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交差点の手前にある鳥居
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ずいぶん前の話になりますが、以前勤めていた千葉県内の会社に入社した年のある日のこと。 その日は新人同期での飲み会があり、最寄りの駅に着いたのは、夜11時をまわった頃だったと思います。駅から会社の独身寮までは歩いて15分ほどかかり、私は同じ寮に住む同期のTと喋りながらのんびりと歩いていました。 独身寮はI市とM市の境目にあり、途中に人家は少なく、梨畑が一面に広がるのみでした。駅からは一本道なのですが、夜になると少ない街灯を頼りに歩かねばならず、何とも不気味に感じられました。 というのも、この付近は古戦場跡が多いらしく、いたるところに祠や石碑が建てられ、それほど霊感が強くはない私にも昼間でも何とも言えない重苦しい空気が漂っているように感じられたからです。特に一カ所、私にとっては苦手な場所がありました。 それは、この付近で唯一信号のある交差点の手前にある鳥居でした。一見、何の変哲もない小さな神社のようなのですが、中は石碑が幾つか並んでいるだけのものでした。 でも私には、初めてその横を通った時から、ヤバイ雰囲気を感じていました。うまく言い表せないのですが、何かに睨み付けられているような感覚でしょうか?なので、普段はなるべく見ないように足早に通り過ぎるようにしていました。 しかし、この日は少々酔いが残っていたせいなのか、楽しかった飲み会の雰囲気をそのまま引きずるようにTと喋りながら歩いていたせいなのか、そのことも気にならず、信号の前まで来ていました。歩行者信号は赤で、私たちはしばらく待たなければなりませんでした。 Tは私の左隣に立っていました。異変を感じたのはその直後でした。 私は右の背後に何かの「気配」を感じたのです。位置はそう、ちょうど鳥居の奥の石碑のあたりのようでした。 私はいやー感じはしましたが、振り向くことはできませんでした。何だか見てはいけないような気がしたからです。 すると「気配」は徐々に私の方に近づいて来るのがわかりました。信号が変わったら、すぐに歩きだそうと思ったのですが、なぜか、信号がなかなか変わりません。 信号を無視して歩こうかと思ったのですが、この時あまり親しくはなかったTに不審に思われてはいけないかと思い、そのまま気のせいだと思うことでガマンすることにしました。しかし、私の思いこみとは裏腹に「気配」がじりじりと私の背後に迫ってきます。 さっきまでしゃべり続けていたTは、いつの間にか黙り込んでいます。信号もなぜか変わってくれません。 そして、その「気配」がついに私の背中のあたりでぴたりと止まり、私のガマンが限界に達した時でした。「おい・・・」ようやくTが私に話しかけました。 「今、おまえの背中にさぁ・・・」「ぎゃあぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」私は情けないくらいの叫び声を出して、Tを残して信号も無視して、駆け出しました。気が付くとなぜかTも私と並んで全力疾走していました。 そのまま寮の玄関を駆け抜けて、食堂まで来ると、ようやく気持ちが落ち着きました。そこでTから聞いた話は以下のようでした。 Tは昔から霊感が強く、さっき信号待ちをしていた時に鳥居から出てきた「モノ」が、私の背中に取り憑こうとしていたので、あわてて声を掛けたとのことでした。私は、それは幽霊のようなものなのか?と聞いたのですが、「違う、そんな生やさしいものじゃない。 」「じゃあ、何だったの?」「お前は知らない方がいい。」と、言ったきり黙ってしまいました。 その後、私もTもその会社を辞め、今は連絡がつかなくなってしまいましたが、あの時、私の背後に迫っていたものが何だったのか、未だに気になります。もし、あの時Tが声を掛けてくれなかったらどうなっていたのかと思うと、今でもゾッとします。
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