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腰が曲がったじーさん
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30年くらい前に俺が経験した話。 小学校に上がりたてだった俺は、 さっそく出来た友達と毎日のように遊んでた。 その友達の家は学校から見て山の間反対側にあって、 小学生の足じゃ1時間ぐらいかかるようなところにあった。 で、その友達の家の周りには田んぼしかなかったんだけど、 友達の家の向かい側に一軒だけ家があった。 いかにも昭和初期に出来たようなボロクサイ家で、 住んでいるのも腰が曲がった小汚いじーさん一人だった。 でもそのじーさんが結構変な人で、 話したことはないんだが、 俺が友達の家の側に自転車止めると、 そのちょっとした音に反応して家の扉開けてじっとこっちを見てんだよ。 俺が友達の家にはいるまでずっと。 これが毎回続いてたし、 友達やその両親が家を出るときも 同じようにじっとこっちをガン見してくるらしい。 ある日、 俺がいつものように友達の家に遊びに行くと、 なぜかそのじーさんは出てこなかった。 俺は不思議に思いながら、大声で 「●○くーん!あそびにきたよー!」 と友達を呼ぶ。 その当時、 友達の両親は共働きで家にいなかった。 そして友達が玄関の扉を開けた瞬間、 向かい側の家(俺からしてみれば背後)から すごい勢いでじーさんが出てきて、 「おまえかぁぁぁぁぁぁおまえなのかぁぁぁぁぁぁ」 と訳の分からんことを叫び散らしながら 俺たちの方に走ってくる。 よく見えなかったが 両手に紙切れ(?)のようなものを持っていた気がする。 俺たちは急いで家に逃げ込んだ。 居間でガタガタ震えてると、 玄関をぶち破りそうな勢いで じーさんが扉をバンバン叩いてる。 ずっと、 「おまえならゆるさないぃぃぃぃぅぁぁぁぁぁ」 と叫び散らしていた。 当時の俺たちは携帯なんか持ってないし、 それどころか電話の使い方も知らなかったので、 大人や警察に電話することも出来なかった。 心臓が爆発しそうだった。 ワァワァ泣き叫びながら 大人が帰ってくるのを待つことしか出来なかった。 しばらくしてじーさんは帰ったようで、 静かになったが俺たちはずっと震えたままだった。 1時間ぐらいたって友達の母親が帰ってきた。 そして 「●○~?こんなのが玄関に貼ってたんだけど~? イタズラ?気味悪いからやめてー」 と言い、 2枚の紙切れを俺たちに見せてきた。 一枚は古い家族写真のようで、 あのじーさんとその家が写っていた。 じーさんの隣には、 じーさんの奥さんと思われる中年の女性。 その手前には息子(娘かもしれんが)夫婦と思われる若い男女と、 孫と思われる小さい女の子が写っていた。 そして二枚目の紙切れを見て 俺は震え上がった。 それは新聞紙を切り取ったもので、 一面記事のようでずいぶん大きかったが、 そこにはあの家と、 じーさんを除く家族の顔写真が写っていた。 記事の内容は、 じーさん以外の一家全員が向かいの家に住む30代の男に 包丁で滅多刺しにされて殺された、というものだった。 (当時漢字が読めなかったので母親に読んでもらったが) 犯人はすぐに捕まり死刑となったが、 犯人が住んでいた家はまだ残されていたみたいで、 どうやら今友達が暮らしているこの家が 当時犯人が暮らしていた家らしい。 たまたまその母親がそういう系の話信じてくれる人で、 次の日ウチの両親も含めて寺に行って相談したんだよ。 そしたら住職さんが、 「その犯人が死刑になっても、 殺された家族はその犯人のことを許してない。 おそらくそのおじいさんも憑かれてる。 だから向かいの家の住人のことを毎日監視していたんでしょう。 そしてなにが起点になったのかわかりませんが、 なにかそのおじいさんに溜まっていた家族の怨念を 爆発させるようなことが起こり、襲われたのでしょう」 と言った。 友達の家族からしたらいい迷惑だろうが、 とにかくあの家に住み続けるのは危険らしい。 あと、あの写真と新聞もすぐに処理しないとマズいらしい。 そんなわけで、 友達家族もすぐに引っ越しできるほど裕福じゃないので、 実家に帰ってしまい、 友達とはそれっきりになってしまった。 それ以来あの家には近づいてないが、 まだあそこにあのまま残っているのかはわからない。
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