怖い話登録数18393話
恐怖感アップダークモード
(0件)
▼コンテンツには広告が含まれています
✕
異界への扉
お気に入り
2243
26
0
1
中編4分
コピー
「異界への扉」の朗読動画を探しています。YouTubeでこの話の朗読動画を見つけたらぜひ投稿していってください。
※YouTubeのURL必須
開始時間
00時間00分00秒
投稿する
建築法だか何だかで5階(6階かも)以上の建物にはエレベーターを設置しないといかんらしい。 だから俺が前住んでいた高速沿いのマンションにも、当然ながらエレベーターが一つあった。六階に住んでいた俺が階段を使うことは全くといっていいほどなかった。 まあ、多分誰もがそうだろう。来る日も来る日もエレベーターのお世話になった。 階段は下りるならともかく昇るのはなかなかにツライ。だが、ツライのは分かっていても、今の俺は専ら階段しか使わない。 大学の講義がない平日の昼頃、俺はコンビニでメシを買ってこようと部屋を出た。1階に下りるのには当然エレベーターを使う。 エレベーターは最上階の8階に止まっていて、今まさに誰かが乗るか降りるかしているところのようだった。俺は階下のボタンを押し、エレベーターが下りてくるのを待った。 開いたエレベーターのドアの向こうには中年のおばさんが一人いた。ちょくちょく見かける人だったから、多分8階の住人だったんだろう。 軽く会釈してエレベーターに乗り込む。1階のボタンは既に押されている。 4階で一度エレベーターが止まり、運送屋の兄ちゃんが乗ってきた。3人とも仲良く目的の階は1階だ。 だが。エレベーターは唐突に3階と2階の間で止まってしまう。 一瞬軽いGが体を押さえつけてきた。俺を含めた室内の3人は3人とも顔を見合わせた。 何だ。故障だろうか。 停電、ではないようだ。エレベーター内の明かりには異常がない。 「どう……したんすかね」俺がぼそりと呟く。おばさんも運送屋も首を傾げる。 暫く待っても動く気配がない。と、運送屋が真っ先に行動した。 彼は内線ボタンを押した。応答がない。 嘆息する運送屋。「一体どうなってんでしょう」運送屋の疑問は俺の疑問でもあった。 多分数字にしてみれば大した時間じゃなかった筈だ。沈黙は3分にも満たないくらいだったろう。 それでも漠然とした不安と焦りを掻き立てるには十分な時間だった。何となくみんなそわそわし始めた頃、エレベーターが急に稼動を再開した。 おばさんが短くわっと声を上げる。俺も突然なんでちょっと驚いた。 しかし、だ。押しているのは1階のボタンだけだというのに、どういうわけか下には向かわない。 エレベーターは上に進行していた。すぅっと4階を抜け、5階、6階……7階で止まり、がらッとドアが開いた。 俺は訝しげに開いたドアを見る。全く、何なんだ。 一体なんだっていうんだこれは。「なんか不安定みたいだから」おばさんがエレベーターを降りながら言った。 「なんか不安定みたいだから、階段で降りる方がいいと思いますよ。また何が起こるか分からないし」「そりゃそうですね」と、運送屋もエレベーターを降りた。 当然だ。全く持っておばさんの言うとおりだ。 今は運良く外へ出られる状態だが、次は缶詰にされるかもしれない。下手をすれば動作不良が原因で怪我をする可能性もある。 そんなのはごめんだ。俺もこの信用できないエレベーターを使う気などはなく、二人と一緒に降りようと思っていた。 いや、待て。何かがおかしい気がする。 エレベーターの向こうに見える風景は、確かにマンションの七階のそれである。だが……やけに暗い。 電気が一つも点いていない。明かりがないのだ。 通路の奥が視認できるかできないかというくらい暗い。やはり停電か?そう思って振り返ってみると、エレベーターの中だけは場違いなように明かりが灯っている。 そうだ。動作に異常があるとはいえ、エレベーターは一応は稼動している。 停電なわけはない。どうも、何か変だ。 違和感を抱きつつ、俺はふと七階から覗ける外の光景に目をやってみた。なんだこれは。 空が赤い。朝焼けか、夕焼けか?だが今はそんな時刻ではない。 太陽も雲も何もない空だった。なんだかぞくりとするくらい鮮烈な赤。 今度は視線を地に下ろしてみる。真っ暗、いや、真っ黒だった。 高速やビルの輪郭を示すシルエット。それだけしか見えない。 マンションと同じく一切明かりがない。しかも。 普段は嫌というほど耳にする高速を通る車の走行音が全くしない。無音だ。 何も聞こえない。それに動くものが見当たらない。 上手くいえないが、「生きている」匂いが眼前の風景から全くしなかった。ただ空だけがやけに赤い。 赤と黒の世界。今一度振り返る。 そんな中、やはりエレベーターだけは相変わらず明るく灯っていた。わずかな時間考え込んでいたら、エレベーターのドアが閉まりそうになった。 待て。どうする。 降りるべきか。それとも、留まるべきか。 今度は特に不審な動作もなく、エレベーターは大人しく1階まで直行した。開いたドアの向こうは、いつもの1階だった。 人が歩き、車が走る。生活の音。 外は昼間。見慣れた日常。 安堵した。もう大丈夫だ。 俺は直感的にそう思ってエレベーターを降りた。気持ちを落ち着けた後、あの二人のことが気になった。 俺は階段の前で二人が降りてくるのを待った。しかし、待てども待てども誰も降りてこない。 15分ほど経っても誰も降りてこなかった。階段を下りる程度でここまで時間が掛かるのはおかしい。 俺はめちゃくちゃに怖くなった。外へ出た。 何となくその場にいたくなかった。その日以来、俺はエレベーターに乗りたくても乗れない体質になった。 今は別のマンションに引越し、昇降には何処に行っても階段を使っている。階段なら「地続き」だからあっちの世界に行ってしまう心配はない。 だが、エレベーターは違う。あれは異界への扉なんだ。 少なくとも俺はそう思っている。もうエレベーターなんかには絶対に乗りたくない。
怖い話を読んでいると霊が寄ってくる?不安な方はこちらがおすすめ
感想や考察があればぜひコメントで教えてください ↓コメントする
この話は怖かったですか?
怖かった26
次はこちらの話なんていかがですか
続きを読む
※既読の話はオレンジ色の下線が灰色に変わります
いま注目されてる怖い話
フォロワーさんの本当にあった怖い話
「超」怖い話 辰 (竹書房怪談文庫)
実際にあった怖い話 2025年5月号
実際にあった怖い話 2025年3月号
本当にあった笑える話 みんなの怖い話2024→2025冬
コワい話は≠くだけで。 1 (BRIDGE COMICS)
名無し
異界へ行ってしまったと思われるのは階段利用者のほうで,エレベーターは無事に1階に到着してるんですがそれは。
前の話:【洒落怖】天国への扉
次の話:【洒落怖】冷蔵庫に宿る
怖い話 No.37
【洒落怖】裏山の廃墟
朗読 榊原夢の牢毒ちゃんねる
2772
40
中編3分
怖い話 No.8531
【洒落怖】迷い小道
1524
46
怖い話 No.17590
【洒落怖】会うと必ず持ち物が壊れる
1849
39
短編1分
怖い話 No.7115
【洒落怖】オバケの声を録音
2388
短編2分
怖い話 No.8654
【洒落怖】そんな夫婦に悲劇が襲った
1127
44
長編5分
怖い話 No.14559
【洒落怖】ミヨシゲンコウ
1583
怖い話 No.9917
【洒落怖】あわせ鏡
933
19
怖い話 No.7289
【洒落怖】鼻
1273
35
怖い話 No.17575
【洒落怖】鍵がワープしたとしか思えない
1350
34
怖い話 No.1033
【洒落怖】エクソシスト?
1757
31
心霊サイト運営者
全国心霊マップ
ghostmap
プロフィール
Twitter
新着洒落怖
留守番電話
舞台学科による演劇
分譲現場
謎の会話
たけのこ掘り
かんのけ坂
4階のベランダから落ちた友人
林間学校で登山
自転車に乗っている夢
雄別炭鉱
運動会?
坪の内
新着コメント
消えた彼女
でんわ
でんでん
着信7百回の男
戦中の魔物
オヤジ殺し
笑う女の夢
はいじま駅
団地での新聞配達