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ポマードのにおい
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25年ほど前の寝苦しい真夏の夜のこと。 夜中に父の使ってるポマードのにおいがして目が覚める。 半分寝ぼけていたので、 「ああ、となりの旦那さんが 同じポマード(父が現役リーマンのころ使っていたカネボウエロイカ) つかってんだな」 と納得してまた寝た。 しかし朝になって考えれば、 隣の旦那はポマードなんてつかってないし、 (使っていたところで)夜中に臭いがただよってくるはずもなし変だな、 とおもったけど まあ寝ぼけたんだな、で済ませていた。 そのまま数日、日曜日の昼間、 父からもらった耳かきで耳掃除して 終わったからふたを閉めようとしたらふたがない。 つい今しがたふたを外したばかりなのに? どこ行っちゃったんだろう? 探したけど出てこなかった。 (真夏なので床はフローリング、 何かに紛れて見えんくなるはずもなし) そのまた数日後、母に何気に 「この前、真夜中に父ちゃんの使ってたポマードと同じ匂いした」 (そのころ両親は離婚しており、父は一人暮らし、母は私と暮らしていた) すると母が顔色を変え、 「私も数日前に真夜中に ”柳屋”ポマードのにおいで目が覚めたのよ!」 聞けば、 母は私のさらに数日前に臭いを感じていたらしい。 母は柳屋で私がエロイカなのが違うのだけど。 (父がエロイカを使い始めたのは母と別居したあとで、 私がエロイカを買ってやるようになったのだが) その数日後、 また真夜中にポマードのにおいがして目が覚め、 飛び起きた。 今度は寝ぼけていない、 一瞬で覚醒したので。 クンクンと何度も鼻を鳴らして確認した。 確かに匂ってる、 どっから匂ってくるのかわからないけど臭いは確かにする。 だが数秒で臭いは消えてしまった。 その後のことを簡単に書くと、 その頃父は一人で死にかけていたのだ。 (脱水と飢餓) アル中で脳がやられていた状態でなんとか生きていたが、 猛暑で脱水が重なって(クーラーのつけ方を忘れたのだと思う) 譫妄状態におちいり、 最低限の日常すらこなせなくなっていた。 (水の飲み方を忘れたのだとおもう、すべて推測) それで私らのところに助けをもとめてて、 生霊を飛ばしたのだろうと。 汚部屋で死にかけてたところを発見して命は助かった。 (頭はやられていた。回復しなかった) ここでわかるのは、 父は私らの住んでいたマンションを知らない。 (来たことはない、住所は知ってたはずだが記憶しているはずもなし) それでも現れることはできる。 (霊は住所ではなく、その人間自体をたどってくるらしい) 私と母は父の霊を臭いで確認した点はおなじ。 でも、おなじ人間であっても シンボリックされた臭いが違うと違う臭いで感じとる。 父の霊は葬儀のときも軽い事件を起こした。 納骨のとき、お盆にも軽い兆があった。 思ったより念が強い人だったみたい。 以下は、葬儀のときの事件。 通夜の晩、 坊さんの読経が始まると同時に電話が鳴った。 マンションで 葬儀(通夜だけど)をするのを嫌がった隣近所の誰かの嫌がらせかな、 と私が急いで電話をとると何も聞こえない。 相手の息遣いも気配も全くない。 普通いたずら電話って なんとなく相手の気配を感じたりするじゃないですか。 でもねそれが全くないの。 でも読経の最中だったし、 仕方ないから電話を切った。 切るとね、1秒でまたかかってきた。 今度も全く気配なし。 この世界じゃない別な世界からかけてきているような、 そんな深い闇みたいのを感じた。 (自動スクリプトからかけてきてるあの感じに似てる、 当時はまだそんなのなかったけど) 思わず 「お父さん?」 って言いそうになったけど、 大勢いるし読経の最中だしおたおたしてたら兄が 「電話線抜け」 というので抜いた。 電話はそれで終わったけど。 その晩、 「あれってやっぱりお父さんなのかね」 と家族で話題にした。 電話に出ていない私以外もそう思ったみたい。 あと葬式に着けようと出しておいた真珠のピアスが無くなった。 自分の部屋のボードに入れておいたのだけど。 盗むような人もいないし。 このピアスは その後1年ぐらいしてからぽろっと出てきましたが。 あとね、 初七日に納骨しちゃったの。 面倒だから、さっさとやっちゃおって。 で、家から電車で行く私と、 車で行く兄一家と寺でおちあうことになってた。 出がけ私の腕時計が止まってたのに気づかなくて、 ちょっと遅れてしまった。 先に到着してた兄に 「時計とまっててね、気づかなくて少し遅れた」 といったら、 「お前もか、おれの時計も止まってて、別なのしてきた」 私と兄の時計は同じ時間に止まってたんだよね。 10時40分だったかな。 まだ墓に入りたくなかったのかねえ、 悪いことしたかも。 やっぱ49日間まってあげればよかった。 父なりにいっしょけんめい妨害したんだよねえ、泣けるよね。 ひどいよね。
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