理由は、 昨日Tちゃんに25年ぶりに会いました。 俺の母と元Tちゃん家に行ったんです。 そこで色々な謎が解けました。 文章打つの遅いので端折りますが、 要望あるようなら夜にでも書いて見ます。 後日談と補足 去年の秋だったと思う。 母から電話があり、 4月4日実家に来いとの事。 5日は会社休みをもらうように言われた。 詳細は全く聞かされなかった。 4月4日 仕事終了後、 2時間半かけて実家に帰宅。 豪華な夕飯を出されたが、 何故帰って来いと言ったのかは教えてくれなかった。 4月5日 朝4時半にたたき起こされる。 出かけるから着替えろとの事。 実は帰宅した際に、 駅で小学3年の時の友人と会っていたので、 何となく予想はしていたが確信に変わる。 向かった先はやはりTちゃん家。 しかし、 現地に到着してびっくりした。 金網だった場所は、 高さ3M以上はあろうかというねずみ返しが付いた塀になっており、 その上にはトゲトゲのついた鉄線が貼ってあった。 刑務所の壁にみたいな構造だ。 嘘か本当か、 高電圧注意の看板まで付いてる。 ちなみにあの事件以来、 この場所に近づくことは禁止されていた。 (禁止されてなくても、 近づかなかっただろうけど・・・) 道沿いに歩くと鉄で出来た門があり、 入り口にリクルートスーツの男性が立っていた。 母が名前を名乗り、 身分証明書を求められる。 本人確認が終わるとカギを開け、 「中にどうぞ」 と案内された。 俺の予想では、 この塀の真ん中にTちゃん家があるものだとばかり思っていたが、 塀の中には全く何も無い。 例の土に、 小石が混ざったような地面があるだけだった。 そこに3人の女性が、 記憶にある白い服着て立っていた。 「○○君?」 俺の名前が呼ばれる。 一目見てわかった。 Tちゃんだ。 俺はどうしても謝りたくて、 真っ先にTちゃんに向かって、 泣きながら土下座した。 その後、 10分もしないうちにあの時のメンバーが揃い、 やはり皆考えることは同じようで、 真っ先に謝りに行っていた。 土下座までしたのは俺だけだったけど・・・ なにより嬉しかったのは、 Tちゃんが昔のように明るくいてくれた事だった。 まず自己紹介がされた。 3人の女性は、 T母、Tちゃん、 25年前にお払いをしてくれた女性の3人だった。 3人とも世間で言う氏名ではなく、 何か凄い長い名前(戒名みたいな名前で自己紹介してました)。 呼ばれた理由は、 この土地の開放と、 俺たちの守護霊の供養。 どういうことかというと、 この塀で囲まれた場所には、 地厄(じんやく)と呼ばれる、 土地に巣食う者がいました。 自縛霊の上位版とでもいいましょうか、 その場所に足を踏み入れた者に不幸というか、 ぶっちゃけ死んだり、 神隠しにあったりさせる、 凶悪な奴らしいです。 地厄を無に返すには、 半年近く地厄専門のお祓い師を置かなければいけないそうです。 今回は県からの依頼で、 T母がその役に選ばれたみたいです。 実際に地厄が無に帰るのは25年後。 その間にまた犠牲者が出ると、 そこからまた25年後になるそうです。 本来であれば、 人間の六感で無意識に近づかないようにするそうなんですが、 意識してそこに行こうとする気持ちが強い場合、 それを跳ね除けてしまうそうです。 俺たちの場合は、 多分全員Tちゃんの事が好きだっただろうから、 それで押しのけてしまったんだと思う。 ただ、黒い霧を見たというのは幻覚だったみたいです。 地厄は目を通して見ることが出来ないそうなので、 六感か守護霊による警笛と恐怖心から来るものだそう。 事の発端は、 この頃土地開発が進んでいて、 その場所にも住宅街が出来る予定だった。 最初は平らな土地では無く、 起伏の激しい森林だったそうだ。 それを切り崩して、 土地をならして出来た場所だったんだけど、 その作業中に行方不明者が二人出た。 よく見ると、 古墳のような人工的な出っ張りがあったんだけど、 それも一緒にならしてしまったみたいで、 それを村の役人が聞いて、 地厄の可能性を示唆。 県が買い取りを決め、 お払いを始めたそうです。 これが驚いたのですが、 俺たちの守護霊というべき者は、 俺たちの代わりに地厄に持っていかれたそうです。 本来ならば俺たちが消されていた所を、 守護を変わりに捧げる形にしたのが、 25年前のお祓いだったようです。 まず、土地の開放。 白衣装の3人が地面に座り、 足を広げ黙祷する。 そうすると、 表現しづらいんだけど、 空気が変わると言うか、 地厄が消滅していくのが何となくわかる。 次に守護の供養。 これは、前に見た正座で黙祷の状態。 供養が終われば、 自然と新しい守護が生まれるそうです。 (今まで守護霊無しでいたことが怖かった) これで全て終了ですが、 最後にちょっと小言を・・・ Tちゃんの態度が変わったのは、 俺たちがTちゃんを好きでいたことがばれたからでした。 同じ事が起きないように、 誰とも会話せず交流を絶ったそうです。 正直、Tちゃんの事好きなのばれたのが一番きつかった。 恥ずかしすぎる。
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