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死人を占う
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俺の知り合いに、みえる人がいる。 その友人自体も、 俺からしたらなんか怪しいやつなんだが、 たまに奇妙な眉唾ものの体験談を聞かせてくれる。 これはその友人が、 某所で占い師をやっていたときの話。 「お前占いなんて出来るのか」 と驚いたが、本人曰く 「簡単。見えたの言うだけ。 あれでお金取るの悪い気がするね」 と、 なんか怒られそうなことサラッと言ってくれた。 友人はある駅の側で、 小さな机にそれらしい水晶玉置いて、 それらしい格好して、 少しの間だが占い師をやっていたらしい。 水晶玉は通販で買ったとか・・・。 最初のうちは客なんてまったく来なかったそうだが、 見料500円という比較的安いお値段のためか、 暇つぶしっぽい人がちらほらと来るようになったらしい。 「かなりリーズナブルなお値段なはず。 同業者から文句言われそうだけど」 「リーズナブル、というかお前、 お金取ってやってたのか」 という抗議はスルーされた。 「その客の中で、スゴイのが来たんだよ。 目の前に座ってきた時、 あーこれは料金設定失敗したな、と思った」 「どうスゴかったんだ? 取り憑かれてたか?」 「いや、なんというかな。 ヨレヨレのスーツ着たサラリーマン風の男で、 顔面蒼白で、酔っ払いみたいな足取りで」 「なんか重病だな。 占いというより、病院紹介してやった方が良さそうな」 「そうかもなぁ。 でも、もう死んでたし、 病院は意味なかったろうなぁ」 「はぁ!?」 思わず素っ頓狂な声を出してしまった。 どうやら友人は、 死人相手に占いをしたと言う。 本当かどうか怪しい気もしたが、 面白そうなので大人しく話を聞くことにした。 「その客が、こんなこと言うんだ。 『占い師さん、俺のこと見てくんねぇか』って。 まったく困ったよ。 だって未来は見れないだろうしさ」 「ちょっとしたブラックジョークだよなぁ。 それじゃ、言ってやったのか? 『あなたもう死んでるから、未来ありませんよ』って・・・」 「言おうと思ったが、 なんというか、取りあえず見てみることにした」 「見たのか・・・」 「まぁね。 でも、水晶玉見つめてみたけど、 なんにも見えなかった」 「そりゃ、通販で買ったものだからじゃ・・・?」 「いやいや、普通の人のならアレで大丈夫。 まぁ、簡単な占いレベルなら、 ただのガラス玉でも良いのだろうね」 まぢですか・・・とか思いながら続きを聞く。 「仕方ないからカード使おうと思ったけど、 なんか確実に良くないカードでるって分かったから、 止めておいた」 「思いっきり死神とか引きそうだな。 よく知らないが」 「まぁそんな感じ。 それで、どうしようかな~と水晶玉見ながら考えたさ」 「難しい顔しながら水晶玉見ていたわけか。 お客を誤魔化すには良さそうだな」 「そこで思いついたのさ。 そうだ、死んだ時のことを思い出させよう、と」 「んん?見る方法を思いついたんじゃないのか?」 「それもよかったのだけど、 やっぱりちゃんと成仏してくれないとヤバイからさ。 ほら、悪霊とかになったら大変だし」 「ただ見る方法が思いつかなかっただけじゃ・・・」 「そんなことは、ない。 まったくない。疑うな」 どうやら見るのは諦めたようでした。 「それで色々質問してみた。 『いつからここに居るのか』 『ここにどうやって来たのか』 『どこに行くつもりなのか』と。 そうしたら結構簡単に分かったよ。 ここには会社に行く途中に通りかかったらしい。 『信号がどうしても渡れない、急いでいるのに・・・』 って、困った様子だった。 『なんとかしてくれと誰かに頼みたいのに、 誰も振り向いてくれない』 と」 「あの駅の側かぁ・・・ 何か事故でもあったのかな?」 「後で調べたら、 2ヶ月くらい前に交通事故があって、 通勤途中の男性が死んでる」 「なるほど、それか。 で、どうしたんだ?」 「こう言ったよ。 『あの信号を渡る必要はありませんよ。 会社に行く必要もない。 あなたには他に行かなければならない所がある』って そこの信号機の下に花が置いてあったから、 『そこに行って花に触れなさい。 そして、自分の名前を声に出して言いなさい』 と言ったよ」 「ふーむ、なんかのおまじないか?」 「まぁそんなようなものかな。 その花は、その人のために置かれたものだと思ったからさ」 「それで無事に? 死んでるのに無事っていうのも変な話か」 「うん。信号機の所で、すーっと消えたよ。 ちょっと供養もしておいた」 その後、 友人は新しい花を買ってそこに置き、 お祈りしてきたらしい。 「いやぁ、ほんと、 慣れない事はするものじゃないね」 「あー、まったくだ。 なんで占いなんてやろうと思ったんだ?」 「なんか良くない? 『美少女占い師』って。 ミステリアスっていうか、 なんというかグッとくるでしょ」 『美』なのかどうかは人の好みだが、 確実に『少女』ではない。 という突っ込みはやめておいて、 調子にのっている友人に他の点を攻めてみた。 「でも、一度見ようとして諦めて、 結局普通に成仏させて終わった訳だな」 単純な友人は少しカチンときたらしい。 それでか、渋々とこんなことを言った。 「実を言うと、見えなかった訳じゃない」 また強がりを、と思いつつ、 嫌味半分で聞いてみる。 「そら凄いねぇ、どうやって見たんだ? それで一体何が見えた? 死んだ人の未来には」 「直に見た。 死んだ人を直視なんて二度としたくないけど。 次やったら、私死ぬかも」 ちょっと後悔してるような素振り。 死んだ人の目の奥を覗き込むことなんで、 俺にはできない。 そしてこう言った。 「何が見えたかは言えない。 正確に言うと、覚えてない。 きっと覚えていてはいけないことだったと思う。 生きている人間が知ってはいけないこと。 生きている世界にある言葉では、 表現できないことだと思う」 長い付き合いの友人は、 そう言って話を締めくくった。 そして講釈代とか言って、 その日の飲み代を奢らされた。 悔しいのでここに書き込んでみた。
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